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ノンアルコール勢もワインステージに挑むジロ・デ・イタリア2022

5月である。ジロ・デ・イタリアの季節である。いよいよ5月6日(金)から始まるのである。今年は2018年ぶりの国外スタート。開幕地は「ドナウの真珠」ことハンガリーの首都ブダペストで、3日間を過ごした後シチリアに飛び、そこからイタリア半島を北上する。
全21ステージの総走行距離は3,445.6km、総獲得標高は50,586mと山岳偏重の設定がジロらしい。フィニッシュ地は「ロミオとジュリエット」で知られる古都ヴェローナで、最終日は個人タイムトライアル。ジロが厳しいなあと思うのはこういうところ。ツールのような四賞スペシャルジャージのなごやかなパレードランなど許されない。最後の最後まで全力疾走なのだ。

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Giro d'Italia 2022 route map (Image credit: RCS Sport)

ルートに毎年登場するのがイタリアが誇るワインをフィーチャーしたワインステージ(今年はワインステージに加えてフードステージもあるようだ)
選手たちにイタリアングルメを楽しむ余裕などないだろうが、観る側は是非とも堪能したいところ。美しい景色を背景にした選手の力走をつまみにワインを楽しむ、なんて通っぽいし素敵だ。知り合いの観戦仲間は毎年コースにちなんだワインを用意しているようで、レースの展開や選手を凝視する以外にこんな楽しみ方もあるのか、と目からうろこが落ちる思いである。

その観戦仲間のナイスなジロ×ワイン記事を貼っておく。そこはかとなく漂うガビリア愛も良い。

それでは自分もワインを用意して…といきたいところだが、ここで大きな問題に直面する。自分はアルコールが飲めない人間、つまり下戸なのである。

若い頃に先輩方から「飲んでいるうちに慣れるよ」と言われたが、いつになっても慣れない。アルコールが体に入ると、途端に具合が悪くなる。周りの人たちが朗らかに頬を上気させる横で、超級山岳アタックもかくやと思うような心拍数と頭痛、悪寒にさいなまれる。もう全然楽しくないし、口数も減る。お酒のある場の雰囲気やつまみとして登場する食べ物は大好きなのに、アルコールだけがダメ。しばらく頑張ってみた後で、前世で飲み過ぎたせいだろうと結論づけて諦めた。

ということで、用意するワインはノンアルコールでなければならない。イタリアのノンアルコールワインなんて見たことないけど1本くらいはあるでしょう、と探してみたところ、昨年春に書かれた特集記事を見つけた。渡りに船である。早速こちらで紹介されているワインを取り寄せてみた。

記事の中でイタリアでノンアルコールワインが盛り上がらない理由も解説されていた。すごくわかる気がする。

そもそもノンアルコール・ワイン製造の分野で、イタリアはフランスなどのEU(欧州連合)諸国に後れをとってきた。イタリア国内の需要が少なかったからだ。親戚の集まりやパーティーが多く、アルコール分解能が高いという体質もあるのか、イタリアの道路交通法で飲酒運転の罰則が定められたのはEU統合直前の1992年のことで、それまではおおらかだった。

「ワイン大好きイタリア 次はノンアル・スパークリング」より

かくして我が家にノンアルコールワインがやってきた。せっかくなので産地の近くを走る日に飲みたいところ。ということで以下にまとめてみた。

ドネリ「グレープ・スパークリング」

  • ドネリはエミリア・ロマーニャの地酒、赤い発泡性ワイン「ランブルスコ」で有名なワイナリー。

  • ロッソ(赤)、ビアンコ(白)、ローズ(ロゼ)の3種類があり、今回購入したのはロッソとビアンコの飲み比べセット。

  • これを飲むべきステージは5月18日(水)の第11ステージ。この日は「パルミジャーノ・レッジャーノ・フードステージ」で、フィニッシュ地レッジョ・エミリアは、「レ・デイ・フォルマッジ(チーズの王様)」の産地。難易度は星1つのド平坦ステージゆえ波乱がなければ最後は集団スプリントになるでしょう。マーク・カヴェンディッシュ(イギリス / クイックステップ・アルファヴィニル)の勝利に期待。

アンナ・スピナート「ゴッチェ・ディ・ルーナ」

  • アンナ・スピナートは世界的に有名なスプマンテ「プロセッコ」を生産するヴェネト州ピアーヴェ川近郊のワイナリー。

  • ジロ・デ・イタリアの表彰式で使用されるのはフランス産スパークリングワインのシャンパンではなく、ヴェネト州産のプロセッコ。ちなみにジロのオフィシャルプロセッコを提供しているのはアストリア社。

  • これを開けるのは5月26日(木)第18ステージでしょうか。今年最後のスプリントステージで難易度は星1つ。フィニッシュはフルフラットなので迫力ある集団スプリントが楽しみ、と言いたいところだが、何人のスプリンターが残っているかは謎。カヴェンディッシュに加えてカレブ・ユアン(オーストラリア / ロット・スーダル)やマチュー・ファンデルプール(オランダ  / アルペシン・フェニックス)は帰宅していそうなので、アルノー・デマール(フランス / グルパマFDJ)に一票

プリンセス「ボッリチーネ・ドライ・アルテルナティヴァ・アルコール0.0」

  • プリンセス社の所在地は白ワインの名産地トレンティーノ=アルト・アディジェ州。「イタリアの屋根」と呼ばれる山々を構えるイタリアの最北端。

  • プリンセス社はイタリアンワインをノンアルコール民に届けるためにワインのアルコール度数を下げる研究を行ってきた会社で、2016年にはハラール認証を取得したそう。自分のような人間には嬉し過ぎる取り組みです。辛口の白のスパークリングなんて美味しいに決まっている。なおノンアルコールは甘口のドリンクが多いが、自分は辛口の方が好き。

  • これは5月25日(水)第17ステージに飲むべきか。この日は星4つの山岳ステージ。前日の第16ステージが星5つの山岳ステージで、このジロのクライマックスと言える強烈な山岳2連戦の後半戦。総合争い待ったなしである。

  • 総合で個人的に応援しているのはサイモン・イェーツ(イギリス / チーム・バイクエクスチェンジ)で、得意の山岳で綺羅星のごとく輝いて、ついでに悲願のマリア・ローザも持ち帰ってほしいのだが、そう簡単にはいかないだろう。チーム力と実績を考えるならリチャル・カラパス(エクアドル / イネオス・グレナディアーズ)が最有力候補。ただ今季の成績を見る限り彼らもそこまで盤石ではなく、若きエースジョアン・アルメイダ(ポルトガル)率いるUAEチームエミレーツやサイモンが入り込む余地は多いにある。全体的に僅差の混戦が予想されそうで、大いに盛り上がるだろう。

自分のサイモン愛についてはこちらのnoteを参照されたし。
長年ジロに片思いを続けてきた彼だが、来年以降はツールに軸足を移すとのことで、結果はどうあれ良い走りをしてほしい。ここ数年は「勝ち負けではなく、最高のコンディションで走ることができればそれが自分にとっての成功」と悟りを開いたコメントをしていて愛おし過ぎる。大人になりました。頑張ってね。

こうして見ると購入した3種類4本のノンアルコールワインたちを飲むのはジロ第2週目以降。前半を走るイタリア南部、いかにもノンアルコール民少なそうだもんなあ…という感想である。