2013年、インドの雑踏にて。
インド人が床に直接座ったり寝たりしている中、レジャーシートを敷いて電車を待つ。
チャイ7ルピーをふたつ買って15ルピー出したら、小さいチョコレートを投げるように渡される。
おつり切れにはもう慣れた。思わず笑ったら、笑い返してくれる。
インドのチョコ、美味しくなさそうだなあ、なんて思いながら座ってチャイを飲んでいたら、子供がふたり寄ってくる。
チョコレートって言ってる。どうせ食べないし、と思ってチョコをあげようと右手を動かした瞬間、動物が餌に喰らいつくような勢いでチョコをもぎ取られる。
怖いわ!
人にもの貰っても感謝とか全くないんだなあ。いや、いらないからあげたものだし、感謝を求めるのもおかしいか。そんなことを考えながらボーッとする。
少しして、また2人がくる。今度はジュースを指差している。
失敗した、完全に舐められた。
あげないで無視していたら、ふたりで何かこそこそ話して、こっちを見て笑っている。
じっと目を見つめる作戦とか、ちょっと日本語でキレてみる作戦とかやってみたけど、ずっと笑われるし、こっちは座ってるからずっと見下ろされている。
もうこの状況を写真に撮ってネタにするしかない!そう思ってカメラを鞄から出すと、「one photo, please!」
ああ、完全に負けた。勝ち負けとかないけど、負けた!!!
one photo, please!の言葉に、かわいいな、なんて思って写真撮ると、チップねだられるなんて、インドではよくあること。
物乞いとのこの2対2のバトルにおいて、写真撮ってしまったら完全に負け。というか、写真撮ろうとした時点で負けました。完敗。
結局、本に載っていたヒンドゥー語で話しかけたら、ふたりがそれまでとは少し違う笑い方をしたので、勝負は円満に終わりました。
嗚呼、インドにいるんだなあ。
座って電車を待っていると、電車がくるのと同時に、線路に捨てられた大量のゴミが、自分たちに向かって舞ってくる。
びっくりして慌てて逃げたから、持っていた水を落としてしまった。
掃除のおばさんが、まだ半分以上中身の入ったその水を、他のゴミと一緒に線路に落としていく。
ビニール集めの少年がそれを見つけて、中身を捨てて、自分の背負う袋に入れた。
この一連の流れ、ほんの数分の間に起きたことで。
なんだか上手く回っているなあ、とか、思ったり。少なくとも今のインドはこういうふうに成り立っている。
良いことばかりじゃなくて色んな問題もあるけれど、日本とは違う国を見るのって本当に面白いなあと思うのです。
インドに行く前に、インドに行ったことのある何人かの意見を聞いていた。
そのうちのひとりに、インドではお金を使うべきだ、と言った人がいた。ぼったくられることなんて気にするな、自分にはお金があるだろう?と。
インドでは、お金は、持っている人から持っていない人に流していくもの。だから日本からインドに旅行に行ったんなら、使えるだけのお金を使え。そうすれば自分も良い気分で旅行ができる。その人はそう言った。
わたしはまだ、その境地には達せていない。
お金って絶対に絡んでくるもので、そのせいで何を信じていいのかもわからなくなるけど、それも日本にいたら出会わない感情。
私にとって旅は、綺麗な景色を見に行くためであり、自分の醜さを根本から見つけに行くためでもあるなあ、なんて思った。
(2013年、20歳の日記)