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訪問去勢ステーション『ふれあい』

ピンポーン🎵
「こんにちわー🎵」
玄関のチャイムと共に、挨拶する女の声がした。
「訪問去勢ステーション“ふれあい”でーす🎵」
「はーい❗今、行きまーす❗️」
待ち兼ねていた来訪者に、家主婦妻ふさいは飛び付くように玄関へ走り、ドアを開けた。

「ふれあいから参りましたー🎵看護婦の井上でーす🎵」
と白衣に防護具姿の女が元気よく一礼する。
続いて、
「同じく看護婦の今井です」

先程のとは別の、より物々しい防護具姿の看護婦が一礼した。二人の後ろにはもう一人、佇んでいる。

「小児泌尿器科医の藤原です」
と会釈した。
「お待ちしておりました…………」
「どうぞ、こちらへ」
婦妻はふれあいの三人を招き入れた。
「お邪魔します」
「息子さんは?」
「はい……学校の精通検査で陽性と診断されて以来、絶対に手術はうけない❗と言って、部屋に引きこもってしまって……」
涙ながらに夫妻は我が子の現状を説明した。
「もう三ヶ月になります。どんなに説得しても出てきてくれなくて……食事はドアの前に置いておくと私たちのいない時に食べてはくれているんですが……おトイレも、夜中にこっそり入ってるみたいです」
「わ、私がいけないんです❗薫が、あの子がおちんちんをいじってるのを見てしまって、そんな汚ならしいことするなんて、いけないわ❗️と叱ってしまって……それから心を閉ざしてしまったんです……」
彼女が精子提供者だろうか。自身が早くに新少女となった場合、我が子に過剰に厳しくなる事が間々ある。
「そーですかー。大変でしたねー」
ふんふん、と頷く井上看護婦。
「三ヶ月となると、重症ですね」
うーむ、とシールド越しに今井看護婦が眉をひそめる。
「はい……もう、どうしようもなくて、そちらにお電話致しました」
「安心して下さい。今は在宅去勢も増えてますから」
と藤原医師は述べた。
「薫くんは、緊急を要する状態かと思います。こちらで処置する事になりますが、構いませんか?」
「はいっ❗️よろしくお願いします❗️」
婦妻は深々と頭を下げた。

「薫くーん?はじめましてー🎵看護婦の井上でーす🎵」
「今日はね、薫くんのことをお母さんたちが心配して、連絡をもらった私たちが訪問看護に来たのよ」
薫の部屋の前。
ドア越しに呼び掛けるが、返事はない。
暫く取り留めのない一方通行なやり取り?が続いた。
「……心配ね。一番悪いケースかも」
藤原医師が嘆息する。
「じゃあ……」
「破っちゃいましょうか🎵」

ぎゅいいいいいい❗️❗️❗️❗️❗️

凄まじい金属音と火花が飛ぶ。
ふれあいのワゴン車に積んでいた電動ドリルを取ってくると、井上看護婦がドアノブ付近に突き立てたのである。精巣骨化症の去勢の際に用いるもので、元は脳外科のパーフォレーターを応用したものである。

ぎゅいいいいいい❗❗️❗️❗️❗️

がきん。。。

呆気なく、ドアの鍵が破壊された。
最後の砦が開いてゆく……………

「……薫くん?」
八畳ほどの部屋、その隅っこに薫少年は震えながらうずくまっていた。
「こんにちわ、薫くん🎵看護婦さんよ❤️今日はねえ……」
「で、出て行け❗近寄るなぁっ❗」
少年は頭を抱えながら涙声で叫んだ。
パジャマは薄汚れ、入浴していない体は汚れ、異臭を放っている。
「薫くん、ちょっとお話を……」
「あっち行けーっ❗❗️❗️」
埒があかない。
ふれあいの三人は顔を見合せると、
「力ずくでいっちゃいましょ❗」
そうなった。

井上、今井、両看護婦が拘束具を手に少年に掴み掛かった。暴れるが、瞬く間に組み伏せられ、着衣を剥ぎ取られる。スプレッダーバーを装着させ、股を開いた状態で手首を連結し、仰向けにすると赤ちゃんのおむつ交換のような体位となった。
「おしっこ出来る?」

尿器をあてがうも、排尿はなかった。
「お母様方、お部屋を汚してしまいますが、構いませんでしょうか?」
女医が問う。
「それは勿論❗構いませんっ❗」
「では……」

少年の傍らに跪く女医。
「陰毛も確認できるわ。これは先に陰茎を処理した方がいいわね」
「やめろー❗はなせー❗」
泣き叫ぶ少年を一向に気にすることなく診察をしてゆく。
「緊急切除しましょ」
「はい」
今井看護婦が器具を用意する。
「お母様方は外に出ていて下さい🙇」
井上看護婦が、両親を退室させる。
「薫くん、がんばろうね」
「我慢よー❤️」
「な、なにするんだ……や、やめてよ……」
陰部を消毒され、これから何をされるか悟り、少年は泣き出した。

「陰茎切除術を行う。メス」
「はい」
看護婦からメスを受け取り、女医はそれを少年の陰茎の付け根にあてがった…………

ずっ
ずずずずず
ず─────────っ

「ああああ゛あ゛あ゛あ゛❗️❗️❗️」
住宅街に少年の絶叫が木霊する。
「動かないで❗️辛抱しなさい❗️」
叱責し、バタつく体を今井看護婦が押さえ付ける。

ずっ
ずっ
ずっ
ずっ

「ひっ……ぎっ……ママぁぁぁー❗️❗️お母さぁぁんっ❗❗️助けてぇぇえーっ❗❗️❗️」
幾度か刃が往復し、

陰茎は切除された。
出血と失禁した尿が飛び散り、子供部屋を汚していく。
防護具の医師と看護婦は、お構い無しに処置を続ける。
「痛いよぉ……助けてぇ……」
「今、助けてあげてるから安心して」
止血し、断面を縫合していく。
その間に、井上看護婦は適当な場所にフックを掛けて点滴を用意する。抗生物質を投与する為である。
「お母様方、どうぞ」
両親を招き入れると、血塗れで泣きながら喘鳴を吐き出す我が子の姿に、涙腺が決壊した。
「薫っ❗」
「たくさん誉めてあげて下さい」
と女医は述べて、キリカブの処置を終えた。
精巣は、取り敢えずはそのままで良いとの判断である。
「ママぁ……お母さぁん……」
点滴を打たれながら少年は、久方ぶりに両親に向き合う。
「えらいよ、薫っ」
「そうよっ……薫、よく頑張ったわね」
「……うん」
涙を溢し、少年は意識を失った。

傷口を保護し、拘束を解くと三人で少年をベッドに移す。膀胱にカテーテルを留置するとおむつを穿かせた。
「取り敢えずは、これで問題ないでしょう。明日また伺いますので」
女医はそう告げた。
「明日は、体をキレイキレイしますねー🎵」
点滴の滴下速度を計りながら井上看護婦が微笑む。
「あ、ありがとうございましたっ😭」
「いいえー❤️お力になれて幸いです❤️」
「それでは薫くん、お大事にー💕」
一通りの処置と片付けを終えると、ふれあいの面々は去って行った。
さて、次の訪問先は………

様々な事情により医療機関への受診を拒む患児や、入院が困難な患児の力となる為、出来る限りの在宅でのケア、ニーズに応えた在宅去勢の実現に訪問去勢ステーション『ふれあい』は、日々尽力しております。
お気軽にご相談下さい。

さあ、次の訪問先は…………

              あなたのお家💕


(了)



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