#日々のこと/ホットケーキはしあわせのシンボルか,それに近い何か。
よく晴れて気持ちいい日曜日の午後。
家で静かに過ごしていたら、急にホットケーキが食べたくなった。それもお店で焼かれたやつじゃなくて、自分で焼いたやつ。
突然わき上がった本能?に突き動かされるように、わざわざコンビニまでホットケーキミックスと牛乳を買いに行って久しぶりに焼いてみた。ごくごく弱火で火を通しながら、表面にプツプツ気泡が膨らんでは弾けていくのを見ていたら、急に私がわくわくしていたのは、目の前で焼いているホットケーキそのものではなくて、ホットケーキにくっついている「幸福な」イメージなんだと気がついた。
小さいころ、母が焼いてくれるホットケーキが大好きだった。
母はホットケーキ名人ではなかったので、
黒くこげていたりもするのだけど、
時間をかけてふっくらと膨らんでいくホットケーキに胸を踊らせた記憶。
表面にのせたバターがとろけて滴り落ちて皿へ流れる様子や
たっぷりのハチミツ(たくさんかけて怒られた記憶も)。
こんがり焼き上がってふわーっと漂う甘いにおいと立ち昇る湯気。
その光景が、確かな幸せだった。幼い私には特別だった。
あの時に口にしたホットケーキは私を遠く幸せなどこかへ運んでくれた。
その記憶が離れない。いつまで経っても、幸せをちょっとかみしめたい時、
無意識に幸せを調達しようとする時ふと、ホットケーキが食べたくなるのかもしれない。「ねぇママ、ホットケーキ焼いて」って。
でも大人になった私は、自分でホットケーキミックスと牛乳と卵を混ぜて、フライパンを温め、生地を流し込んで、自分で自分のためにホットケーキを焼く。私は自分のためにホットケーキを焼ける大人になったんだ。
私は母に似て上手に焼けないから、今日の仕上がりはこんな感じ。
大学生の頃に親友が家に遊びに来て、
なぜかホットケーキを焼いてくれたことがあった。
彼女は濡れぶきんでフライパンの温度を均一に下げるという武器を
持っていて、目の前でムラのないきれいなきつね色のホットケーキを
焼いてくれて、とても感動したのを覚えている。
ホットケーキミックスのパッケージみたいな完璧なホットケーキ。
ホットケーキは幸せそのものの食べ物。幸せのシンボル、もしくはそれに近い何か。だから時々、無性に食べたくなって困る。
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