「”空気の汚れ”を”婚約指輪”に変える」 ダーン・ローズガールデさん講演レポ
オランダ人アーティスト、Daan Roosegaarde(ダーン・ローズガールデ)さんの「宇宙課題に立ち向かう、ひとりのオランダ人アーティストの挑戦」と題された講演会に行ってきました!
ダーンさんといえば、こちらのTEDが有名。
アマナさんが創刊したウェブマガジン「NATURE & SCIENCE」のインタビューがきっかけで、今回の講演会が実現したようです。
にこやかに登壇されたダーンさん (右)。ユーモアたっぷりのお話をレポします!
「リサイクルではなく、アップサイクルするんだ」
オランダにあるダイクダムは、1932年に建築され、プレーンな直線がとても美しいダムでしたが、老朽化に伴い改修が必要になりました。改修において大切なことは、文化的価値を高め、アイコニックにすることでした。
ダーンさんは、光やテクノロジーを用いようと思いましたが、塩水や天候には耐えられそうにありませんでした。
そこで、すでにそこに存在していた、あるものを使い美しいダムに仕上げることに成功!
それは、車のヘッドライトです。
@Studio Roosegaarde "Gates of light"より
ヘッドライトを反射させるマイクロプリズムを開発し、運転者以外には無価値だった光を使い、美しくアイコニックに生まれ変わらせたのです。
「すでにあるものを活用するんだ。単にリサイクルするんじゃなくて、アップサイクルしていくことが大切だ。"Valuable"なものに変換するんだ。」
「未来にゴミは無い。自然のサイクルにゴミなど無いのと同じように。」
ダーンさんは、北京サッカースタジアムのスモッグを綺麗にする巨大な空気清浄機 "Smog Free Tower”プロジェクトに取り組み、最大70%も他の場所よりクリーンな空気を提供することに成功しました。街の人たちはこの場所を"Clean Air Temple"と呼ぶようになったそうです。
@Studio Roosegaarde Smog Free Towerより
下の写真はダーンさんがお気に入りの一枚だそう。「散歩中の犬も嬉しそうでしょう!」とチャーミングに語っていました。
公園にこのSmog Free Towerを設置したところ、周りにたくさんの犬たちが集まるようになったそうです。人間より強い嗅覚をもつ犬たちの方が、空気汚染に苦しんでいたのかも。
普通なら、ここで「はいめでたし」と終わりそうですが、ここで終わらないのがダーンさんのすごいところ。
この空気清浄機を他の国にも立てるため、新たな経済サイクルを作り上げます。
汚染物質の炭素を固めて、ジュエリーに加工したのです。
この"Smog Free Ring"は、婚約指輪として贈られたり、チャールズ皇太子のカフスにもなりました。
講演会の中で実物を見せていただきましたが、完全に透明な殻の中に、漆黒のキューブが入っていて、神秘的な感じ。欲しい〜!女性の指には少し大きめかな。当時のキックスターターで$271(¥3万ほど)で販売されたそうです。
「僕がやってるのは、別の観点とモノを作ることだよ。空気汚染を、『公害』ではなく『婚約指輪』として語れるように、ゴミをアップサイクルするんだ。」
ダーンさんが成し遂げたことは、みんなが「ゴミ」だと思っていたものを集めて、加工して、誰かにとって価値あるものに変えること。
森の中では、落ち葉も、動物の糞や死骸も、微生物や昆虫が分解し、土の栄養となり新たな森を作る養分となります。ゴミをゴミたらしめているのは私たち自身ですね。。。私は幼少期の大半を北海道の森や山の中で過ごしたのですが、そこではエゾシカの死骸も、朽ちてキノコが生えてる大木も、気持ち悪いとも、可哀想とも思わなかったことを思い出したのでした。
続きます。
NATURE & SCIENCEのこちらの記事でも、ダーンさんとの対談が紹介されてます。興味のある方はぜひ!