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大人になってから新たに気づく「十二国記」のすごさ


一昨年、18年ぶりに新作が発売されたことで話題となった『十二国記』シリーズ。
読んだことがない人でも、本屋に行けば一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
当時中学生だった私も夢中になって読んでいました。

大人になった今、なぜ、あれほど夢中になったのかを考えてみました。
そして、新たなすごさに気づいたのです。
経験を交えた、少し変わった着眼点からお届けします。

それは、以下のことを思いついたことからはじまりました。

私が異世界から来た可能性はあるのか!?

SF映画やマンガなどでよくあるストーリー。
異世界から来た人間が存在している・・・

そんな物語をみた後に、ふと頭に浮かんだことがあります。

「私自身が異世界から来た可能性ってあるのだろうか?」

我ながらバカなことを、とあきれながらも、仮説を立ててみました。

しかし、すぐに「ない」という結論に至りました。
主な理由は2つ。

まず、両親が存在していること。
さらに、私が覚えていない生まれた時のエピソードや思い出がしっかりしています。
これを偽造できたら大したものです。

そして、私自身も幼いころの思い出を覚えていること。
残念ながら、転生してきた記憶もありません。
記憶を改ざんされたのでは・・・と考えてみましたが、そんな規模の大きいことが、平凡な一般家庭で起こるはずもありません。

こうやって、自分で立てた仮説は、すぐに「違う」と結論づけました。

家にいるけど家に帰りたい

自分が異世界から来た可能性は・・・なんて途方もないことを考えたのには理由があります。

私にはふとした時に、浮かぶ言葉があります。

「帰りたい」

家にいるときでも、です。
思い返してみると、大人になってからではなく、中学生くらいのときから考えていたような気がします。

今いる場所が自分に合っていない感覚。
もっと合っている場所がここじゃないどこかにあるのではないかと思っていました。
いや、存在してほしかったのです。

そんなとき、出会ったのが『十二国記』です。

私を救ってくれた世界観

『十二国記』では、シリーズによって主人公が変わるのですが、今回はシリーズの最初である陽子の物語について書きます。

陽子は高校生。
両親ともあまりうまくいっておらず、一般的には珍しい赤みがかっている髪を目立ちたくないという理由で染めて暮らしていました。
優等生ではありましたが、同級生とは馴染めず、少し周りから浮いたような存在でした。

ある日、突然ケイキという男があらわれ、彼女を十二の国がある全く違う世界へと連れて行ってしまいます。


※ここからネタバレあり※




実は、陽子は十二の国の中の「慶国」で生まれるはずの人間でした。
しかし、生まれる前に誤って蓬莱(日本)に流されてしまい、陽子の母親のお腹の中に宿りました。
そのため、蓬莱でも両親は存在するのです。

改めて読んで、この設定はとてもよくできていると思いました。
これが新たに気づいたすごさです。

上記に書いた通り、自分が異世界の人間ではないかと考えるとき、親の存在から目をそらすことはできません。
でも、『十二国記』では、その点をクリアしています。
違う世界で生まれても、親は存在するのです。


今いる場所に馴染めない、この世界から浮いているような自分。

もし、この世界の人間じゃなくて、別な世界の人間だったとしたら?

この世界に馴染めないのもしょうがない!


中学生だった私は、陽子に自分を重ね合わせていたのでしょう。
当時は夢中になっているだけで、理由までは考えていませんでした。
それが大人になった今思い返して、過去の自分の気持ちが理解することができました。

さらに、物語を読み進めていって教えてもらったことがあります。

どこの世界であっても、辛いことはある。
それを乗り越えて、人間は成長していくことを。

自分の弱さを認め、だんだんと成長していく陽子の姿に勇気を与えてもらったことを覚えています。

今見ると、子どもの頃とは違う角度で響いてきました。

大人になったことで再発見すること

子どもの頃に好きだったものを大人になってからもう一度見ることで、新しい発見や感動に出会うことができます。
そして、過去の自分の感情も見つめなおすことができます。
それを今回『十二国記』に気づかされました。
やはり、素晴らしい作品です。

みなさんも一度、昔好きだった作品を見返してみてはいかがでしょうか?

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綾野花南(あやのはな)
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