木のあれこれ。no.7 楽器の木 part-6.ギター
楽器には昔から古今東西、様々な木材が用いられてきた。
各木材にはそれぞれ特徴があり、奏でる音も異なる。
ここではどの楽器にどんな木材が使われているのか、なぜその木材が使われるようになったのか、そしてその木材の特徴をまとめる。
これまでpart-1から4までは打楽器を扱ってきた。
part-5からは弦楽器をまとめていく、ピアノに続く今回はギターだ。
ギターとは?(広辞苑で)
撥弦楽器の一。平たいひょうたん形をした木製共鳴胴から棹 (さお) が伸び、その表面に張られた6本の弦を弾奏する。音域が広く種々の奏法がある。(Goo辞書)
ギターの歴史
ギターを含む弦楽器は弓から始まった
弦楽器のルーツは弓である。弓似はった弦を共鳴させる為に、様々な事が繰り返された後、古代の壁画や彫刻等の資料からBC.3700年以前あたりに、ギターに類似する弦楽器が出来ていたとされている。
共鳴箱をならすのか、弦どうしを共鳴させるのか
この時期の弦楽器と言うのは大きく分けて二種類があった。
1つは、弦に木の実等の"共鳴箱"をつけて音を出すタイプの楽器
(1:ピンナムタオ、棒琴(タイ)、2:シタール(インド)、3:リュート(ヨーロッパ))。
1
2
3
もう1つは、弦どうしを共鳴させて音を出すタイプの弦楽器
(1:キタラ、リラ(ヨーロッパ)、2:ロッタ、3:クロッタ、4:ハープ等)。
1
ちなみにキタラ(リラ)はハープっぽいこの形が中二心をくすぐるので人気ゲームにも多く使われている。(ドラクエ、FF11)
2
3
4
ギターと言うのは、これら二つの要素を持ち合わせた楽器であり、BC.3000年頃には、原型となる"串状ネックリュート"が完成。
ギターの誕生
ギターの原型が完成し、ギリシャ時代には共鳴胴が板で組み立てられたり、接着されたブリッジを持つようになったり、弦楽器は大きく発展した。しかしそこから1000年程、ギターの発展になるような新しい発見は無く、ヨーロッパへとギターの原型であるリュートが持ち込まれる711年まで、ギター自体の発展に関係する様な出来事は起きなかった。
ヨーロッパにリュートが伝わる
ムーア人のイベリア半島占領によってリュートがヨーロッパへ伝わり、15世紀になると、パバーンやガリアルド等の舞曲で使用され、15-16世紀における最もポピュラーな楽器となった。しかしスペインへと伝わったリュートはそれほど支持されず、ビウエラと呼ばれる楽器へと変化していった。
ビウエラからギターへ
中世におけるビウエラというのは弦楽器の形態全般を示す言葉で、その中の楽器がヨーロッパで発展し、スペインの舞踊に改良され、現在で言うギターへと進化をしていった。ギターという言葉がこの世で最も早く登場した文献は、13世紀の"薔薇物語"における『ギターレ』だそう。
ルネッサンスギターとバロックギターの登場
16世紀から18世紀にかけてのギターは、ほぼ全てが複弦だった。
弦の数も4対だったものが、徐々に5対へと変化していき、4コースギターは"ルネッサンスギター"と呼ばれ、5コースギターは"バロックギター"という名前が付けられた。
6弦で丸いサウンドホールのギターが登場
密度の低い弦しか作れなったため低音用の弦が作れなかったが、1700年代後半に巻き弦と呼ばれる技術の発明で、ギターは大きく発展。高密度で重い弦のを作り出す技術により複弦である必要も無くなり、低音を担当する6弦目が加わって、6コース単音弦へと発展した。
クラシックギターへの発展
18世紀末から19世紀にかけてギターは3つの大きな進化を遂げた。ネックと独立した指板(フィンガーボード)が取り付けられるようになり、ここに金属製のフレットが打ち付けられて音色と耐久性が向上。
そして現代と同様のギア式弦巻きが取り付けられた事。さらにボディ内部におけるファンブレーシングの導入により、さらに音量のある楽器へと成長していった。
この間にギター奏者達の技術も向上し、偉大なギタリストも出現。"アルペジオ"などのテクニックがうまれたのもこの辺り。
クラシックギターの完成
19世紀の後半になって、"アントニオ・デ・トーレス・フラド"が、コンサートホールでの演奏に耐えうる音量と音色を持ったギターを開発。これによりクラシックギターは完成し黄金期を迎える。
