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作者「肝試し感覚でどうぞ」
「今日は、インタビューの依頼を引き受けて下さって、本当にありがとうございます。」
Zoomの中からライターが挨拶をしてくる。
「とんでもない笑。こちらこそお酒を飲みながらにはなりますが、どうぞよろしくお願いします。」
木製のテーブルの上に、PCとグラスが置いてある。
分厚いスチールでできた壁が、声をほんの少し反響させる。
男はかれこれ20年、コンテナの中から一歩も外へ出ていない。
「早速ですが、普段は何をなされてるんですか?」
「一応プログラマーですね。個人で、スマホのカジュアルゲームを作ったりしてます。」
「結構、一日中がっつり仕事してる感じで。」
「あ、そうではなくて。平均で4.5時間コードを書いたら、あとはウーバーイーツ食べながら映画とか見てる感じですね。」
「それは羨ましいw。でも、ずっとそんな生活してたら、さすがに気が滅入ったりしません?」
秘密基地のような紺色のコンテナ。天井は一面マジックミラー仕様で、リモコン式のカーテンも付いている。
「いや~、それがしないんですよね笑。ランニングマシーンでかなりの距離歩いてますし、日光もちゃんと浴びてるんで。たぶん、その辺の人より心身ともに健康ですよ笑。」
ニヤニヤと笑いながら答える。インタビュアーの顔が若干ひきつったように見える。
「なるほどw」
「人づきあいとかも避けてるんですよ。結婚とかする気ないですし。」
「かなり振り切ってますねw。」
「はい笑。やっぱり現実と向き合い出すと、フィクションに虚しさが乗っちゃうんですよね笑。映画の主人公とかに自己投影できなくなっちゃったり。」
30年物のウイスキーが、丸い氷を溶かしている。
「メタ認知しちゃう、と。」
「その通りです。」
「じゃあもう本当に、今後もそこから出ないつもりなんですか?」
「ええ。それで十分でしょう。どうせ死ぬんだから笑。」
そうしてインタビューが終わると、男は映画を見始めた。
画面はとても、薄っぺらい。