アヤトレイ/Ayato Rei

暮らし、幸せ、生きることをテーマにした創作をまとめています。

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    文芸部「ふみのわ」の文芸集です。 顧問のわたし、文(ふみ)先生が定期的に課題 "ぶんげぇむ" を出しますので、部員の皆さんはしっかりと課題に取り組んでくださいね! もちろん部員でない方も、ご自由にお読みいただけます。 ぜひフォローしてくださいね。

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自己紹介|アヤトレイ(綾斗 礼)

フリーランスで作家・編集者・オウンドメディアプロデューサーとして活動するアヤトレイ(綾斗 礼)のプロフィールページです。お仕事のご相談などはTwitterのDMよりご連絡いただけますと幸いです。 経歴お仕事としてできることご依頼いただける仕事の種類を実績とあわせてご紹介します。主にオウンドメディアやオンラインイベントに関わる業務をお引受け可能です。プロジェクトマネージャー(PM)や新規事業立ち上げ経験もあるため、0→1のプロジェクトにも参画いたします。テーマやジャンルは「サ

    • 【全話まとめ 2/2】キュリナリーズのポトフ

      第十一話 第十二話 第十三話 第十四話 第十五話 第十六話 第十七話 第十八話 第十九話 第二十話 ↓一~十話

      • 【ミニエッセイ】そよぐ風とそそぐ陽光に包まれて

        人は幸せを求める。 そのために美しさを、富を、栄誉を追いかける。 息を切らして、体がボロボロになりながらも。 走り抜けることに夢中になりすぎて、 通り過ぎていくものに心寄せることも叶わずに。 そこまでして求める幸せとはいったい何だろう。 今朝の6時半。 私はいつもと同じようにカーテンと窓を開く。 開かれた隙間から、こぼれるように差し込む陽の光と、 くすぐるような爽やかな風が、 私の感情を揺れ動かす。 それはまるで偉大なる大自然が、 温かい眼差しで、愛おしく抱きしめてく

        • 【全話まとめ 1/2】キュリナリーズのポトフ

          第一話 第二話 第三話 第四話 第五話 第六話 第七話 第八話 第九話 第十話 ↓十一~二十話

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        記事

          キュリナリーズのポトフ20

          前回はこちら↓ 第一話はこちら↓ * * * 「ミルラ、ポトフをかき混ぜるのを代わってくれる?」 「わかった」 母は下腕で梯子を掴んで体を支えながら、上腕でポトフをかき混ぜていた。 杓子は巨釜のサイズに合わせて、船の櫂ほどの大きさである。 ひとりで長時間扱うのは重労働だ。 ミルラは母から背丈ほどある杓子を受け取ると、母が下ってきたようにして梯子を上る。 ポトフはシルイラスの出汁でほのかに金色を帯び、野菜が程よく崩れていた。 もうすぐポトフが出来上がる。 そして、

          キュリナリーズのポトフ20

          キュリナリーズのポトフ19

          前回はこちら↓ 第一話はこちら↓ * * * 「もう大丈夫よ」 娘たちに駆け寄った母は、すぐに匙で器の中身をすくう。 そして、赤子の唇にそっと匙をあてて、ゆっくりと流し入れるように食べ与えた。 母が与えているのは、ポトフだった。 姉は今にも顔は泣き出しそうな顔で、妹がポトフを嚥下するのを見守る。 冷え切った小さな体を強く抱きしめ、命をつなぎとめる。 母も一杯、また一杯と与えるポトフに望みを託した。 廊下で待つ従者たちはただただ祈る。 誰もが、小さな命の生きる力を信

          キュリナリーズのポトフ19

          キュリナリーズのポトフ18

          前回はこちら↓ 第一話はこちら↓ * * * 姉妹がいる部屋の外から、車輪が走る音が近づいてくる。 もっとも音が大きくなった途端に静かになったと思いきや、激しい衝撃音と共に扉が開かれた。 現れたのは、女性。 この国の妃であり、ふたりの母であった。 部屋に入ってきたのは母だけだった。 車輪の音の招待は荷車であり、扉より大きいために部屋に入ることができない。 荷車は四人の従者によって運ばれ、中心には煮えたぎる鍋が置かれていた。 従者のひとりが急いで鍋の中身を尺で救い、

          キュリナリーズのポトフ18

          キュリナリーズのポトフ17

          前回はこちら↓ 第一話はこちら↓ * * * 「かあさま、かあさま! まだ!? はやくきてよ! しんでしまうよ!」 暖炉の前に少女が立っている。 扉に向かって、母を必死に呼ぶ。 彼女はその場から離れることができなかった。 少女の腕には赤子が抱かれていた。 赤子の息はか細く、体は氷のように冷たかった。 外は一面の吹雪。 白い獣がうめき声を上げて、容赦なく建物に襲い掛かる。 小さな命たちは、獣と戦っていた。 少女は暖炉の前で毛布でくるまれた赤子の体を必死にこする。 額