彼は、ギターの限られた音量を増加させる為に力木構造を工夫し、トルナボスと呼ばれるサウンドホールに取り付ける金属の筒など、様々なアイデアを試行し、ギターの発展に対して力を注ぎました。
そして"フランシスコ・タルレガ"がトーレスのギターを愛用し、他の楽器の発展により人気がなくなっていたギターが再評価され、様々な奏者によって世界中にクラシックギターが広まっていく。
アコースティックギターへの発展
アントニオ・トーレスがクラシックギターを制作したと同時期に、あの有名な"C.F.マーチン"もギターの製作を開始していた。
ドイツで家具職人を営んでいたC.F.マーチンだが、ウィーンスタイルのギターを築いた"シュタウファー"に弟子入りし、アメリカに渡って師と同じくブリッジピンの小型ギターを制作。トーレスがクラシックギターを完成させたのと同時期の1850年に、現在でも有名な力木構造であるXブレイシングを完成させた。
この構造は鉄弦ギターとしての強度を得るのに都合の良い物だったが、実際にマーチンが鉄弦ギターを制作し始めたのは1922年と言われており、アメリカで行われた1915年の万国博覧会によるハワイアンギターの流行や、1918年以降の鉄眼バンジョーによるブルースの発展といった時代に合わせ、徐々にスチール弦のギターを制作したと考えられている。
アーチドトップギターの出現
1896年にヴァイオリンの制作をしていた"オーヴェル・H・ギブソン"がヴァイオリン制作に使用している削り出しの手法を利用して、表面を曲面にしたアーチドトップギターを制作。
エレクトリックギターの登場
世界で最初のエレキギターといえる"フライングパン"は1931年にリッケンバッカー社が生み出しましたが時期尚早すぎて一般には広まらず、マニアックな層にしか評価されなかった。
ピックアップが搭載されたエレキギターが登場してからは、いままで音の弱い楽器とされていたギターが汚名を返上し、バンド演奏などでも主要な地位を占める楽器へと変わった。
ソリッドギターの発展
ホロウボディにピックアップをつけた、今で言うフルアコにはアンプで増幅された音を楽器が拾ってしまいハウリングするという非常に大きな難点があり、ソリッドギターのアイデアが浮上した。
ギターの内部にある空洞を無くして、一枚板でギターを作るアイデアは、1940年代初頭に既に存在し、1949年に一号機をレオ・フェンダーが制作。後にテレキャスターとして愛されるエスクワイヤーが発売された。
ギターの材料
ギターの材料に用いる木材の種類は本当に多いことがわかった。ここではギターマニアたちがまとめた優秀すぎる木材による音の違いなどをまとめた参考URLを置いておく。ボディ材、ネック材と分けると結構な種類になるからだ。
エレキギターの材料まとめ
https://www.guitarworks.jp/fs/guitar/c/wood_select
アコースティックギター材料まとめ
https://nihon-meisho.com/52/
クラシックギター材料まとめ
https://nihon-meisho.com/52/
リンクを置き去りにしているが、ここまでの楽器の木材をまとめてきた感覚でざっくり感想を述べるなら、クラシックギターとアコースティックギターの材料はグランドピアノと酷似しているというかほぼほぼ同じである。表面の音を反響させる部分にはスプルースが使われ、裏面にはローズウッドや黒檀などの堅い木が使われている。
エレキギターはボディ全てにおいて堅い木が使われている。
木工をやっていての堅い木という表現は木の密度がつまっていて、比重の重い木である。木の密度の違いに関しても面白いので後々まとめていきたい。
参考:https://recreation.pintoru.com/guitar/the-history-of-the-guitar/
あとがき
今回のシリーズをまとめるにあたって、「楽器 木材」と最初にググっていたが、木材の説明として、主な用途のところにギターの木材としてと記載されている記事が多い理由がわかった気がする。木を叩いて音を出し、金属の筒に反響させる打楽器。弦を弾いた音を木に反響させる弦楽器。楽器界においても家具界においても木と金属は密接な関わりがあることが、なんとなくから少し進んでわかってきた気がする。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?