大河ドラマは現代を映す鏡〜「べらぼう」第1話感想〜
こんにちは。
福岡でテレビショッピングを中心に映像ディレクターをしている別府です。3児の母、共働きのフリーランスです。
今日は2025年新しく始まった大河ドラマ「べらぼう」の面白さと大河ドラマについて。まだ第1話なので全然間に合います!
大河ドラマ「べらぼう」は、江戸時代が舞台。“蔦重”(つたじゅう)こと蔦屋重三郎(TSUTAYAとは直接の関係は無いそう)を中心に、庶民の力強い生き様と商才を描いた一作です。その魅力を、演出の視点で掘り下げながら、横浜流星さんの熱演や、江戸庶民のマーケット感覚、さらに吉原の持つ光と影について考察してみたいと思います。
横浜流星さんの意気込み
「べらぼう」で主人公を演じる横浜流星さんは、その役にかける意気込みが画面越しにも伝わってきます。彼が演じる主人公・蔦重は、幼少期親に吉原に捨てられた身ながら江戸での成功を目指す青年です。その役柄において、横浜さんはただの熱血漢ではなく、繊細な表情や内面の葛藤も巧みに表現しています。もう、表情が!話し方が!まんま江戸っ子の青年!(江戸っ子にあったことないけど!)
特に印象的だったのは、河岸の女郎達は食うものに困り病死していく中、女郎達の稼ぎで引手茶屋の主たちが美味しい料理を食べている宴席シーン。
啖呵をきる真剣さと負けない逞しさと切り替えの速さ。
さらに知人の旦那の荷物持ちのふりをして江戸城に入城し、田沼意次に吉原の女郎達の窮状を直談判するシーン。
蔦重が目上のものにも怖気付かずに、相手の利も考慮し訴える、切り返しのトーク術。さらにその返しで渡辺謙さんの「お前は吉原に人を呼ぶ工夫はしたのか?」というドスの効いた台詞と横顔の凄み。
この賢者の金言が江戸のマーケティング物語のスタートで第1話が終了します。
とにかく、話のキレが良い。
特番で横浜さんはインタビューで「こうやりたい、というと自分が出てしまう。蔦重ならどうするか?を考えてその人物を生きるようにしている」とおっしゃっていて、その言葉通り、視聴者に江戸っ子の活気と人情を体感させてくれます。
また、演出として注目したいのは、横浜さんが女性キャラクターとの関係性をどう演じているかです。蔦重と彼を支える女性たちのやり取りには、性別を超えた信頼や共感が描かれており、当時も結構こんな関係性だったんだろうな〜と想起されて女性視点でも興味深い部分が多かったです。
もちろん、それ以外の出演者が豪華すぎて。
個人的には男女逆転大奥で将軍を演じ今回は大奥総取締高岳役で出演の冨永愛さん、茶屋の女主人を演じる安達祐実さん、花魁の花の井役の小芝風花さん、もう書ききれない!
全ての役者が名のある方々ばかりで味のある演技に注目しています。
江戸庶民のマーケット感覚
「べらぼう」のもう一つの魅力は、江戸庶民が持つマーケット感覚のリアリティです。江戸時代は、日本の都市経済が発展した時期であり、庶民も活発に商売を行っていました。
本作では、今後トーク術や人の興味を引くにはどうしたらいいか?仕組みに知恵を出しその試行錯誤が垣間見える予想で大変面白そうな展開で、視聴者に考えるきっかけを与えます。
(第1話ではまだそこまでのマーケットの話は登場しません)
その見た目の工夫や興味を引く仕掛けや商売の仕組みは現在に通じるところが大いにあると思いますので試聴をお勧めします。
商売をする人はもちろん、会社としていかに商品を売っていくか試行錯誤が必要な会社員、経済を陰で支える公務員、社会経済をこれから担っていく子供達を育てる教師など。
日本人全員に見てほしい。
見て、停滞した日本に江戸の活気を取り戻したいと思いました。
江戸時代も400年も長期平和が続いたからこそ文化芸術が花開き、最後は腐敗し列強に追いつけ追い越せで海外に攻められ独自文化が廃れていきました。
その流れ…あれ…現代にも似ているような…
戦後、昭和が長く続き高度経済発展とともにゲームや漫画アニメなど日本独自のカルチャーが生まれました。しかし失われた30年、高齢者が増え外国もきなくさく戦争の火種もあちこちに。
今こそ工夫と知恵で庶民が元気になる時なんじゃないか?