          キュリナリーズのポトフ17

          キュリナリーズのポトフ16

          前回はこちら↓ 第一話はこちら↓ * * * 妹姫は荒々しい表情で腕を天に掲げる。 それが合図のように、彼女を渦巻いていた吹雪がさらに強く、早く、冷たさを増して広間中に吹きすさぶ。 吹雪に囲まれ、誰もみな、視界が真っ白になった。 そして少しずつ意識が沈み出し、世界に暗闇が訪れる。 ――つづく ↓続きはこちら * * * ご清覧ありがとうございます。 ただいまnoteに創作やエッセイなどを毎日更新しております。 夢の出版のためにこれからも続けていく所存です。 n

          キュリナリーズのポトフ16

          キュリナリーズのポトフ15

          前回はこちら↓ 第一話はこちら↓ * * * 妹姫は扉を開く。 凍える風が広間に吹き込んだ。 立ち込めていた煙は一気に換気され、人々は息苦しさから解放された。 しかし、くべていた大きな火が消し去られてしまい、その代償は大きかった。 次第に体温が奪われていく。 人々に逃げる場所はなかった。 妹姫はかつて家族であった国王と妃と姉姫に、憎しみにそまった眼差しを向ける。 三人は肩を寄せ合っていた。 その姿に妹姫は腸が煮えかえるような怒りと、 一夜で幸福と栄華を奪われる憐れな

          キュリナリーズのポトフ15

          キュリナリーズのポトフ14

          前回はこちら↓ 第一話はこちら↓ * * * 無慈悲なまでに人々の命を奪う冷気と吹雪を招いたのは変わり果てた妹姫だった。 妹姫は宙に浮きながら、城に向かう。 城には国王と妃、姉姫と臣下たちが籠城している。 ありったけの燃やせるものを城中から集め、皆は玉座の間で火をくべた。 充満していく煙に咽びながら、身を寄せ合って暖をとる。 なぜこんなことが起きたのだろう。 いつまで耐えればいいのだろう。 生き延びることができるのだろう。 疑問、不安、恐怖が城の者たちの芽生えてく

          キュリナリーズのポトフ14

          キュリナリーズのポトフ13

          前回はこちら↓ 第一話はこちら↓ * * * 「あああぁぁ…!! お願い、息をして! おねがい…!」 火がくべられた暖炉の前で母親が泣き叫ぶ。 その腕で抱いていた我が子が、絶命した。 町を突如襲った冷気は、赤子や年寄り、体の弱い者から命を奪っていった。 彼らと共に暮らす者たちの悲痛の声が町中に響く。 だが、ほどなくして、その声もひとつ、またひとつと消えていく。 響き渡るのは一面を銀世界と化す吹雪の音だけになった。 その白い悪魔は、城に近づいていく。 ――つづく

          キュリナリーズのポトフ13

          キュリナリーズのポトフ12

          前回はこちら↓ 第一話はこちら↓ * * * 夕暮れ時を迎えるにも関わらず、姉姫の生誕祭の賑わいは一向に止むことはなかった。 この国は未来永劫栄え続けると、誰もみな確信していた。 国民も、国王も、妃も、未来の指導者となる姉姫も。 太陽が西に傾き始める。 空は燃えるような色に染まってきているが、空気はその茜色にそぐわない澄み切ったものになってきている。 明らかに冬の空気であった。 だが、例年のものとは明らかに違った。 人々は呼吸を重ねるごとに、胸の奥に絞れるような痛み

          キュリナリーズのポトフ12

          キュリナリーズのポトフ11

          前回はこちら↓ 第一話はこちら↓ * * * 漆黒の霧は瞬く間に立ち込め、たちまち姫を覆い姿を隠す。 霧はやがて規則性を帯び、姫を中心に竜巻の如く渦を巻いた。 姫が立っていたそこは明らかに強大な力場となり、人が知覚することは適わぬ速度で破壊と創造が繰り返された。 いつの間にか、それは姿を消していた。 姫は果たしてどうなったのであろうか。 事の行く末を知るには、幾分かで十分だった。 漆黒の霧は徐々に白みがかって鈍色となり、白濁色となり、シルクのような光沢を帯びたとき

          キュリナリーズのポトフ11

          キュリナリーズのポトフ⑩

          前回はこちら↓ 第一話はこちら↓ * * * 姫は悴んだ唇でつぶやく。 「私には、もう居場所も生きる意味もない。でも、せめて私のこの哀しみを、不幸を、あいつらに味あわせてから死んでやる」 それは、か細い姫の声を一言一句聞き漏らさず聞いていた。 「しかと聞き届けたぞ」 そして、四本の腕を空に向けて高らかに挙げると、たちまち暗雲が立ち込める。 その光景は不吉で邪悪で、まるでこの世の終わりを告げるかのようだった。 やがて姫とそれを囲む木々の間から、漆黒の霧が忍び寄る

          キュリナリーズのポトフ⑩

          キュリナリーズのポトフ⑨

          前回はこちら↓ 第一話はこちら↓ * * * 「ね、願い…?」 姫は困惑した。願いとは、何のことだろうか。 今自分が願うところは、命が助かることだ。 だから、立ち去ってくれるというのか? …そんなはずはない。 そうであれば、最初から現れることなどしないだろう。 姫は「願い」について思考を巡らせていた。 いや、正確には思考を巡らす「ふり」をしていたのだ。 自らに芽生えたどす黒いものに触れないために。 だが、それにはお見通しだった。 「何をためらっている? お前が選

          キュリナリーズのポトフ⑨