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綾女欣伸。@ayaminski 編集者。ぼく、ぼく脳/KRANK/ゴミうんち/レスター・バングス/SIDE TRACK/透明人間/Chim↑Pom: HAPPY SPRING/デザインの両面/神様の住所/本の未来を探す旅/紋切型社会/アイデアインクなど。鳥取県倉吉市出身

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綾女欣伸。@ayaminski 編集者。ぼく、ぼく脳/KRANK/ゴミうんち/レスター・バングス/SIDE TRACK/透明人間/Chim↑Pom: HAPPY SPRING/デザインの両面/神様の住所/本の未来を探す旅/紋切型社会/アイデアインクなど。鳥取県倉吉市出身

最近の記事

群山ブックフェア2024① ブックフェア編

自転車並みのスピードの台風10号に追いつかれないように(飛行機は3時間ほど遅延)、約10か月ぶりに韓国へ。夕方の仁川空港で出迎えてくれたTHANKS BOOKSのイ・ギソプさんは「このところソウルも異常に暑かった。毎日スコールだよ」と、スニッカーズを渡してくれた。これからさらに群山(グンサン)まで高速バスで2時間半ほどの旅。照明の落とされた車内で隣の内沼晋太郎さんとしゃべっていると運転手から「お話はおやめください」とアナウンスがあり、本当はコーヒーなどの持ち込みも禁止されてい

    • 阿久津隆さんの『本の読める場所を求めて』が発売となりました!

      タバブックスの宮川さんが自社から(つまりご自身の編集で)新たに本が出版されるときに書かれる少し長めの文章がいいなといつも思っていたので少し倣って書いてみようと思う。 初台と下北沢で「本の読める店」をうたう「fuzkue(フヅクエ)」を営む店主・阿久津隆さんの新著『本の読める場所を求めて』が発売されました。「本の読める店」がどんな店なのか、これはもう実際に行って味わうしかないと思うのだけど、「本がじっくり読める」ということを第一に、最優先に設計された店(空間)ということで、高

      • 空白と中間の国で

        「これらは最後の物たちです、と彼女は書いていた。一つまた一つとそれらは消えていき、二度と戻ってきません。私が見た物たち、いまはない物たちのことを、あなたに伝えることはできます。でももうその時間もなさそうです。何もかもがあまりに速く起こっていて、とてもついて行けないのです」(ポール・オースター『最後の物たちの国で』柴田元幸訳) 三月の連休を最後に記憶がひどく曖昧なままでいる。憶えておかなければと思うことはたくさんあったはずなのにすり抜けていってしまった。プレイリストに入れてお

        • 春はどこに (봄이 어딨니)

          봄, 봄, 봄, 여름 코는 어딨니 여름, 여름, 가을 입은 어딨니 가을, 가을, 겨울 눈이 보이면 봄이 온대 春、春、春。夏の鼻はどこにある? 夏、夏。秋の口はどこにある? 秋、秋。冬の目が見えたら、 春が来るんだって。 Lucid Fall (feat. 홍갑) – Spring, Summer, Autumn, Winter でもその年は、冬の目が見えても、春は来なかった。 春はすべて夏の先に繰り越されて、どこかへ消えてしまった。 別れと出会い

          大学受験の季節に - みすず学苑の文体について

           大学受験の季節。今年は拡大する新型コロナウイルスの影響もあって受験生の方々の気苦労も察せられますが、同時に新聞各紙にごぞって掲出される予備校の広告も風物詩です。その中で毎年注目してしまうのはやはり、「怒濤の合格力!」の「みすず学苑」。  電車内になかば笑いのテロのように仕掛けられている奇抜広告でも知られる当学苑ですが、ここ数年の経年変化を見てみると、そのメインビジュアルの「ヤマトタケル」は、メガネサル(2016年)→ヤマトタケピコノミコト(2017年)→ヤマトタケカッパノミ

          大学受験の季節に - みすず学苑の文体について

          CRAZY GONNA CRAZY

          等身大の光というものがあるならこの、年末から年明けにかけてそこにあるのかもしれないと思う。本来の色を明け渡して輝くアスファルトが眩しくて思わず手をかざす。陽を背に受ければ向こうからやってくる人たちがなにか舞台の登場人物のように見えるし、光源に対すれば彼らを乱反射の先へと見失う。十代の頃の元旦の楽しみは、特別版で普段の三、四倍も厚みを重ねた新聞各紙をじっくり読むことだった。コンビニのない時代の元日の朝、往復20分をかけて父が駅の売店まで新聞を買いに行ってくれる(何回かは一緒に行

          CRAZY GONNA CRAZY

          ソウル11/17-18: KBSからホンデの夕暮れまで

          昨晩帰宿したのが4時過ぎなので11時ごろまで起きられない。ソウル3日目、窓の外は雨。テレビはたいていKBS(公共放送)をつけるのだけど見るとNHKのど自慢みたいな番組を同じ日曜の同時間帯にやっている。前にジノンさんに「全国歌自慢」って言うんです、と教えてもらったやつだ。でもこちらは、歌い手と一緒に牛の着ぐるみ二人が網焼きの焼肉を持ってきて司会者のおじさん(韓国の知人編集者から1927年生まれですよ、とリプライが飛んできた。見た目タモリくらいなのに!)のみならずカメラマンにも食

