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地味で、渋すぎるアニメ
スキとも嫌いとも言えない、しかし、気になっているアニメ。
ヴィンランド・サガ。
父親を殺された息子のトルフィンが、復讐心を抱えて、父を殺した海賊の親分、アシュラッドについて行く。それがシーズン1。
私が面白いと思ったのは、その一番憎むべき敵役のアシュラッドの魅力であった。敵役でありながらアシュラッドはトルフィンを導くメンターでもある。その時々で、人間に必要な何かを教えてくれる。
しかしトルフィンは復讐心に燃え盛っているのでそんなアシュラッドに耳を傾けているかはわからない。
いつも熱くなって何かを見失っている。
そんな少年時代を過ごすトルフィン。
物語を俯瞰している鑑賞者だけが、アシュラッドという男の技量、人間を捉えていく。正直、私は、この物語でアシュラッドが一番好きかもしれない。トルフィンはただの少年で若造だからだ。
バイキングという人々の野蛮さ、殺戮の歴史。
イングランドを治める王は誰なのか。
メインであるはずのトルフィンの復讐の物語よりも、むしろ、そっちの血なまぐさいやりとりのほうが、面白い。
その辺に生まれてなくて良かったとつくづく思う。
バイキングの力で力をねじ伏せていく戦いの権力の歴史を漫画というわかりやすさで理解していく。トルフィンはアシュラッドについていくが仲間という訳ではなく初めはつかず離れずつきまとっている。
しだいに、トルフィンはナイフ使いの技量を持ち、アシュラッドに珍重されるようになる。
しかし、トルフィンは復讐のカタマリに見え、まだ自分と言う個性を発揮していはいない。
シーズン1はトルフィンが父親を殺されて、父を殺したアシュラッドについていき、アシュラッドの人生がひも解かれるまでの物語。
それにしても地味な物語だなと思う。
青少年が見ているのかはまるでわからない。
推しの子や呪術廻戦とは全く違う立ち位置の物語である。
終わったと思っていたらいつのまにかシーズン2が始まっていた。
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打って変わって、バイキングの日常から、農場で働く奴隷の日常に物語は舞台を移している。宿敵のアシュラッドを失ったトルフィンは奴隷に身をやつしてこの農場に働いているのだ。ここでは、農場と言う世界、農場主と小作人、用心棒、奴隷の関係が描かれる。
奴隷であるから、人権はない。
しかし、この農場主は良心的な人の様で、奴隷は努力して農地を開拓すれば、自分で賃金を稼いで奴隷から自らを開放するという道もある。
トルフィンはあの憎悪をむき出しにした殺気だった少年から、記憶喪失にでもなったのかと思われるようなボーっとした青年に姿を変えており、あんなにナイフ使いの名手であったにもかかわらず、誰とも戦わず、自分の強さを秘めて、身を潜めている。
この戦争で捕虜になり売られた人間の人権の無さ、悲しさ、辛さがたっぷりと描かれる。
私とダンナはトルフィンが強いことを知っているので、いつ彼が活躍するか、今か今かと待ちながらアニメを見ていた。
ほんとうに待ち遠しい。
しかしこの物語の目的は別なところにあり、最終回からの3話ぐらいで、また別な決着が着く、という面白さであった。
それにしても、地味で、渋い。
このアニメを楽しみにしている高校生がいるとはとても思えないが、面白いともスキとも思わないのにここまで見てしまった我々も、ある意味、ヴィンランド・サガにやられている。
ネタバレしないようにそっと検索してみたら、シーズン3ではトルフィンが商人になっている!?という設定らしい。
どこがどうなってそうなるのか、予想も何もつかないが、きっと我々は最後までこの地味で重厚な物語を追うのだろうな。