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世界迷作劇場『小公児』3

これはある子守りナースメイドの回想録である。

はい。
本日も宜しくお願い致します。
あの、刑事さん、っちゃまのご様子は、如何でございましょうか……?
警察病院に……ああ、それならようございましたわ。
安心いたしました。有り難う存じます。
そうですわね、もっと、もっと、早くにこうしていれば良かったのですわね……
ええ、では全てをお話いたします。

保健室登校だった坊っちゃまは、教室のクラスメイトの前で自慰を行い、悪い事に精通がきた為に精液を撒き散らして逮捕されました。
先生や警備員に取り押さえられましてもおちんちんを握ったまま自慰をやめず、精液を飛ばし続けて教室は阿鼻叫喚の地獄絵図だったそうです。
わたくしは、何せ、校舎の外で待機しておりましたし、パニックでどなたも報せにきてはくれませんでした。
事態を把握するのが遅れ、恥ずかしながらパトカーのサイレンの音で、漸く非常事態に気が付いたのでございます。
世の中には生徒さんが刃物を振り回したり、海外では銃乱射事件などというものがございますので、わたくしも何か、不貞の輩が狼藉を行っているのだと思いまして……
逃げてくる生徒さんたちの流れに逆らうように坊っちゃまの安全を確かめるべく教室に駆けつけましたところ、警備員と警官に取り押さえられた坊っちゃまがおられました。
おむつを下ろし、屹立したおちんちんを露出して、床に体を組み敷かれましてもそれをいじるのをやめません。
『放しなさい❗』
警官の叱責が飛びますが、坊っちゃまは自慰をやめず、この状況でも絶頂を迎えては、精液を飛び散らせておりました。
教室には、白、白、白…………
坊っちゃまの凶行の爪痕が白い粘液となって、あちこちに飛び散っておりました。
わたくしは事態を悟りました。
涙が溢れてまいります。
わたくしは看護学生だった昔を思い出しました。学校にもよりますが、大抵、看護学校の遠足というか社会科見学は医療にまつわる資料館に行くのですが、戦時中の資料館や、ハンセン氏病の資料館が多いでしょうか。
生命の尊厳、医療倫理を学ぶ為に実際にあった悲惨なものごとの記録を見学する訳でございますね。
わたくしは戦争の資料館で従軍看護婦の方々の記録を見学させて頂きました。
その中で、戦闘の恐怖や罪悪感で発狂してしまった兵士は、まるでそこに逃げるかのように、ところ構わず狂ったように自慰を行う、という記録がございました。
当時はまだ去勢法以前の戦時中でございますから、男の方がおられたんですね。はい、歴史の教科書にございますね、英雄下原ゲバラ少佐の革命でございます。それ以前は本当に悲惨な世の中でしたそうで。兵隊にとられるのはもっぱら男性で、彼らが性加害を行う事もございましたし、繊細な方や優しい方は狂ってしまうのがザラだったそうで……
陸軍病院の看護婦さんたちは、何を言っても答えない、虚ろな目をしながら自慰にふける心が壊れてしまった兵士たちを気の毒に感じて、見てみぬふりをしては、そっと股関に布団を掛けて隠したそうでございます。
わたくしは坊っちゃまの姿に、そんなお話を思い出しました。
坊っちゃまは壊れてしまわれた─────────
涙が止まりませんでした…………
『放せと言っているのっ❗』
『手をっ放せっ❗️』
二人の婦警さん(勿論、この世界の警官は婦警さんしかいらっしゃいません)が凶器ペニスから手を放させようと力ずくで引っ張りますが、あの細い体のどこにそんな力があるのか、坊っちゃまは手を放さないどころか、こすり続けていたのでございます。
『ふっ……ふっ……』
獣のような荒い息で、婦警さんたちを睨みつけ、振りほどこうと暴れます。
『うぁつ!?』
暴れた弾みに婦警さんの一人へと銃口が向けられ、丁度発砲された白い弾丸が彼女の顔を襲いました。
きゃーっ、と担任の先生の悲鳴が耳をつんざきます。
『このやろぉっ❗』
撃たれた婦警さんは、警棒を抜いて坊っちゃまの背中を叩きました。
二回、三回、それでも坊っちゃまは自慰をやめません。
警備員さんまで加わり、坊っちゃまを殴りますが、それでも…………
『離れてっ❗』
婦警さんがテーザーガンというものを向けました。ケーブルのついた針を撃ち込んで電撃を加えるスタンガンの一種だとか。
ぶしっ❗
じじじじじじじじじじ❗
『?????????』
低い嫌な音、相当に痛いと聞きますが、坊っちゃまはそれでも…………
世の中の不条理に絶望し、泣きながら怒り狂って、あろう事か、立ち上がり、婦警さんへと再び銃口を構えたのでございます。
これ以上は…………
『坊っちゃまっ❗️』
わたくしは飛び出して坊っちゃまにすがり付きました。
『危ない❗』
『離れなさい❗』
坊っちゃまが危ない事などございましょうか。
わたくしには何の恐れもございませんでした。
『坊っちゃま、もうよろしいんですのよ。もう大丈夫ですわ』
頭を撫でて、なだめると、次第に強張っていた体から力が抜けていきました。
『もう頑張らなくてよろしゅうございます。坊っちゃまは甘えていいんですのよ。ねえやがお分かりになりますでしょうか』
あやしていると、少しずつ、どろんとした瞳に光が戻ってまいりました。
『……ねえや』
『はい、ねえやでございますわ』
正気を取り戻すにつれ、その瞳は潤み、涙が溢れてまいりました。
そうして、漸く坊っちゃまは凶器ペニスから手を放して、手錠を掛けられたのでございます。
玉小路たまのこうじ家の跡取り……?』
先生方に事情を告げられ、戸惑う婦警さんたちの顔が今でも頭から離れません。
忌々しげに、いつか償わせてやるという、極悪人の跡継ぎを見る怒りの目でございました。

