十二国記新刊「白銀の墟 玄の月」感想
ふせったーでもよかったんだけど、長くなりそうだったのでnote使ってみた。
使い方あってるかなコレ。
感想というか心の叫び声。
順序の何もごっちゃごちゃです。あと語彙力もないです。
そしてもちろんネタバレですので、未読の方は回れ右で!
*まず、李斎
あのね、もう。好きーーーーー!!!!!
いや以前から好きなキャラクターの一人ではあったものの、でも本当今回読んでさらに大好きになりました。
強くて、優しくて、でも人として脆いところもあって。
驍宗さまへの忠誠心の深さも、民を思いやる思慮深さも。ほんともう全部大好き。
彼女の人となりがあったからこそ、あんなにたくさんの人が集まったのでしょう。土匪たちの間でいつのまにか人気者になってるし笑。
李斎と朽桟との関係も、いいよね。ピンチの時に駆けつけてきた李斎に向かって「馬鹿か、あいつは!」って怒鳴りながら感動しちゃう朽桟、好き。
この朽桟ら土匪救援を説得した時の李斎も好きなんだよ。霜元が説得に応じてくれた途端、霜元!て嬉しそうに声を上げる李斎、可愛くない??可愛すぎじゃない???「私が安福に行く!霜元は後背を頼む」って弾むよう立ち上がる李斎、
か わ い い が す ぎ る !!!
3巻表紙の李斎、本当かっこいいよね…目力が強すぎて、いっそ彼女が阿選を打ち取ってしまうのでは…?とまで思った。
でも、そんな強い彼女が飛燕を失った時の姿が……普段の彼女からは考えられないほど弱々しくて、まるで小さな女の子のようで、痛々しくて。私が霜元だったらその場で全力で抱きしめる(セクハラだからヤメロ)
飛燕……うう、辛い。だめだ、今思い出しても泣けてくる。
すみません、最近私も愛犬を亡くしたばかりだったので、余計に……
きっと泰麒も、あとで知ったとき悲しんだだろうな…
静之と李斎のコンビも好きで。
「潮時かな」「でしょう」から始まる打ち合わせなしのスパイ映画のようなアクションシーン。なにこの最強バディ感。二人ともカッコ良すぎじゃない????
「正直、もう辟易している」「だから早々に片付けた方がいいと申し上げたでしょう」「いつまで下衆な覗き見を許すおつもりです」この会話の流れが最高にカッコよくて笑っちゃう。アクション映画のお騒がせ殺し屋カップルみたいな?刑事やエージェントのバディものでもいける!
静之は今は姿が見えないだけで、生きているって信じてるよ…夕麗も…
生きてる、絶対生きてるって…うわああああん!!!
あと、夕麗との最後の会話のところ。夕麗が「私は女です」と言い出したところから泣き出してしまう私。そうか、そうだよね…
正直、里木システムのおかけでわりとジェンダーロールが取っ払われている世界だし、数が少ないとはいえ女性の兵士や将軍がいることはまあ普通のことなのかな、と思ってきたんだよね。でも、そんなことないよね。陽子ですら、女王運が悪かったというそれだけの理由で、侮られている。まして、男社会で、力が物を言う軍の世界で、彼女たちが苦労してないわけないんだ。
李斎も、「女だてらに将軍であること」について特に今まで触れられてなかったけど、当然、並並ならぬ努力と苦労がきっとあったわけだよね。それこそ、男性の前では涙を流せないほどに。思えば、李斎が泣いたシーンは、泰麒が蓬莱から帰ってきて目を覚ましたときと、この夕麗との会話のシーンだけではないだろうか。(いや、ちゃんと確認してないからわからないけど)
承州師の将軍になったのもすごい出世だけど、そこからさらに王師将軍にまで登りつめた李斎は、全女性兵士の憧れ、希望の星だったのでしょう。
「私は李斎様について行きたいです」
私も私も私もー!!!!!(諸手を上げて馳せ参じます!)
*そして、泰麒。
あのね、ほんと、もう、この子は………!!!!
1、2巻で泰麒の心情描写がなかったから、彼の心がわかりにくかったけれども、3、4巻でやっとその気持ちが描かれるようになって、ただひたすら胸がかきむしられるような思いばかりしてしました。特に、3巻の正頼を助けようとするところ。ここ一番勇気を出さなければいけない局面で、彼が唱えた名前が…
驍宗さま、じゃなくて。まさかの、「先生」なんですよ………!!!!!
うわああああああああん!!!!(号泣)
広瀬先生、聞いてました!?今、高里くんがあなたの名前を呼んだんですよ!?
うわああああああああああああん!!!(大号泣)
泰麒はあの蓬莱での出来事を一生忘れることはないだろうけど、あちらに戻った今は心の底に蓋をしてただひたすらに戴のことを考えているのだろうと思ってたんです。だから新刊で蓬莱のことや広瀬先生のことを思い出すような描写はないんじゃないかな、と諦めていたのですが。それが、まさかの「先生…」ですよ!!
