現在の日本は、梶井基次郎の『檸檬』に描かれた世界より、確実に警察化している。
梶井基次郎の『檸檬』という作品がある。
たしか、
京都の丸善の本の上に爆弾に見立てた檸檬を置いて去っていくという話だった。
『檸檬』は1931年(昭和6年)の作品だが、その当時、書店にレモンを置き去っても、警察に逮捕されるなどということは考えられないことだったから、純文学の作品として残っているのだろう。
『檸檬』の行為は、当時の日本では、ただのイタズラで済む話だったのだ。
全国的な特高警察の組織網が確立(1928年に確立)されていた当時でも、
『檸檬』の行為程度では、警察沙汰になることはなかったのだ。
現在の警察は、特高警察と比べ物にならないくらい、
民主的な警察だと思い込まされているヒトが多いかもしれないが・・・
現在の日本で、
書店にレモン(不審物)を置いて行ったりすると、逮捕されかねない。
書店、スーパー、コンビニ、電車などでは、
駐車違反撲滅協力、万引き犯告訴告知、不審物発見依頼などの店内(車内)放送が流れている。
職員が店内(車内)放送通り対応すれば、
書店、スーパー、コンビニ、電車の網棚などなどにレモン(不審物)を置いたりすると、
警察に通報され、逮捕されかねないのである。
日本はそういう国なのだ。
現在の日本は、梶井基次郎の『檸檬』に描かれた世界より、確実に警察化している。
むかしは、今のような店内(車内)放送をすると、
「客を賊(泥棒やテロリスト)扱いするとはけしからん!」と苦情が殺到したことだろう。