事件は大きく報道されてしまいました。
匿名ではございましたが、当事者たちから漏れ伝わり、玉小路の変態坊っちゃんの烙印を捺されたのでございます。
それでも、奥様方の政財界・法曹界への権力は大きく、坊っちゃまは実刑を免れ、それどころか更正施設や医療刑務所に送られる事もなく、事件から4日後には戻って来られたのでございます。
去勢もされないままに…………
権力により法を免れ、お屋敷の中に閉じ込める事で、世間の鎮静化を待つ、そういう算段のようでした。
いっそ、刑務所にいれられた方が良かったでごさいましょうね…………
跡継ぎの不始末を、奥様方は赦しませんでした。
“どうでもいい”から“迷惑”へと更新され、憎悪の対象となったのでございます。
嗚呼……
本当にわたくしがバカでございました。
警察に通報していれば……
はい、それはもう非道ひどい仕打ちでございました。
坊っちゃまは、お部屋に軟禁され、時折、奥様方はふらりと現れては、折檻するのでございます。
殴る蹴るは当たり前、熱湯を浴びせたり、耳を覆いたくなるような罵詈雑言を吐きかけるのでございます。
わたくしも奥様方にとりすがっておやめ下さるように哀願いたしますが、終いにはわたくしも打たれてお部屋から追い出され……
おかわいそうな、坊っちゃま……
特に、陰茎への折檻は筆舌に尽くしがたいものでございました。
初めは、怒りにまかせたような奥様方の折檻でしたが、それは段々と遊び半分のようになりまして……
内容もエスカレートしていったのでございます。
火で炙る、安全ピンで包皮を閉じる、画鋲だらけにする、尿道にカッターナイフの刃を挿入してそのままにする、煮えたぎる鍋に入れる、ハチに刺させる、接着剤で固めてしまう、…………
虐待以外のなにものでもございません。
凄惨な折檻の時間、お屋敷中に坊っちゃまの叫び声と、奥様方の怒声が響きわたり、わたくしども使用人は、ただただ、この悪魔の時間が早く過ぎ去るのを祈るしかできませんでした。
折檻が終わると、決まって奥様方はこう仰られます。
『治しておいて』
まるで壊れたおもちゃの扱いでございます。
言われずとも、わたくしは懸命に手当ていたしました。

