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成人=部分矯正なの⁈ 部分矯正の意味

ハッカーは本来、〈コンピュータやインターネットに詳しい人〉を指す良い言葉だったのですが、いつの間にか
〈コンピュータに侵入して悪さをするヤツ〉として使われることが多くなっています。
本来の意味とは違って使われている言葉って、結構ありますよね。
部分矯正もそのひとつです。


部分矯正の歴史

歴史的には、
子供の歯並びの治療を矯正治療、
中でも歯並び・かみ合わせのすべてを治療するものを全顎矯正
成人の歯周病治療における歯の移動を
MTM(Minor Tooth Movement)= 部分矯正
と区別してきました。
同じ歯の移動なのに、年齢で言葉を使い分けたのが混乱のはじまり。
子供は全顎矯正、成人は部分矯正 と認識されてしまったのです。

部分矯正とは元々、歯周病患者さんに行われた治療です。
歯を失うと、そこに向かって隣の歯が倒れたり、ねじれたり、すき間ができたりします。
そんな方に入れ歯や差し歯、インプラントを入れるには、
前処置として、歯の傾きや位置に部分的な修正を加える必要がありました。
メインの治療を行うためのサブ治療が部分矯正だったのです。
歯周病治療の一環としての歯の移動 という位置づけです。

今ではそれをプチと呼ぶ

それがいつしか曲解され、
気になる部分だけを並べる治療を部分矯正と呼ぶようになってきました。
さらに最近ではプチ矯正とか、ブライダル矯正とか、おしゃれな用語に変換されて美容医療の一環としての地位を固めつつあります。

この曲解された部分矯正が、矯正歯科治療の普及に一役買っているのは確かなのですが、
全顎矯正が希望の成人なのに、プチしか出来ない歯科医院に行くと、
年齢を理由にプチしか提案されないケースも多々あるようです。
年齢で全顎矯正を断念する、あるいはさせられるのは憂慮すべき事態です。

歯科ちんれつと呼ぶのはどう?

求める側と提供する側の〈何を歯の矯正と呼ぶか〉という認識の違いによるトラブルを避けるためにも、僕は拙著の中で

歯並びだけ治す=歯科陳列(ちんれつ)
歯並び・かみ合わせ両方を治す=歯科矯正
このように呼ぶのはどうかと提案しました。

「そちらの病院では、歯科矯正はやっていますか?」
とか
「歯科ちんれつを希望しているのですが…」
などのやりとりが増えてくることを期待しているのですが、
今のところ普及する兆しは見えません (´・ω・`)

月9の主人公が歯科ちんれつを受けてくれれば、この用語ももっと普及するのですが…


参考文献
宝泉寺綾太郎:それを歯の矯正とよばないで

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