元気じゃない
「元気?」と聞かれたら、なんと返しますか?
「うん!元気だよー。」
※ここで主張させていただきたい。この「元気だよ」という返しは、「今現在絶好調というわけではないけれども特に心身ともに支障をきたしているわけではなく生活していくには問題のないレベルです。」を省略させたものです。(私の場合)
なので、なんかもやもやしてパッとしないなーというときも、生理が近くてイライラ気味のときも、職場で理不尽な目にあっても「元気だよ。」
細かくそのときの状況を説明するのは面倒だし、聞いてくれた人に心配をかけたくないのですべてを飲み込んで、「元気だよ。」
ただ、「元気じゃない」ときも、たしかにある。
こんなに印象に残っているのに、そこまで追い詰められていた理由が思い出せない。とにかくそのときの私は元気でも大丈夫でもなかった。人にリアルタイムで相談することが苦手で、時間がかかってもひたすら自問自答して消化させる私はその夜も沈みこんでいた。とにかく寝ようとベッドに入ったとき、電話が鳴った。10年来の男友達からだった。
「元気か?」と聞かれた瞬間、プツンと私の中のなにかがはじけた。
「・・・ごめん、元気じゃない。大丈夫じゃない。ごめん、しんどい。。。」
そう言って電話口でヒンヒン泣き出した。
話を聞いてもらいたかったのではない。ただ、自分が元気じゃないことを知ってほしかったのだ。
彼は少し驚いていたようだったが、「なんだなんだ。なにがあった?」と笑いながら聞いてくれた。泣く私をおもしろがってくれたのがまた彼らしくて、それだけでほっとした。
「ほんっとおまえまじめだよなー。ま、そういうとこいいと思うけど。俺には真似できないし。」と、ひととおり話を聞き終えた住所不定無職アウトロー40歳は言った。
「うん、自分がまじめなのはわかってる。ほんと生きづらいなーって思ってる。」と、ティッシュで涙と鼻水をぬぐいながら答える。お風呂上がりにぬった化粧水も乳液ももうパアだろう。いけいけ涙と一緒に全部流れちまえ。
「・・・ごめん、ありがと。泣いたらだいぶすっきりした。」
「ならよかった。どうせ目腫れるんだし、明日は仕事休んじまえ。」
「いや、このくらいで休まないよ。それに泣いたあと目腫れるのって目こするからなんだって。涙たれ流してるから大丈夫なはず。」
また彼は大きく笑った。
「ほんとそーゆーとこな。ま、いい夢見ろよ。おやすみ。」
夢も見ず、ぐっすり眠った。
明日の私は、少なくとも今夜よりは、元気だろう。
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