ぐったりとした坊っちゃまは、それでも、
『お母様、母上様、ごめんなさい』
譫言うわごとのように繰り返しておられました。
おかわいそうに……
刺さった針を抜く時も、歯を食い縛って耐え、閉じられてしまった尿道を開く為にわたくしがブジーを挿入いたしましても、泣きながら耐えて……

傷は絶えず、衰弱し、坊っちゃまは発熱しては意識を失い、回復すると折檻され、という繰り返しでございました。
痛み止めの坐剤は手放せません。
わたくしには強い薬剤で少しでも坊っちゃまがラクになられるようにする事しか出来ませんでした。

そんな日々が半年以上経ちました。
坊っちゃまはボロボロになっておられました。
体中、アザだらけ、傷だらけで、おちんちんは常に腫れ上がり、食も細って、幾度か流動食を用いてみましたが、奥様方にみっともないと却下されてしまいました。
体も傷だらけでしたか、以前の心の病み方とは異なりますが、別の傷で、心は体以上にボロボロでございました。
ところが、、、、、、、
臨月だった奥様が(玉小路直系の奥様でございます)体調を崩されて、入院したのでございます。
そうして…………
なんと、亡くなってしまわれたのです。
お腹の赤ちゃんもろともに…………
こう言ってはなんでございますが、奥様は自業自得のようにも思ってしまいます。大きなお腹で、嬉々として坊っちゃまに鞭を振るうなど、お体に良いわけがございません。亡くなられた赤ちゃんにはお気の毒でございますが…………
奥様(嫁いで来られた奥様でございます)の嘆きよう、悲しみようときたら、ありませんでした。
朝も夜も、泣き続けておられました。
正直、坊っちゃまへの折檻がこれで終わるかと思いまして、わたくしはほっといたしました。
盛大なお葬式が済みまして、どのくらい過ぎた頃でしょうか。半月?一ヶ月は経っていなかったはずでございます。
その間は、不謹慎ではございますが、とても平穏で、坊っちゃまも少しずつ回復しておられました。奥様はずっと酒浸りで、自室にこもっておられました。
それがある日……………

『……母上様?』
それは夕食の後でございました。
坊っちゃまのお部屋にあらわれました奥様は、一目で酔っているのが解りました。
『お前しかいない』
恐ろしい声。
『な、なんですか?ぼ、ぼく、何かしましたでしょうか、母上様??』
困惑する坊っちゃまに迫る奥様。
いつも和服で通しておられます奥様は、そのお着物のすそをたくしあげました。
異様な物体。
黒光りする巨大な張形ディルド───────
夜の営みに用いるペニスバンドという物でございました。
そんな物を身につけて、どうするつもりなのでございましょう、、、、、、
異様な目付きにわたくしも坊っちゃまも怯んでいると、
『玉小路の血は、もうお前しか残っていない❗』
そういう事でしたか…………
直系の奥様は亡くなり、期待されたいた赤ちゃんもまた…………
残るは坊っちゃまただお一人。
恐らくは、早く、新たな跡継ぎを作らせる為に、坊っちゃまに過激な性教育をするつもりなのでございましょう。
『奥様っ❗️それでしたらわたくしが精液採取いたしますっ❗️注射器で直接採取いたしますので、間違いなく跡継ぎには…………』
『うるさい。お前はクビよ』
『な……』
唐突にいとまを出され、呆然としておりますと、奥様は坊っちゃまの手を掴み、ぐいぐいと引っ張り、お部屋から出ていかれます。
いけない、と思いました。
わたくしの手元から離されてはもう、坊っちゃまをお護り出来ません。
『お、お待ちを❗️奥様っ❗️誰か、誰か来てっ❗️』
危険な急展開に声を上げますと直ぐに家令かれいやその他の女中メイドたちが駆けつけてきましたが、その異様な状況から一様に困惑しています。
『奥様っ??』
『坊っちゃまをどうなさるので?』
答えはなく、坊っちゃまを引きずりながら、奥様はずんずんとお屋敷の奥、地下へと進んでいきます。
物置でしかない地下の一室の壁を押すと、扉が現れました。
こんな場所が……?
その奥にあるのは、
太い木製の格子が張られた小さな部屋────

