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知恵

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この知恵はゲットしておきたい。もう一度見返したい。そんな記事を集めました。
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#古典がすき

アナログ派の愉しみ/本◎十返舎一九 著『東海道中膝栗毛』

江戸の戯作者と 文豪ドストエフスキーの共通項は 忘れもしない、大学で新谷敬三郎教授のロシア文学の講義に初めて出席したときのことだ。あのころ新谷教授といえば、ミハイル・バフチンのドストエフスキー論やロシア・フォルマリズムの論文集をいち早く翻訳・紹介して斯界の第一人者の地位にあり、きっとエキサイティングな所説に接することができるだろう、と固唾を呑む思いだった。すると、痩身長躯の教授は口をへの字にしてこんなふうに語りはじめたから、わたしは座席から転げ落ちそうになった。   「ド

アナログ派の楽しみ/スペシャル◎へそまがり世界史(創作大賞2024応募作)

へそまがり世界史   きれいはきたない、 きたないはきれい。  ――魔女の叫び(シェイクスピア著『マクベス』より) ジュリアン・ジェインズ著『神々の沈黙』われわれはふたたび 神々の声と出会ったのか 自分は一体、何者なのか? その答えに少しでも近づくためにわれわれは本を読むのだろうが、米国プリンストン大学の心理学教授、ジュリアン・ジェインズが著した『神々の沈黙』(1976~90年)もまた、目からウロコの落ちる示唆に富んだ一書であることは間違いない。  骨子は、はなはだシ

アナログ派の楽しみ/スペシャル◎へそまがり性愛学(創作大賞2024応募作)

へそまがり性愛学   あが身は、成り成りて成り合はざる処一処あり。  あが身は、成り成りて成り余れる処一処あり。   ――伊耶那美命と伊耶那岐命の対話(『古事記』より)   O・ヘンリー著『最後の一葉』そこには意外につぐ 意外の事態が   かつて国語の教科書で『最後の一葉』(1905年)に出会って、当たり前のように感動した覚えのある者にとって、作者のO・ヘンリー、本名ウィリアム・シドニー・ポーターが犯罪者として刑務所に服役した経歴の持ち主だとは、少なからず意外の念を催

白畑よし・志村ふくみ『心葉:平安の美を語る』(人文書院・平成9年)

みなさま、こんにちは。 本年もどうぞよろしくお願いいたします。 今日は白畑さんと志村さんの対談集を取り上げてみます。 私自身、志村さんの御著書はよく拝読するのですが、白畑さんは今回が初めてでした。お二人については下記をどうぞ…。 ●白畑よし(明治39年10月29日ー平成18年6月2日) 大和絵研究者であり、女性美術史家の草分け的存在。 詳細は東文研アーカイブズデータベースをご覧ください。 https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko

まつのことのはのたのしみ その十四

 いつもお読みいただき、ありがたうございます。玉川可奈子です。  初春の 初子のけふの たまばはき 手に取るからに ゆらく玉の緒  あらたしき年がはじまりました。  今年も読者の皆さまに吉き事の重なりますやうに、そしてわが国が真幸くありますやうに。そして、なによりも、私が私らしくゐられることを祈念しました。  年のはじめは、久し振りのまつのことのはシリーズです。  最初の方で、「和歌を暗記すること」について記しました。覚えてをられますか?  平泉澄先生の『勉強の秘伝