商社マン”イケ男”の哀愁 ①/④
「え~、ってかぶっちゃけ、お二人ってどのくらい貰ってるんですかあ?」
今日は2対2の合コン。
「いや、全然もらってないよ。ボーナス入れて一千数百万とかだし。」
そう言いながら、イケ次郎が目配せしてくる。
「そうそう、俺らの先輩なんて、ほとんど仕事しないのに数千万貰ってる人もいるのにさあ!」
「え!スゴーイ!そんだけ若いのに?」
バトンは持ちすぎちゃいけない。
「またまたそんなこと言っちゃってw。○○ちゃんだって、その靴ジミーチュウじゃんか」
そういえば、大学時代に付き合ってた5ヶ上の元カノも、似たようなの履いてたな。
「あ、これはでも、パパに買ってもらっただけですよ。」
かわいい○○ちゃん。目玉が一瞬ブサイクになった。
「その人はフリーターなんだけど、転売ヤーだから金だけはあるのww」
「マジ?それはちょっとダサいかもねw」
話を合わせるイケ次郎。再度目配せしてくる。その目は明らかにこう語りかけている。
『今日だけはコンプレックスこじらせるなよ。』
入社後は、コスタリカの農家たちに経済の仕組みを教えつつ、手練手管で喜ばせた。それが利益と幸福に繋がると信じて。
大学で、アメフト部に入った。『チーム』という尊いものを、心から理解できると聞いて。
高校時、よく寝落ちした。睡眠直前は短期記憶の効率が良いと言われて。
物心ついた頃、楽しかった。
「転売ヤーってほんとゴミだよな!言い辛いけど、俺らみたいに真っ当に働いて欲しいわw」
イケ次郎は満足そうだし、女の子もこっちに惹かれてる。
「にしてもイケ男さんたちの彼女さんは幸せだろうな~。『ザ・勝ち組』って感じだもん!」
合コンもそろそろ終わる。
「いや~、俺らいま彼女いないのよw」
安く買って、高く売る。商社業務を転売だと貶す奴は、おおざっぱにしかモノを考えられないバカだ。
でも一方で、『商社マン』だと褒められるたびに胸がザワつく自分もいる。
神経質すぎるんだろうか。