大河ドラマは現代の世相を反映しているとはまさに本当だなと思います。
女性たちの暮らしと美しい目の保養
女性として特に心を打たれたのは、女性の活躍と美術全般。
遊郭という現代にはない場所ですが、それでも貧困や女性子供が影響を受ける庶民の生活、その中でも軸を持ち生活の中で楽しみを見出す(蔦重の営む貸本を読み強要を身につける)女郎達の生き生きとした生活の様子は勇気づけられます。
前回の大河ドラマ「光る君へ」は平安時代の十二単や宮中女官たちなど雅な美しさの世界だったのが一点、着物は様々に重ね着され、柄物に色味、遊郭のお座敷の妖艶な舞台にあいまった、彩り豊かなのに全く違う世界観。
女性達の化粧や花魁の衣装道具の類など、眺めるだけで惚れ惚れする世界がするが目に楽しい今作となっています。
ただ女性演出としては、蔦重とその幼馴染の花魁"花の井"を育てた河岸の病気の姐さんが病気で亡くなった時に裸で埋められ、服は剥ぎ取り売られるという現実の辛いシーン。
大河、NHKとして裸体を堂々と3人ロングで写しているところは珍しいけど、引きで雑多感が表されていてなんとも男性目線(今回は演出陣は全員男性の模様)な感じが…。確かに当時の扱いがそうなのかもしれないが演者に敬意が欲しいと言いますか…美術的にあの引きだけ他のシーンとなじみに違和感があるというか。芸術に正解は無いと思いますが…モヤモヤはしました。
吉原の光と影
江戸時代の象徴的な存在である吉原遊廓も、「べらぼう」の重要な舞台の一つです。華やかな外見とは裏腹に、その背後には多くの矛盾や葛藤が存在していました。本作では、その光と影がリアルに描かれています。
吉原の描写において注目すべきは、ただの豪華さを強調するだけではなく、そこで働く人々の生活や感情に焦点を当てている点です。
子供の頃から吉原に捨てられ、廓の世界だけで生活してきた蔦重が女性たちや茶屋主人たち、またひいてはこれから平賀源内や幕府の将軍・重臣らと関わるなかで、彼自身も成長し、新たな価値観を世界に広げていきます。
江戸公認の吉原。
囲われた場所だからこそ、実験場のように周りに染まらず面白い発想ができ試せたのかもしれません。他に忖度せずに推し進める勇気をもらえます。
ここは現代の商売でも大事な点かもしれないなと感じました。
いかに相手に利するか。
社会に良い影響を与えられるか。
そして自分が楽しめるかどうか?
また吉原らしさ、江戸らしさという意味で注目が花の井と蔦重のやりとり。
遊女の最高峰、花魁の幼馴染"花の井"と茶屋で働く蔦重のやりとりは大変な吉原の中でも幼馴染の友人とした明るいやりとりが気持ちよかったです。
花魁言葉の「〜ありんす」という言葉と江戸っ子の蔦重の軽妙なやりとりがこれを"耳で聞く"だけでも気持ち良いドラマ。今後も楽しみです。
圧倒的格差社会において、江戸時代の庶民たちが直面している現実を理解し、その中でどう生き抜いたのかを考えるきっかけとなりました。
映像の美しさ
冒頭から吉原が燃える大火災から幕を開けます。
上空から見たり街角を逃げ惑う人々、火の見櫓から鐘を鳴らす蔦重が見た江戸の街があちこちに火災旋風が巻き上がるシーンは凄かったです。たくさんの専門家が関わってるんだろうなと感じさせるリアリティ。
また、毎回私が大河ドラマで楽しみにしているのがオープニングなんですが、今回もまた素晴しかった!正直これだけを見る価値があります。
浮世絵の人々が動き出すようなアニメーションに出演者の写真が組み合わさり、版画や切り絵、さらに横尾忠則さんのような独特のイラストレーションと相まって煌びやかな世界が広がります。
全ての要素が細かい動きをしていてこれ時間かなり使ったろうな…
ああ、日本人はこの色彩と線画を先祖から眺めてきてDNAに染み付いた独特のセンスが美しいなと感じさせます。
あ、今回は語りが吉原にあったお稲荷さん(きつね)が語り(ナレーション)。
ということで女郎風の衣装でしっぽをつけた綾瀬はるかが可愛らしく吉原の街を駆け抜けていき桜と共に消えていく合成演出が愛らしかったです。(もう少し合成上手くできそうな気もしないでもない)
おわりに
大河ドラマ「べらぼう」は、江戸時代の庶民の生活や文化を丁寧に描きながら、現代にも通じるテーマを提示しています。横浜流星さんの熱演、江戸庶民のマーケット感覚のリアルさ、そして吉原の光と影の描写は、いずれも女性ディレクターとして興味深く感じられる要素でした。
本作を通じて、多くの視聴者が江戸時代の魅力を再発見すると同時に、現代の自分たちの生き方についても考える機会となればと思います。
第1話でこれからの「べらぼう」の世界は、さらに深みを増して楽しめることだろうと予見できましたので今後が楽しみです。
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