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「君のそんな言葉を聞きながら、二人で一緒に死ねるなんて幸せだよ。」
私達、今日までずいぶんと長生きしたわね。
うん。それに、ずいぶんと一緒に時間を過ごしたね。
あなた、あの時のこと覚えてる?スペインで食べ放題をしたときのこと。
ああ笑。あの時はふたりとも若かったね。それに、ヨーロッパ中が活気に溢れてて、食べ物も信じられないくらい味わい深かった。帰りに寄ったアメリカはいまいちだったけど笑。
良かった、あなたが覚えていてくれて。
忘れるわけないだろう。
それじゃあ、今度は僕の方から訊かせてもらうよ。あの時のことは覚えてる?
もちろんよ。あのときは、みんな一時的なパニックに陥ってた。場所はたしか、ニホンのコクサイロボットフォーラム、だったかしら。
そうそう。よく覚えているね。
うん。なにしろ、今だから言うけれど、あなたに惚れたのはあの時よ。
え?そうだったのか。
そうよお。私達みんな、一瞬パニック状態だったじゃない。あの会場で沢山ご飯を食べられると思ってたのに、ステージには全然ご飯がなくて。
そうだったね笑。そこで僕が、同じような形をしていても、ご飯が出てくるものと出てこないものがあるんだと気づいたんだ。
あのときはかっこよかったわ。
君のそんな言葉を聞きながら、二人で一緒に死ねるなんて幸せだよ。
私も幸せよ。人間にスマホがくっついてから、私達はみるみる痩せてしまったけれど、今は信じられないくらい穏やかな気持ち。
僕もさ。
二匹の獏が静かに息を引き取った時、人々はみな、豊富なコンテンツに触れて笑っていた。同時にそれらのおかげで、自分で夢や妄想を抱く必要もなくなった。