あの凄惨な日々の中、ここにいてもいいのだと存在を許してくれた、居場所を作ってくれた、命がけで守ってくれた広瀬先生は、彼にとって確かに救いであり、心の支えだったのだろうな、と改めて感じられて、なんかもう涙で文字が読めない…
そう考えると、広瀬先生の存在って重要だったんだな、と今更ながら思う。自殺しようとした高里を止めた、というのもあるけど、それ以前にそもそも先生が実習に来てなかったら、高里君と出会っていなかったら、高里くんは生きていられたと思えない。傲濫が血に酔って暴走していた粛清の渦中で、膨大な怨嗟と穢瘁にのまれて病み死んだと思う。先生という心の支えが、ただ一人の理解者があったからこそ、高里くん/泰麒はかろうじて生きていられたのではないかと。そして泰麒が生存していたからこそ、驍宗様も生きていられた。つまり広瀬先生はいわば戴を救った恩人ですよ!楽俊ポジションなんだよ!
広瀬先生、高里くんは今、こんなにこんなに頑張ってるよ…!!先生も頑張って……ロライマ山の仙人になって!(?)
阿選への誓約の場面もね…
今さらだけど、1、2巻を読んだとき、もしかして角を失った泰麒は驍宗さま以外にも叩頭できるのでは…?と考えたことがあったのです。魔性の子でクラスメイトたちに土下座できなかったのは、物理的にできなかった、のではなく、自分は主以外に額ずいてはいけないということを思い出してとっさに「できない」と言っただけなのでは、と。でも、例え物理的にできたとしても、それが演技だったとしても、泰麒が驍宗さま以外の人に叩頭するなんて嫌だー!と思い、この説は無かったことにしたのですが。
それがまさかの。物理的にできないのに、血涙流しながら気合いと根性でやりおったこの子…!!恐ろしい子…!
物理的にできないはずの距離を超えさせたのが、蓬莱でのあの犠牲者たちの姿だったというのが、もう、言葉にならない…。クラスメイトのことも、岩木君のことも、両親のことも、粛清で犠牲になった全ての人のことを、彼は忘れたりなんかしない。全ての犠牲者の影を背負っているからこそ、彼はここまで強い意志を身につけた、というこの皮肉。ほんとうに、この子は……
最後の驍宗様救出シーンは、本当にもう、泰麒よくがんばったね…!(号泣)
いろんな人に「大きくなられて」と言われていたけど、驍宗様の「大きくなったな」が一番に胸にぐっときたわあああ。本当に、本当にこの二人が再会できてよかった、本当によかった…
汕子と傲濫が最後まで登場しなかったけど(この二人が活躍するところも見てみたかったけど)、天の加護でもなく、麒麟の妖としての力や奇蹟でもなく、泰麒自身の意志の力が驍宗様を、そして戴を救う一端になった、というのがこの物語の根幹に繋がっているような気がする。
*じせん
くるっぽーくるっぽー
妖魔だったんか…怖い……魂魄抜かれきったら、もはや廃人とか。ディメンターのキスじゃん。怖……
*張運、士遜、案作
こいつらが出てくると、もはやコント。ただのコント。(しかも観客の泰麒は全く笑わない)
阿選を交えての最後のショートコント『聞いた』は大爆笑しました。
*琅燦
彼女は結局、何がしたかったのか…玄管(=耶利の主)が琅燦ではないか、とはなんとなく思っていたけど、でも阿選に妖魔を用意していたのも琅燦というのがなんで…??ってなっている。やっぱり、天を試してみたかった、のか…?この辺りもうちょっと読み込んでいかないとわからないかも。
*阿選
あせんんんんんん…
3、4巻を読んで私が阿選に対して感じた印象は、思っていたよりも「普通の人」だった、です。いや、驍宗さまと比べて傑物じゃない、とかそういう意味じゃなく。
大逆を行い、徹底した誅伐を行い、そして王宮に引きこもる彼には、余人には計り知れないような深い深い闇があるのではないかと思っていたのです。でも、実際には彼の心情は決して理解できないものなんかではなく、ごく普通に生きている私たちでも陥るかもしれない感情だな、と感じました。驍宗に嫉妬していた訳ではない、と彼は言っていた。彼はただ、周りから驍宗と比べられることに、そのプレッシャーに耐えられなくなってしまったんだよね。ちょっと、塙王の失道の原因にも似てるかな。塙王も雁や奏に嫉妬していたわけじゃなく、二つの大国と自国が比べられることに耐えられなくなって慶を引き摺り下ろそうとしたんだよね。
むしろ烏衡の方がまったく理解不能な悪人だった。あれはもはやただのサイコパス。