“座敷牢”

このお屋敷に、こんなものがあった事に驚き、恐怖いたしました。
大昔、精神科医療が整っていなかった頃、私宅監置といって、おうちにこのような座敷牢などを設けて患者を閉じ込めるという処置が行われていたのでございます。
当時の言葉、キチガイや狂人、分裂症とされた患者さんは、世間の目に入らぬよう、恥をさらさぬように、閉じ込めるのが当たり前で、それを請け負う業者すらいたと言います。確かに、暴力的、攻撃的な患者さんもおりますし、トラブルもございます。治療法が殆んど無いのも事実ですし、当時は精神科の病院自体が数える程しかございませんでした。
とは言え、なんのケアもなく、犯罪者より酷い扱いで閉じ込め、緩やかに衰弱死させるのは、これは死刑でなくてなんなのでございましょう。
こんなものが在るのは、かつてこの玉小路家でそういった行いがまかり通った証左でありますし、それをしてきた一族なのだとゾッといたしました。
そしてそれを、
坊っちゃまに?

『母上様ぁっ??』

奥様は坊っちゃまをその暗く狭い牢屋へと押し込み、

『お前たち、全員クビよ』

そう告げて扉を閉めました。

『奥様っ!?坊っちゃまっ!!』

中からは異様な叫び声と啜り泣き。
わたくし含め、使用人一同は扉を叩き、呼び掛け続けましたが、開かれる事はありませんでした。

お屋敷を離れて半月ほど。
家令やコックなど、他の元使用人と連絡を取り合い、わたくしはあの禍々しいお屋敷に、戻ってまいりました。
表向きは雇用と失業に関する云々でしたが、どうにか坊っちゃまを助け出したいとの行動でございました。
お屋敷は、たった半月で、恐ろしく荒れ果てておりました。
管理、清掃する者がいないと、こうも朽ち果てるものなのでございますね。
本当に誰もおらず、門もドアも開いていて、わたくしは、例の地下にある座敷牢へと向かいました。
恐ろしくなかったと言えば嘘でございます。
全身が震えておりました。
もしや、
もしや、
坊っちゃまは、
奥様に、
殺…………
嫌な予感は次第に強まり、
物置から震える手で扉を開いて…………

一目で遺体と分かりました。

座敷牢の格子に、帯を引っ掛けて、着物の前をはだけ、あろう事か、奥様は首をくくってらしたのでございます。

死後一日から二日……
死後硬直は八時間ほどで全身に達し、それが二日ほど続いて弛緩、腐敗していきます。
奥様は既に亡骸となっておりました。

『……なんてことを……』

思えば、この家の奥様方は、弱く、小さな方々だったのでございましょう。
伴侶の死に耐えられず、自らも後を追ったのでございます。
ご遺体を見つめる事暫し、
坊っちゃまは?と思い直し、牢屋の中に目を遣ります。
そこに、裸で血塗れの坊っちゃまが倒れてらしたのです。
牢屋に鍵はかかっておりませんでした。
格子を潜りますと、足元には大量の性具の類いが散乱しておりました。
何をされたのかは想像に固くありません。
『坊っちゃま❗️』
抱き起こしますと、微かな温もりと僅かな呼吸。

