キュリナリーズのポトフ20
前回はこちら↓
第一話はこちら↓
* * *
「ミルラ、ポトフをかき混ぜるのを代わってくれる?」
「わかった」
母は下腕で梯子を掴んで体を支えながら、上腕でポトフをかき混ぜていた。
杓子は巨釜のサイズに合わせて、船の櫂ほどの大きさである。
ひとりで長時間扱うのは重労働だ。
ミルラは母から背丈ほどある杓子を受け取ると、母が下ってきたようにして梯子を上る。
ポトフはシルイラスの出汁でほのかに金色を帯び、野菜が程よく崩れていた。
もうすぐポトフが出来上がる。
そして、長く険しい冬が始まる。
キュリナリーズのポトフは、命をつなぐために作られる。
かつて赤子だった妹姫がそうであったように。
しかし、そのつながれた命は、一夜で国をひとつ滅ぼした。
彼女は本当に愛されていなかったのだろうか。
なぜ人々は4本の腕を有しているのであろうか。
どうして彼の地は「キュリナリーズ」と呼ばれるのだろうか。
愛と、哀しみと、憎しみが混ざり溶け込んだポトフの謎は、
別の物語で語られるであろう。
――おわり
* * *
ご清覧ありがとうございます。
ただいまnoteに創作やエッセイなどを毎日更新しております。
夢の出版のためにこれからも続けていく所存です。
noteアカウントとXアカウントのフォローをしていただけますと励みになります。
引用リポストによるご感想の投稿もお待ちしております。
Xアカウント:@aykatoreika
▶その他作品