【毎日習慣】お気入りのワンピース
ワクチン接種くらいでしか外出していなかったのに、今年の目標は「毎月映画を観ること」になった。
ハンガーラックにかかった出番のないワンピースに袖を通す。増えた体重ぶん窮屈になっていたが、ファスナーはしっかり上がった。変わってしまった体型と、それでも気分を上げてくれるワンピース。なんだか、それにひどく安心した。
たぶん、きっかけはなんでもいいんだと思う。
引きこもりの小中高生が24万人いる令和時代に、子どもたちが外を怖がらない理由。
「こころは、ぜんぶ見せなくていいよ。お気に入りのワンピースがきみを守ってくれるからね」
子どものとき、セーラームーンを観ていた。セーラームーンの戦闘服は、セーラー服でウルトラマンみたいに巨大化はしないけれど、プリンセスになる。ディオールのオートクチュールのドレスを着て、中学生のうさぎちゃんには大学生のまもちゃんという恋人がいた。女の子の好きなものがギュッと詰まった作品だった。セーラームーンの「変身」は「メイクアップ」だった。ひみつのアッコちゃんだってそうだ。コンパクトを開くと、なりたいものになれる。
昔の少女漫画ではよくお母さんが豊かな髪を持った子どもの髪を梳かしながら、子どもの話に耳を傾けるシーンがあった。お母さんの使う「子どもは触っちゃだめ」と言われる鏡台の椅子に座って、「それでね、お母さん。ねぇ、聞いてるの?」
パジャマじゃなくてネグリジェだった。布団をかけてもらって、電気を消してもらう。ベッドの上にはクリスマスにもらったぬいぐるみが並べられている。ぬいぐるみのおなかの中にはポプリがはいっていて、ほのかにラベンダーの香りが漂う。
時代錯誤なのかもしれないが、豊かな幸せが集約されていたんじゃないだろうか。
胸の下にまで伸びた黒髪を梳かす。さいしょはブラシ、それから櫛。仕上げにお気に入りのハンドクリームをちょっとつける。髪が揺れるたびに、華やぐ香りに包まれる。自分だけの幸せ。
自分のパーツのひとつでも好きになると、どんどんと欲張っちゃうのは女の子の性なのかもしれない。今日は、何に着替えよう。
子ども用の雑誌を買ってきて、「欲しい服ないの?」なんて尋ねながらいっしょにショッピングして、「学校に着ていってもいい?」に、「いいよ」と答える。
そんなことでも、不登校って減らせるんじゃないかなって、わたしは思うんだ。
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