木のあれこれ。no.7 楽器の木 part-7.バイオリン
楽器には昔から古今東西、様々な木材が用いられてきた。
各木材にはそれぞれ特徴があり、奏でる音も異なる。
ここではどの楽器にどんな木材が使われているのか、なぜその木材が使われるようになったのか、そしてその木材の特徴をまとめる。
ギターに続く、今回はバイオリンです。
バイオリンとは(広辞苑より)
西洋の弦楽器の一つ。弦は四本で、馬の尾の毛を張った弓でこすって演奏する。優美な高音が特徴。ピアノと並んで西洋楽器の代表的なもので、種々の楽曲で、最も重要な弦楽器として用いられる。ヴァイオリン。ヴィオロン。提琴(テイキン)。(https://sakura-paris.org/dict/学研国語大辞典/content/7135_598)
バイオリンの歴史
バイオリンは東から来た
バイオリンのように弓で弦を擦って音を出す楽器を擦弦楽器という。その先祖といわれているのが、アラビアのラバーブや、中世にオリエントから伝わり15世紀のスペインとフランスで広く使われたレベックという楽器などだ。また、中世末期のヨーロッパには、フィドルと呼ばれる擦弦楽器がありました。
東洋では中国の二胡や馬頭琴が、ラバーブから発展した楽器で、バイオリンの親戚といっていいだろう。
バイオリンを初めて作った人物
バイオリンの先祖とされる楽器と比べて、バイオリンの楽器としての完成度は並はずれていた。しかも、改良を重ねて徐々に完成されたのではなく、1550年ごろ突如として、最初から完全なかたちで誕生したといわれている。といっても、最初のバイオリンが現在残っているわけではない。このころの絵画にバイオリンが描かれていることから推測されたことなのである。
歴史に残っている最初期の製作者は、いずれも北イタリアの人で、クレモナで活躍したアンドレア・アマティと、サロという町のガスパロ・ディ・ベルトロッティ(ガスパロ・ダ・サロ)の二人。この二人の製作者とともに、バイオリンの歴史は伝説から現実へと変わります。それは、二人の作ったバイオリンが今でも残っているから。ちなみに、現存する世界最古のバイオリンは、アンドレア・アマティの1565年頃の作品である。
(美しかったので大きめの写真で。アンドレア・アマティのリンクからもっと詳細な内容とバイオリンの美しいディテールが見れます)
バイオリンは16世紀の半ばにこの世に生まれたが、それよりやや早く、14世紀頃から作られていたバイオリンとよく似た楽器に、ヴィオール属がある。ヴィオール属は16世紀~17世紀に最も栄え、バロック時代にはバイオリン属とヴィオール属が共存していた。
ヴィオール属の楽器には、バイオリン属のようなf字孔ではなく、C字孔またはもっと紋様的な孔があいている。またバイオリン属との大きな違いは、弦の数が6~7本以上で、4度を基本にした調弦であること(バイオリンは4本の弦で5度の調弦)、左指の押さえる位置にフレットがついていること、ネックとの接合部の形がバイオリンに比べなで肩で、胴体の厚さがやや厚いこと。サイズもさまざまですが、チェロによく似た低音部のビオラ・ダ・ガンバが特に有名である。
バイオリンの木材
表板
スプルース(松)
裏板、側板、ネック
メープル(楓)
その他パーツ(糸巻き部分など)
エボニー(黒檀)、ボックスウッド(ツゲ)、ローズウッド
スプルース(ピアノページに飛びます)
ハードメープル(サトウカエデ)
学名:Acer saccharum ムクロジ科カエデ属
Acer(カエデ)saccharum(砂糖)
高さ 30 ~ 40 メートルになる落葉高木で、カナダの国旗にデザインされているのがこの葉である。
砂糖楓(サトウカエデ)とも言い、樹液からメープルシロップやメープルシュガーをとる。材にもほのかな甘い香がする。
玉粒状の鳥眼杢が現れるものを「バーズ・アイ・メープル」と呼び、高級な家具材、楽器材として重用される。 玉粒が多く、全面に均等に入るものは希少で大変高価である。
類似種として少し柔らかい木質のソフトメープル類がある。
黒檀(エボニー)
学名:Diospyros ebenum カキノキ科カキノキ属
Diospyros(カキノキ、ギリシア語dios(神の)+pyros(穀物) (“神の食べ物”の意)) ebenum(黒檀)
コクタンにはセイロンエボニー(トゥルーエボニー)又はエボナイトと言われる全体的に真っ黒な漆黒の種類とマッカーサーエボニー(マッカサル)に代表される縞模様のハッキリした種類とがある。
一般的にはセイロンエボニーの方が希少でマッカーサーエボニーは次席という扱いである。
加工に関しては大変、硬い木材の為、切削は困難ですが加工してしまえば丈夫な製品を作る事ができる。ペーパーがけやカンナがけに関しても表面に油分がある為、困難であると言える。しかし、マッカサル(縞黒檀)やアフリカンエボニー(真黒)に関しては油分がない為、少し性質が異なります。
耐久性には大変、優れていますが虫害には注意する必要がある。
コクタンは成長が大変遅い事も特徴のひとつで直径が18cmになるのに200年かかるとも言われている。大変、人気のある木材である事から乱伐が進み、その影響から現在では良材はあまりないとされている。
コクタンという名前でひとくくりにして扱われている事が割と多いがタイで採れる青黒檀(マクルア)、インドネシアで採れる縞黒檀(マッカーサーエボニー)、インドや東南アジアで採れる本黒檀(トゥルーエボニー)、アフリカで採れる真黒(アフリカンエボニー)など非常に多くの種類があり、木材としての質や価格なども少し異なる。
コクタンの主な用途は床柱で仏壇や弦楽器の指板、ピアノの黒鍵などにも利用されます。お箸や道具の柄などの小物の材料にも使用される事もある。
また、チェスの駒など比較的、小さな彫刻の材料としても有名である。
ツゲ(ボックスウッド)
学名:Buxus mivrophylla var.japonica ツゲ科ツゲ属
Buxus(ツゲ) mivrophylla
ツゲは樹高が1~3mほどの比較的小さな木である。
強度が高く、非常に硬い木であり、漢字で「黄楊」と書く事もあり、その名のあらわす通り、黄色い表面が特徴的な木材。
木の表面が非常にきめ細かく、塗装などを施さなくても非常に肌触りが良いという特徴を持っている。
また、手で使い込むほどに艶と味が出る木材なので、櫛などは頻繁に使う事で新品にはない重厚さと風格がである。
ツゲは強度があり、緻密で材である事から、櫛、印鑑、将棋の駒、彫刻の材料として特に有名で最良の材料として利用されている。
また、狂い少ない材なので以前は定規、測量用具の材料としても使用されていた。
その他の使い方としては帆船模型の黄色部分の材料としてもよく利用される。
ローズウッド(木琴ページに飛びます)
参考:https://www.yamaha.com/ja/musical_instrument_guide/violin/structure/
https://www.atelierkimura.com/1474/
https://www.bunkyo-gakki.com/stories/yomimono/worldmakers/british1
http://www.suzukiviolin.co.jp/guide/sozai.html
https://www.violin-p.com/clm/material.htm
https://wood-museum.net/kokutan.php
https://wood-museum.net/tsuge.php
あとがき
バイオリンは工芸品といわれるほど美しい。「耳をすませば」のセイジくんを思い出した。日本人にも素晴らしいバイオリン職人が今も活躍している。
この先バイオリンの形はさらに変化を遂げていくのだろうか?はたまたもう完成しすぎて変化はしないのだろうか。