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作品の中だと「爪を噛む」悪癖が、魅力的に見える

シャーロック・ホームズ、ドラマ版ハンニバルのウィル・グレアム、ジョジョの吉良吉影、デスノートのL……

これらのキャラクターには共通点があります。タイトルにしているので、お気づきの方も多いかと思いますが、彼らの共通点は「爪を噛む」こと。

私自身も爪を噛む癖があったので、とても恥ずかしく直すのに苦労しました。自分の短い爪を見ては呪われたような気持ちになっていた頃を思い出します。

爪を噛む行為は、見ていてあまり気持ちが良くない悪癖の一つとして挙げられます。一方で彼らは、共通して賢く、それぞれが特異なキャラクターとして、爪を噛むという行為が魅力を引き立てる装置として機能しています。

噛み癖を克服した方のブログなどもたくさん見ますし、深爪を矯正するサロンなどもたくさんある現代。この悪癖に悩まされてる人も少なくないはずですが、今回は少し違った視点で「爪を噛むこと」について考えてみたいと思います。

深爪を克服するまでと、克服してから

爪を噛むことが良くないというのは、物心ついたときに親に叱られるようになって知りました。

子どもの頃は、見つかれば親にすぐ怒られ、歳をとるにつれ人前ではしないようにしていましたが、一人で部屋にいるときに無意識に爪を噛んでいて、短くなった爪を見て自己嫌悪に陥るというループ。

社会人になり、やはり恥ずかしいという気持ちが強く、ネイルができるようになってネイルサロンに通い始めました。ジェルネイルで物理的に爪を噛めないようにしてから、深爪は無くなりました。その頃は深爪矯正サロンなどもなく、おしゃれなネイルサロンに短い爪で行って、ちょっぴり悲しい気持ちになったことも今では良い思い出です。

深爪を矯正してから10年ほど経っていて、爪を噛むということは無くなったのですが、ふとしたときに出る可能性があるので、いまだにジェルネイルを外せません。

どういうときに爪を噛むのか

私は、外や人前では爪を噛むのをガマンできていたので、人前で気を張っている時は爪を噛まずにいられました。しかし、部屋で一人で勉強していたり、思うように本を読み進められなかった時、好きな人からメールを待ってる時……不安になったり、何かうまく物事が進められなかったり、何かを待ってる時に爪を噛んでしまうことが多かった気がします。

爪噛み癖は、よく話題に上がっていますし、いろいろ原因については言われていますが、この記事が自分にしっくりくるなと思ったので引用します。

「完璧主義者がこういった反復的行為を行うのではないかと考えています。彼らはリラックスしたり、仕事を『正常なペース』で行うことができないのではないか」と述べている。「したがって、彼らが自分の目標に到達できない場合、イライラし、気が短く、不満を抱くようになります。また、彼らが感じる倦怠感の程度も高くなります」
(中略)
「こういう癖にはプラス効果があります。刺激を与える、あるいは感情を制御する、精神医学的に言えば『不適応』の状態になる方法なのです」と、オコナー博士はハフポストUS版あてのメールで述べた。「主にフラストレーションや短気が原因でこうした行為に走りますが、これは建設的な行動の代償行為なのです」

Carolyn Gregoire, “完璧主義者は爪を噛む(研究結果)”, Huffington Post( https://www.huffingtonpost.jp/2015/03/20/nail-biting-nervous-habits_n_6908042.html )


確かに、自分は完璧主義なところがあると思っていますし、せっかちなのも当てはまっています。自分の中にエネルギーが有り余っているとは思っていませんでしたが、この記事を読んでポジティブに思えたので紹介しました。

ちなみに、先ほどネイルをやめられないと言いましたが、爪を噛むことをやめた結果、こういったシチュエーションで他の癖が出ていることに気づいたからです。単に、爪を噛まなくなっただけなんですよね。

作品の装置としての「爪を噛む」描写

先ほどあげたキャラクターが爪を噛むシーンって、作品を見たことがある方は鮮明に思い浮かべられるのではないでしょうか?

たとえば、シャーロック・ホームズ。映像作品では爪を噛む仕草はあまり描かれませんが、推理中の仕草として登場しています。また、デスノートのLも推理する際に爪を噛む描写が取り入れられていますが、実写映画版の松山ケンイチさんが演じるLのメインビジュアルは、親指を噛む仕草を切り取ったそのもの。Lのミステリアスなイメージをとても上手に表現していますよね。

このように、爪を噛む行為は、頭脳をフル回転させて推理していることを視覚的に伝える装置として機能していると言えるのではないでしょうか。

また、ジョジョの吉良吉影が爪を噛むのは、自身の築き上げた完璧な日常生活が乱れるシーン。(ちなみに、私はそれまでジョジョに触れていなかったのですが、アニメで「吉良吉影は静かに暮らしたい」の回を偶然見て、見事にハマりました。ザ・ベスト・オブ・ネイル・バイティングキャラクターです。)

吉良吉影の内面に潜む狂気や執着を上手に表現していますよね。こういった行為が、彼のキャラクターに深みを与え、魅力的に見せる要素となっています。

このように「爪を噛む」描写は、単なる癖以上のもので、キャラクターの心理状態や感情の揺れを視覚的に伝える「装置」としての役割を果たしているため、フィクションでは不快感を覚えにくいのかもしれません。むしろ、この癖を通じて私たちはキャラクターの内面に共感したり、彼らの感情の動きに引き込まれたりするのではないでしょうか。

と、こんなふうに爪を噛むことについて語ってみました。私のように、噛み癖をコンプレックスに思っている方の、気持ちが少し上向になるといいなと思いました。爪噛み自体は、簡単に直る癖ではあるので、勇気を出してみるのも一つの手です。

最近、昔ハマっていた映画を観直しています。昔、グザヴィエ・ドラン監督が好きだったのですが、彼の作品には爪を噛む描写がたくさん出てくるんですよね。彼の作品に関しては、観ているととても不安になりますが……。

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