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友人への手土産と旅で読む本

2017年は芸術祭のミレニアムイヤー。欧州ではドクメンタ、ミュンスター彫刻プロジェクト、ヴェネツィア・ビエンナーレと一生に一度は観たい芸術祭が今年いっぺんに開催されている。

2011年からアートやカルチャーを中心に、フリーランスで編集/ライターをしてきた私だが、実は上に名をあげた芸術祭のいずれも、未だ訪れたことがない(理由は貧乏暇なしだったから)。

今年はちょうど仕事の転機と重なり、時間がつくれたので、1ヶ月をかけて欧州で開催されている4つの芸術祭とアートスポットを、今夏、尋ねることにした。ベルリンでは友人も待ってくれている。

はやる気持ちをなだめて旅立ちの準備を進めていると、突然、仕事仲間の訃報が届いた。まだ若い。舞台制作のプロで国際的に活躍していた彼女の不幸を、にわかには信じられなかった。しかも、手配済みの飛行機の日程では、ちょうど彼女とのお別れに駆けつけられない。

しばし、3日ほど飛行機の日程をずらそうかと思索してみた。

いや、やはり、行こう。私の専門は現代美術で、彼女の舞台制作の世界とは少し異なるのだけれども、国際的にネットワークを築いて、「芸術をもっと」という気持ちは同じはず。未来も活躍するはずだった彼女の働きの、ほんの数パーセントでも、私が担えたら。そのためには、可能な限り時間を使って、欧州の芸術祭を肌で感じてこなければ。

訃報をきっかけに電話で話したデザイナーの友人が、旅にぴったりな本『詩のこころを読む』を教えてくれた。言葉を研ぎ澄ますことにばかり熱心だった私にとって、含むような詩のことばが、きっと心にしみるはず。旅先のお供をしてくれる本が決まった。もう一冊は、敬愛する原田マハさんの文庫を選ぶ。

旅程はおおよそしか決まっていない。旅の途中の宿の手配もまだだ。明日のフライトは11時。早朝のバスに乗って、エアポートへ向かおう。


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