パリ8日目:1/31(jeu.) くもり
8日目。今日は帰るだけの日。にするのもどこかもったいなくて飛行機は13時すぎ。できることは朝のパン屋に行ってカフェに立ち寄ることくらい、と考えてそうすることにする。早めに起きて佐久間さんの連載の校正。戻したところで8時半に宿を出て再びDu Pain et Des Idéesへ。クロワッサン。次はいつ来れるだろう。薄水色の紙袋を持ってレピュブリック広場前のカフェLe Café Pierre。滞在中3度目。そういえばフランスっぽいものを、と思ってカフェと一緒にクロックムッシューを頼むとケチャップとマヨネーズのボトルがドンと出てきて不穏な気配がただよう。すると想像の3倍もある大きさ(大きなカンパーニュの輪切りの上に分厚いハムとてんこ盛りチーズ)でポテトも山盛り。ル・プチかわいいフランス、みたいなのはいったいどこにあるんだろう。がんばっても半分しか食べられず。新聞を読むおじいさん、仕事前に一服する女性、知人同士の談笑。「ええ時間ながれとんな」。以前西成のココルームでお水の女性がふと漏らした言葉を思い出す。宿に戻りパッキングの仕上げをして10時の電車に間に合うようにチェックアウト。昨晩からの微弱な咳が止まらない。
5番線で北駅でRER B線に乗り換えればCDG空港のターミナル2までは30分…のはずが4駅ほど前くらいでなぜか電車がストップ。「なんらかの事件でストップしています」と繰り返しアナウンスが流れ車内もそわそわしだす。待つこと15〜20分でようやく動き出すも今度は最終ひとつ手前のターミナル1で電車がまたストップ。今回はなんの説明もない。乗客のほとんどは降りておそらく空港内経由で向かうことにしたのだろう。それにならうと幸い降りてターミナル2へのシャトル乗り場がすぐだったのでなんとかチェックインには間に合いそう。前回の旅ソウルで初めて国際線に乗り遅れるという失態をしたので少し早めに出ておいてよかった…。バゲージドロップで規定の23キロを3キロオーバーしていたのでいくらか手持ちに切り替えようと思いトランクケースを開けたら真っ先に黄色いベストが現れてきて笑った。
手荷物検査場は係員が談笑し合っていてなんだかもうテロなどなかったかのような雰囲気。最後にグラスワインを飲みたかったけどゲートの先には缶ビールしかなくてそうする。エールフランスの機内は行きより少し人が少なく今回も隣が空いていた。機内食を食べても寝られず、映画も見る気も本を読む気にもなれず、iPhoneに入れておいたBar Music 2018のコンピを繰り返し聴きながらたまにうとうと。Nitai HershkovitsのGreen Hill Pearlsという曲に聴き入ってしまう。あと4時間といういところで一度も見たことのない『ミッション:インポッシブル』の"Fall Out"(最新作だろうか)を発見して見てみたらミッションが雷雲を抜けてパリのグラン・パレにパラシュートで降り立つことから始まって何も考えずに見続けてしまう。フルアクセルにふかすバイクでパリの街中を猛烈に逆走するトム・クルーズ。それを見て先ほどまでいた街のことを思い出す僕の記憶の流れは逆走なのだろうかそれとも順走なのだろうか。
着陸間近の成田の風景は真っ白だった。こっちも雪が降ったんだ。京成スカイライナーの駅を出て眺める上野の街の風景は半日前に目にしていたものとまるで違う。どっちがどうというのでもないけれどそれぞれが日常で、その風景に無関心なのは同じかもしれないと思う。電車に乗るのが億劫でそこから自宅までタクシー。すぐにアンパッキングしてクリーニングに出して一息ついたところで、銀行カードの再発行手続き。その帰りに神楽坂の龍朋。海外から帰るとすぐ龍朋のチャーハンが食べたくなって食べる。ビールも頼むと「今日はもう終わりなの?」というおばちゃんの声に安堵が沁みる。かもめブックスに寄って、ずっと買うかどうか迷っていたバカラックの自伝本を買ったのはルグランのことがあったからかな。トンボロでコーヒーを飲みつつつ仕事しようとマックを開くと後ろの席の男女がフランス語で会話をしていて旅が間延びする。ここ神楽坂はル・プティ・パリとも申します、カフェはといえばピーエルやフローラはありませんが、ドトールやルノワールはございます。どちらにお連れしましょうか、マダム・エ・ムッシュー。
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