『誰も教えてくれない編集力の鍛え方 ~AI時代を戦う編集者・ライターの生存戦略~』を読んだ感想レビュー
大手メディア編集長であるまむしさん( @mams428 )から、2023年12月1日に出版された著書『誰も教えてくれない編集力の鍛え方 ~AI時代を戦う編集者・ライターの生存戦略~』をご恵投いただきました。
本書は「大手メディア編集長がこっそり教える編集力の鍛え方」というコンセプトで、企画編、取材編、執筆編、制作管理編、編集編、キャリア編の6章から構成されている本です。
私自身はライターであって編集者ではないのですが、日常的に企画を立て、取材に行き、執筆をしています。ライターとしてスキルアップしたい、編集者さんの気持ちをより理解したい、この先も書くことで食べていきたいという気持ちで、読ませていただきました。
以下、章ごとに読んだ感想を書いていきます。
企画編
私はライターだけど自分から企画出しをすることもあるので、頷きまくりの章でした。オンオフ問わず「これはネタになるかも」と考えていると、一滴(誰かのつぶやきとか)でコップが溢れることがあります。
トラベルメディアでホテル取材をしてホテル広報さんとつながって、のちに「地方創生」や「SDGs」文脈でのインタビューをしたり、プレストリップで観光局の人とつながって、のちに「組織」「働き方」文脈でのインタビューをしたり……。あの人ってこういうこと興味あるかも!からつながっていくことは想像以上に多いです。
自分バイアスがかかっていることがある、という一文は肝に銘じたいと思いました。 そこを踏まえた上で(媒体にもよるけれど)自分のバックグラウンドや強みを生かした企画出しができるライターは生き残っていけるのかも。
そのメディアの理解度が浅いと、必要性から逆算した企画出しは難しいので、メディア理解を深めていくことも大切だなあと改めて感じました。そう考えると、単発よりも、1メディアに長くかかわれるのがありがたい)
取材編
インタビューライターしている人/したい人は「取材編」だけでも読んだほうがいいです。自己流で取材力を身につけてきた人(私もそう)は、欠けている部分が浮き彫りになると思います。
自己流で取材経験を積んでいってもスキルアップはできるでしょう。 でも、編集者の同行がない取材だとなかなか自分に欠けている部分に気づけない(したほうがいいという発想に至らない)ので、本書の内容は非常に参考になりました。 あれと、それは、次回の取材から実践してみたい!
執筆編
私はライターであって編集者ではないので、ここはキモとなる章でした。
多くの人にとって文章を読むのは面倒くさいこと。暗い森の中に分け入っていっても、疲れるだけで、求めているものは森の奥にはないかもしれません。それでも、読み手の手を取って、森の奥に誘っていける文章を私は書きたいと思うのです。
本書の「執筆編」では、具体化から抽象まで網羅しながら「書く」力をつける方法が紹介されています。 地味な作業を繰り返して、書く“筋力”を鍛えないと文章力が身につかないのは間違いありません。でも、まむしさんの言うように、思慮深さや徳、相手に対する好意といった、ノウハウから離れた部分も育てていくことも不可欠。
人に寄り添い、ときには意識変容を図ったり、行動の後押しをしたりする、血の通った、体温のある“人間の文章”を目指したいと改めて思いました。
制作管理編
私の場合、制作管理は“していただく”側であることがほとんどなので、どう管理するか?というのは直接的な課題ではありません。しかし、制作管理編を読んで、管理する側がどういうことを考えているのかを知れたのはとても参考になりました。
「なるほど、管理する側はこういうことを考えているんだな」「じゃあ、ライターである私がこういうスケジュール感でこういうアクションを起こすと、相手を安心させられる/喜んでもらえるのか」といった感じです。
(取材の後、執筆に着手する初動をいかに早くするかが大事であることを改めて感じました。クオリティを担保した上で早く納品できると、こちらとしても肩の荷が下りるし、先方にも喜んでもらえるので、お得だなーと)
編集編
タイトル通り、編集ドンズバな内容なので、ライターというより編集者にささりまくる章だと思います。「総合格闘技化する媒体運営」は首がもげるほど頷きたい人も多いのでは……。
とはいえ、編集編もライターに無関係ではありません。二人三脚でいっしょにいいコンテンツをつくっていく編集者がどんなことを考えているかを知れるので、読んでおいて損はありません。
私は「人を使う」という(能動態の)表現が好きではありませんが、信頼している編集部・編集者に対しては、「私をうまく使ってほしい」と思っています。私を「消費」することなく、私の成果物の価値を最大化してくれる相手には、「ずっとついていきます!!!」の気持ちです、ほんと。
キャリア編
私自身は編プロや出版社を経て独立したわけではないので、「思い描いていたキャリアを歩んでいるかどうか」は答えにくいのですが、ライターという仕事が好きだし、これからも書き続けていくつもりです。
本賞で書かれている「ライター・編集者を取り巻く環境の大きな変化」は、私が言うまでもなく、多くの人が肌で感じているところでしょう。
境界線があいまいになり、オンとオフがグラデーションになってきている時代、まむしさんも書いているように「カギは、日常的なチャンスと『ゆるいつながり』」だと私もつくづく感じています。ゆるいつながりから、おもしろい仕事も、チャレンジグな仕事も生まれますから……。
これからどんなふうに仕事をしていきたいのか、自分が生き残っていくには何をすべきか、時間のある年末年始に、本書を読んで改めて考えてみてはいかがでしょうか。
ライター、記者、編集者といった「編集業」の方はもちろん、広報やマーケッターなど、メディアに携わるすべての人におすすめしたい一冊です。
まむしさん、あらためて、この本を読ませていただいてありがとうございました。“誰も教えてくれない”ことを教えてもらえた幸運に感謝します。
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