生きてらした─────────

わたくしは救急車を呼び、同時に懸命に呼び掛けました。
『坊っちゃま❗️ねえやが分かりますか❗』
見れば、
陰茎が在りません。
近くに鈍く光る懐刀が有りました。
あれで……
出血は既になく、恐らくは散々、二人の奥様になぶられた事で傷だらけで縮小していた為に、切り落とされても出血は少なかったのでしょう。
不幸中の幸いでございました。
そうして…………
後は、刑事さんもご存じの通り、坊っちゃまは搬送されて緊急手術を受け、旧華族の資産家の跡継ぎへの虐待と去勢法違反、そして自殺というスキャンダルでございますわね。本当に、ニュースはそればかりで、辟易いたします。
これで、わたくしの知っている全てでございます。
はい。
坊っちゃまは激しい虐待を受けておられました。
奥様方は幾つも法に触れる事をなさっております。
もっと、早くに告発するべきでございました。
申し訳ございません。
今さらでございますわね、本当に。
それで、坊っちゃまの容態は……?
意識不明……
でしょうね……
はい、面会して宜しいので?
わたくしの勾留も解かれる、と。いえ、それは第一発見者でございますし、坊っちゃまに一番親しいのはわたくしですし。
マスコミもうるさいですしね…………
はい、では病院までお願いいたします。
お世話様でございました、刑事さん。
そういえば……
坊っちゃまの、その、陰茎は、見つかったのでございましょうか……?
まさか、ご遺体の中に……?

『大人しくしろ❗動くなっ❗尻を出しなさいっ❗』
引き剥がされるおむつ、突き立てられる異物、裂ける肛門、激痛、異物感…………
度重なる両親の虐待で、少年の陰茎はすっかり勃起しなくなっていた。それを無理矢理使えるようにする為に、母は肛門を貫いては掻き回す。
『さあ、種をよこしなさいっ❗玉小路家の種をっ❗』
漸く膨らむと、母は息子にまたがった。
遺伝的には他人とはいえ、親子に相違ない。
嫌悪と恐怖で少年は忽ち萎縮する。
そうしてはまた折檻と、肛門への責めが始まる。
それは永遠に繰り返された。
永遠に繰り返されても、母のなかで果てる事はなかった。
どれくらい、繰り返したのだろう。
闇の中へ、少年の意識も溶け出し始めた頃。
『やっぱりダメなの……』
母はポツリと悲しげに呟くと、
『こんなもの要らない』
合口を抜いた。
母と繋がっていた不浄のへその緒が、、、、

じゃっ

『✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕』
切断された。
少年は闇の一部となった。

坊っちゃま、
坊っちゃま、
分かりますか?
ねえやでございますよ。

何処からか、優しい声が聞こえるが、少年にはよく分からない。

坊っちゃま、全ての元凶を取り除きましょう。
呪われた玉小路の血筋を終わらせるのです。

股関に冷たい感触がした。

ぎゅうっ❗という凄まじい痛み。
潰れる❗❗
破ける❗❗❗
闇の中で少年は絶叫するが、その声は届かない。

「坊っちゃま、辛抱なさって下さいまし❗」
子守りナースメイドは、ベッドに横たわる少年のおむつを開き、その陰嚢を去勢鉗子で挟み潰していた。
神経の束である精巣上体部が挫滅され、意識のない少年も苦しげにうめき声を上げる。
とうございますね、今暫くの辛抱でございますよ❗️」
少し角度を変えて、念入りに挟み潰される。

ぎゅぢっ、という感触があった。
「……っあああああっ!!!!!????」
少年は絶叫し、ベッドから飛び起きる。
陰茎のないキリカブ状の断面からは、精嚢に残っていた精液が、どくんどくんと迸っている。
それはこれまでで、最大の射精だった。
間欠泉のように白濁液が噴き出している。
それはあたかも、忌まわしい血筋を捨て去るかのように、射精は続いた。
「ううっ……はぁはぁ……」
漸く、噴水のような射精が終わり、精液まみれの少年は、ぐったりとベッドに倒れこむ。
精巣が焼けるように痛いが、これまで味わってきたどんな痛みとも違って、どこか心地よく、甘い悦びがそこにはあった。
「坊っちゃま……」
彼の専属の看護婦が覗き込む。
誰より大切なひとがそこにいた。
「ねえや……?ぼくは、どうして……母上様は……」
「もういいんでございますのよ……」
ううんと看護婦はかぶりを振る。
そして、
「さあ、おしめをいたしましょうね💕」
涙を堪えて、看護婦はそう告げた。

  (完)


本書はフランショタ・バカネットの児童文学『小公児』日本語に翻訳、改編したものです。

  変態書房より

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