最近読んだミステリー 感想(向かないシリーズ)
前に読んだ「自由研究には向かない殺人」の続編である「優等生は探偵に向かない」「卒業生には向かない真実」(ホーリー・ジャクソン著)読了しました。
この3部作、何か呼び方あるのかな。3つとも邦題に”向かない”がついているので、それでまとめてみましたが。
「わー!こんなに分厚い!1冊あたり一週間くらいかけてた楽しめるな。やった!」と思ってたのに、前回同様2、3日くらいで読んでしまった。続きが気になりすぎて。圧倒的な読書体験でした。
私、ミステリーは好きだけど、謎解き要素について批評とか考察はできなくて、ただひたすら登場人物に感情移入した感想しか書けないです。すみません…以下、がっつりネタバレありの感想です。
「優等生は探偵に向かない」
スタンリー…(涙)
わたしゃ、てっきりハリポタのリータ・スキーター的な嫌な記者なのだとばかり思ってて…ごめんよ。
彼の真実と内心を知ったら、好きなキャラクターになってしまった。
自分の正義に酔って愚かな間違いもする。でも間違いだったとわかったら、真摯に謝罪ができる人。すごい善人というわけではないけど、悪い奴じゃない。どこにでもいる、ありふれた人物。でもそのありふれた人生が、彼にとってはものすごく大事なものだったんだろう。
ピップをかばって「離れていろ」と叫ぶ彼は、かっこよくてまちがなくヒーローだった。助かってほしかった…
ピップとラヴィの相変わらずなバディ感がたまらなかったです。事件調査のスタートが前回よりも重いものになってしまったけど(ピップが経験したことを考えれば、当然)この二人のやりとりとイチャコラに始終心が和んだわ。
バレンタインのディナーでラヴィがどんなふうに告ったのか気になる〜Huuu~!
「卒業生には向かない真実」
いや、もう。
読み終わってからしばらく言葉がでなかった。これは…
問題作というか…賛否両論あるだろうな絶対、と思う。
私自身、この作品を自分の中でどういう位置に置いたらいいのかうまく折り合いをつけられずにいます。
今までひたむきに真実を突き止めることが彼女の行動指針であったのに、今作はその真実を完璧に隠し通し、偽りで塗り固めることに心血を注いだわけですから。
いわば、「真実はいつも一つ!」といつも言っているコナン君が、完全犯罪を犯すようなもんですよ。おいおいおいおい!まてまてまて!!ってなるよ。それはそう。
倫理的に、社会的に見れば、ピップのやった行いは完全にアウト。
でも、じゃあ私自身にその是非をジャッジできるのかと言うと…
ぶっちゃけ、ジェイソン・ベルを殺したことは衝撃ではあったものの、私は否定的な気持ちにはならなかったな。ピップは否定してたけど、あれは正当防衛だったと思う。命の危機に瀕していた人間の生存本能というか。
ただ、その後の行いは…おおっとそう来るかーーーー!?とはなった。
マックスは確かにクソ最低なレイプ魔野郎だが、強姦の罪で裁かれるのと、殺人の罪で裁かれるのはだいぶ違うと思うのだが!?
でもこの時点でもう、ピップは司法というものに全く信を置いてないんだよね。
Twitterで見かけた感想に「大人と社会への痛烈なしっぺ返し」という一言があったけど、まさしくその通りだなと思った。
ピップは司法や警察といった、大人たちの社会を全く信頼していない。
そもそも、1作目ですでに信頼していた身近な大人(親友の父であり、教師)に裏切られている。警察は懇願しても動いてくれない、司法はマックスの件でいわずもがな。両親のことは愛しているけれども、頼るべき存在ではなく守るべき対象になってしまっている。
社会を信じられない、ってさ、目や口を覆われて手足を縛られているのと同じような気がする。助けを求める声をあげることもできない。だとしたら、ピップはダクトテープの拘束から自力で抜け出したように、自分で何とかするしかない。
たぶんアンディーも同じだったんじゃないかな。一番身近な大人、父親は信頼できないどころか脅威でしなく、おそらく母親は支配的な父親の言いなり。警察も父とグルだと考えていたら、誰かに助けてと言うことなんてできなかっただろう。だから違法なこと、薄暗い方法に手を染めてでも自力で自分と妹を救おうとしていた。アンディーとピップは確かに似ている。
彼女たちの行動の是非を考えたとき、それは間違いだった、と責めることができるだろうか。たぶん、私にはできない。
今作のピップの行動を、私は否定はできない。
それでも、辛かった。
何が辛いってさ、ストーカー被害にあっていた時から最後までずっと、ピップに大人の味方が一人もいないってことだよ。
ラヴィはいつだって心の支えだったし、仔細を問わずにピップをただ信じて行動し助けてくれた友人たちも素晴らしかった。
でも、それでも、ピップと一緒になって戦ってくれる大人が一人でいいからいてほしかった。
せめてスタンリーが生きていてくれたらな…って思っちゃった。
小さなタウン誌の記者にできることなんてそんなにないかもしれないけど、父親がシリアルキラーだったという過去の傷を抱える彼なら、DTキラーの真実を暴くのに協力を惜しまないだろうと思うから。
あとさ、どうしても親目線で読んじゃうから…
ピップの両親はこの先もずっと、娘の身に起きた出来事を何も知らずに生きていくんだろうか。
もし、いつか真実を知る時が来たら。私だったら絶望すると思う、自分自身に。
「明日はレゴランド行こうね〜」なんて呑気に日常を送っていた時に、自分の娘がトランクに押し込まれて誘拐され、テープでぐるぐる巻きにされて殺されそうになっていたと知ったら。
その後に彼女がとった行動も、決断も何一つ知らず、それを止めることも助けることもできなかったこと。何も知らずに、娘の異変にも気づかずに日常を送っていたことに。娘に真実を打ち明けてもらうだけの信頼を得ていなかった自分自身に、絶望すると思う。
ピップの両親が悪いわけじゃない。でも、自分自身に置き換えて考えると胸が潰れるような思いがする。
ピップはこれからどうなるんだろうね。
マックス有罪の判決が出たからって、これで全てオッケー!ハッピーエンド!!とはいかないよね。彼女は一生この重荷を下ろすことなく抱えて生きていくのでしょうね。
いつかピップが大人になり社会に出たとき、かつての自分のように大人を信頼できずに一人で奮闘している子供がいたら、よりそって一緒に戦ってくれる大人になってほしいと思う。
私自身も、そういう大人でありたい。
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