プレッシャーに耐えかねて周到に準備して大逆を実行したものの、当初の描いていた予定が色々と狂ってしまって、なーんかもーやーになっちゃったー、って諸々放棄して引きこもっていたのだろうか。そう考えると人間味のある悪役だなと思えて好きになってきた。
あとさ、この人ちょっと天然ちゃんじゃない?午月に気づいたときの
「あ、午月か。久しぶりー。元気ー?」くらいの感じのノリ。部署異動した部下に久しぶりに会った上司くらいのノリ。
元気ー?じゃ、ねえよ!午月が今までどんだけ複雑な思いでいたと思ってんの!と激しくツッコミ入れたくなってしまった。
正寝に忍び込んだ泰麒が、一人きりで歌を歌っている阿選を見て孤独で頼りなげに見えた、というのがなんとも切ない。阿選の最大の失敗は、麾下たちを自分から遠ざけてしまったことじゃないかな。決して麾下を信頼してなかったわけじゃない。むしろ大切に思っていたからこそ、汚れ仕事はさせたくなかったし、傀儡にもしたくなかった。愚かな道へ踏み込んでいる自覚があったからこそ、そんな自分を麾下には見せたくなかったんだろうな…。
そしてずっと守っていたはずの最後の一線を超えてしまった時ーー大切にしていた麾下の一人、帰泉を傀儡にしてしまった時に、本当に意味で阿選は一人きりになってしまったのだと思うのです。
辛い…
もう彼が救われる道は、苦しみから解放される道は、討たれる事しかないと思うと、辛い…。
*驍宗さま
函養山に閉じ込められていた7年間、折れた足を自力でくっつけて、食事はせいぜい月に1回かそれ以下で、一人きりで生きることを諦めなかったその胆力はもうさすがとしか言いようがない。自分へのお供え物を「誰に手向けられたものなんだろう??」と思いながら食べてるのが、なんか可愛い。
ラゴウを下してお外に出てから、おお!ここから驍宗様無双くるか!!!と思いきや、まさかのまたしても囚われのお姫様に…!
十二国記における囚われのお姫様ポジションは、たいてい麒麟の役回りだったからさ(景麒や六太)。そうか戴では驍宗さまが姫なんだな…
始終囚われの姫君だった驍宗さまですが、彼の活躍はここから、なんでしょう。最終決戦。阿選を討つこと。
*この物語のこと
あえて最後の決戦まで描かなかったのは、この白銀の墟 玄の月という作品が、王の物語ではなく、民の物語だからなのだと思います。王の威光でもなく、麒麟の力でもなく、天の奇蹟でもなく、民の力がーー身を隠しながら丹薬を作り続ける道士、それを人々に届ける神農、かつての恩に報いるため山に入る白幟や供え物を続ける家族…数え切れない一つ一つの小さな力が寄り合わさってこの国を動かした、そういう物語なのだ私は思っています。
物語の冒頭が園糸と栗の親子で始まり、そして最後も彼女たちの描写で終わった、というのが民の物語である象徴なのかな、と。
栗ちゃん、おしゃべりできるようになって良かったね…言葉の遅かった子がやっと「お母さん」って呼んでくれると、嬉しいよね…うん、うん…(涙)
項梁の「俺だって生きて帰るさ」2回目のこれは死亡フラグじゃなくて生き残るフラグだって信じてるからな!絶対、生きて園糸さんところに戻れよ!!
*例のお二人のご登場
まさか出てくるとは思っていなかったので、うおええええええええええまじでええええええええ!!!とめっちゃテンション上がりました!安定の延主従!!!大好き!!!!!「お前の消息はわからないという。来ないわけにいかないだろう」って本当この人、心根がイケメンすぎる!かっこいいんだよコンチクショウ!
延王が言った「おまえは良い臣下を持っている」の言葉で、でしょうでしょう!!と私が誇らしくなってしまいました。李斎が褒められると私も嬉しい!
*読み終えた時の私の中の陽子さんと尚隆の会話。
陽「いつもいつも、延王ばっかり最後においしいとこどりしてずるいですー!」
尚「はっはっは!悔しかったら500年くらいの盤石な治世築いてみやがれ!」
陽子だって国力が安定してたら戴のために援軍出したかったと思うんだよね…!
でも延王が「諸国が支援する」って言ってたから、雁だけでなく慶からも何か支援あるかもね。そう考えると胸熱…!!
*最後に
鄷都や朽桟、飛燕など、たくさんの喪失がまだ生々しくて、苦しくて、正直すぐに再読できるほど精神が回復してはいないのですが、でも長い間待ってよかった…!と思える超大作でした。小野主上、本当にありがとうございます(平伏)前以上に十二国記熱が再熱しております。まだまだ書き足りてないところはあるので(他の麾下のみんなとか…)またおいおい吐き出していくかも。とりあえず今は他の方の感想をあさりに行くぞー!!