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短歌もらいました⑮✧♡

 今日も短歌タイムカプセルから短歌もらいます💖

とびきりの恋愛詩集一冊で世界史の学習は終わった
数式を誰より典雅に解く君が菫の花びらかぞへられない

笹原玉子

 自分でもどうも高校ものに弱い気がする。
 高校って、大概誰でも行く。漫画が高校舞台が多いのと同じで、国民のほとんどが高校に行くなら、共感のターゲットになりやすい。
 歌人はそういう計算をしているのではなく、詠みたい時が高校時代っていうことだろう。
 すいません。私も世界史の授業中はさぼりがちだった。授業中にトランプやったこともあった( ´艸`)教科書にも書いてある暗記物をどう勉強するか、興味が湧かなかった。
 その数学すいすい解ける奴が、その分野はまるでダメって、ギャップ萌えもある。


透明を憎んで木々はこれほどにふかいみどりに繁る 見よ 見よ

佐藤弓生

 木が好きで選ぶ。



母と二人むかう厨におおかたは見抜かれていん愛のことなど

佐藤よしみ

 これは共感度高い歌じゃないかな、女子あるある( ´艸`)
 自分自身はそんな体験はないが、もし、母と、働いている時、一緒に住んでいたら何もかもお見通しだったかな、と想像する。
 母親のそういう娘と一心同体的な女の直観って、ある気がする。



この夜がこの世の中にあることをわたしに知らせるケトルが鳴るよ

佐藤りえ

 歌人は何か思い事をして現実にいない。
 お湯を沸かして珈琲を飲む、お茶を飲むときに沸かすケトルだけが彼女を現実に引き戻す。



体内にしたたる翠(みどり)暴れる日抱きとめられねば胸から跳ねる

陣崎草子

 木とか緑が好きだから選ぶ。
 体内に滴るのは大概赤い血であるが、歌人のカラダに滴るのは翠(みどり)。血汐と別なものが暴れている。
 その翠を知るものに抱きとめられねば、胸から跳ねるように。
 歌は激しいが、色は落ち着いた翠。それは一体なんだろうと言う疑問を読者になげかける。本能を赤とするなら翠は魂か?



かなしみよりもっとも無縁のところにてりんごの芯が蜜を貯めている
それならば俺はどうなのだ詩人とは少年のまま老いていく人

杉崎恒夫

 青森県人だけにリンゴに目が止まり、それを「かなしみよりもっとも無縁のところ」と言ったところが素敵である。
 植物の、時期が来れば、花を咲かせたり、蜜を貯めたりするところは、人間が見習いたいところなので、それができない動物の哀しみを想う。

 男は自分を少年の心を失わないんだと言いたいかもしれない。
 でも、女はそんな女々しいことは言わない。全てを呑み込んで愛して先に進む。いつだって今の自分が一番進化していて素敵だ。ホントは三歳までは神だから、そのあたりが一番素敵かもしれないが・・・。


 

きりきりと磨きゆくなりTOTOの魔神が立つまで磨きゆくなり

仙波龍英

 トイレ掃除?



休職を告げれば島田修三は「見ろ、見て詠え」低く励ます

染野太朗

島田修三は染野太朗の歌の師である。若き教員歌人は、誠実でひたむきであるがゆえに、生きづらさをかかえている。休職することを決め、報告すると、師は「見ろ、見て詠え」と言った。復職する見通しや、食べて行けるのかという心配や、「頑張れよ」というありきたりな言葉ではなく、ただ歌を詠めと言ったのだ。師は、この若い弟子が歌を詠むことで立ち直ると思っていたのだろう。また、この弟子が、心の揺れとともに周囲のすべてに光をあてることができると信じていたのだろう。師は歌の話しかしない。弟子も歌の教えとして受け取るだけだ。だが、この二人は、歌を通じて互いを深く認め合っている。島田修三の低く響く声を思う。

(C)

 歌人は教員だったのか。一首鑑賞をしたのは高校の国語教諭の千葉聡さん。教員は子供を相手にする仕事ゆえの難しさがあると知っている。
 私の新採用の中学校はマンモス校で、気性の荒い海側の生徒の学校である。校内暴力全盛の頃で、力のある体育教師がずいぶん集められていた学校であった。同じ学年に優し気な若い男の先生がいたのだが、彼がいきなり失踪した。いったいどんな苦しいことがあったのかわからないが、挨拶もなく彼は学校を去る。
 これは私が自分を推しはかる出来事になった。
 ちょっと辛いけど、誰にも何も告げずに失踪するほどではない、といつも自分を励ましていた。私はまだ大丈夫だと。



ポパイなやつポップコーンなやつなどがぞろぞろ歩くペプシな渋谷

高野公彦

 高野さんの短歌ももらったことがあると、歌人の名前を少しずつ憶えてきた私が嬉しい。ラーメンの海苔の矩形の歌だったか( ゚Д゚)?
 1941年生まれの高野さんが2008年の渋谷を詠んだら、パピプペポで言えそうな謎の若者があふれていたのだろう。
 パープリンという言葉も思い出した( ´艸`)これは、東大一直線!
 ポパイという雑誌もなく、ペプシもそれほど取沙汰されない現代ならそこに何が入るんだろうか?
 土曜の夜の渋谷とか、新宿とか行きたくない場所の一つだけど、うっかり行ったことがある( ´艸`)。
 二度と行きたくない。


手があれば胸をこうしてばってんに押さえて飛び立つだろう飛行機

高柳蕗子

 わからない( ´艸`)
 でも、なんだか少女が自分の胸を隠すようなポーズで、恥じらいながら飛行機が飛んでゆく気がした。



雨あとの雲のみだれをおしわたり月すざまじき円形となる

竹山 広

 凄い満月を想像する( ゚Д゚)





沖あひの浮のごとくに見えかくれしてゐるこころといふけだものは

辰巳泰子

 23歳の時の歌。最も、不安定な動物的状態の年頃だ。




桃色の炭酸水を頭からかぶって死んだような初恋

田丸まひる

 藤家秋さんの炭酸刺繍シリーズに入れて欲しいような一首。
 刺繡がないか。


 桃色の炭酸水という甘くて美味しいものを頭からかぶってしまったような事件、しかもそれは死んだような初恋と称される。
 甘くて不器用でイタイ青春。


恋は事件。すべてが手探りの初恋は、なおさら。中学校や高校では、いつも誰かが誰かを好きで、ほとんど思いが通じなくて、ときには悪い冗談のように思いが叶ってしまったりして、どちらにしても格好悪い姿をさらしてしまう。桃色は恋の色。泡がはじける炭酸水は、若い人の感じやすい心そのもの。初恋と言う大事件に遭遇し、じたばたしている様子を軽やかに詠む。胸に芽生えた初恋が、どんなふうに進展したとしても、恋に落ちた人の心は一度死ぬ。そして生まれ変わって、周囲のものがすべて輝いて見え、ようやく自分自身と向き合えるようになる。初恋の格好悪さをすべて引き受け、「恋するとみんな大変なんだよ」と励ましてくれるような一首である。

(C)

 恋に憧れるのは恋をしたことのない女よといったのはサガンだったか?
 恋って、楽しいケド、苦しいよね。


千葉氏今日も冴える!









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