          ソウル11/17-18: KBSからホンデの夕暮れまで

          ソウル11/15-16: Unlimited Editionからイテウォンの夜まで

          「おまえ、知ってるか? 心臓ってのは左じゃなくて真ん中にあるんだよ」。機材を返しに行く車中、社の先輩が右側から教えてくれる。知らないふりをした、けれど、本当のところは見たことがない。こんなに近くにあるのに、どうしたら確かめられるのだろう。フロントガラス越しの東京タワーが背景布のような青に赤の輪郭を突き刺していた。 その1週間後、韓国のソウルに向かった。今年も3回目。ホンデ の7番出口を出ると冷たい風雨で心が折れそうなる。が初日から売り切れてしまうものもあるので今日行っておい

          ソウル11/15-16: Unlimited Editionからイテウォンの夜まで

          遠足のあと

          「旅行から帰ると寂しい」と試しに検索してみると「どうすればいいですか?」といった質問とその答えのようなものが列挙されてくる。小学生のとき、遠足後の解散が寂しくて仕方なかった。といっても、遠足がとても楽しく充実して幸せだった、とか、親しい仲間とまたすぐ明日会いたい、というのでもなかった気がする。行き先は大山乳業の工場とか境港の漁港とかで胸踊るものではなかったし、行きのバスでは窓の向こうに変な看板を見つけてはただそれを口に出し、帰りのバスでは会話もなく寝ていたようにも思う。それが

          遠足のあと

          『平成トム・ソーヤー』の一部分

          国立本店ほんとまち編集室「くにたち夏のほんまつり ~おいしく、とける~」(2019年8月23日~9月1日)の選書に寄せて書いたものです。 原田宗典『平成トム・ソーヤー』集英社、1992年  大学受験が遠からずな高校のときに読んだこの本は、スリの神業が備わる主人公ノブオが理数の秀才スウガク、親指をしゃぶる癖のあるストレートロングのキクチとの高校生三人組で大学入試問題を盗み出すという冒険に乗り出す話なのだけれど、鳥取の暗い自室で繰り返し読んだのは、ノブオがキクチとお互いにはじ

          『平成トム・ソーヤー』の一部分

          元号の変化した日のこと

          「変化(する)」という言葉を使って例文を作ってみましょう、と韓国語の先生が言うので少し考えて「연호는 변하지만 시대는 변하지 안아요.」と答えた。元号が変わっても時代は変わりません。변하。ピョンナ。変化、する。「それは社会的な発言ですか?」と先生。今から一週間前のことで、元号が変わってから二週間経ったときのことだった。その日はたしか朝から細かい雨が降っていた。2019年4月30日。火曜日。日常が断絶される前の天気をその後とは違ってまったく思い出せないことはあるけれど、経って

          元号の変化した日のこと

          『無目的な思索の応答』、になる前の企画書

           先月末、又吉直樹さんと武田砂鉄さんが東京新聞上で1年半にわたり交わし続けた往復書簡をまとめた『無目的な思索の応答』を朝日出版社より出版しました。おそらく複数社のオファーがあったにもかかわらずなぜか出版権を獲得できたのですが……ふとオファーした企画書を見直したらちょっとした内容紹介にもなっている気がして、以下に本書のガイドとして冒頭部分をアップしてみることにしました(その後の加筆修正などはナシ)。 - - - - - - - - - - 2018年3月2日 朝日出版社 綾

          『無目的な思索の応答』、になる前の企画書

          私がまた穏やかにならないように

          花曇りの今がいちばん好きな季節かもしれないと思う。どんよりと鼠色に立ち籠める厚い雲の下で生暖かい風が身体の輪郭を確認して花をかすかに揺らした先へと消えてゆく。出会いと別れの季節とも言うけれどその予感も余韻も未来と過去のどちら側にも引き裂かれずに間延びしたまま地盤沈下するようになってしまってから何年経つのだろう。工事と予算と人事が消化される脇を明治から出てきたような艶姿がアスファルト上を明滅してゆく。平成最後の連呼は末法の世の到来のように人も言葉も消えた現世の中に居残って救いの

          私がまた穏やかにならないように

          沖縄の道(4日間)

          印刷立会いの日程が決まらないのでぐずぐずしていたのだけれど、ようやく思い切って沖縄に行くことにした。佐久間裕美子さんのトークイベントが「宮里小書店プレゼンツ」で開かれる、というのだから。宮里小書店は那覇の栄町市場にある本当に小さな古書店。宮里千里さんと綾羽さんの父娘、綾羽さんのパートナー高志さんがプレゼンツ。佐久間さんとのトークは2015年以来。ここでは「ねーね」に対して「あやめん」になる。GEZANのマヒトさんの文章も沖縄行きの背中を押してくれた。 冬から夏への移動。海か

          沖縄の道(4日間)

          パリ8日目:1/31(jeu.) くもり

          8日目。今日は帰るだけの日。にするのもどこかもったいなくて飛行機は13時すぎ。できることは朝のパン屋に行ってカフェに立ち寄ることくらい、と考えてそうすることにする。早めに起きて佐久間さんの連載の校正。戻したところで8時半に宿を出て再びDu Pain et Des Idéesへ。クロワッサン。次はいつ来れるだろう。薄水色の紙袋を持ってレピュブリック広場前のカフェLe Café Pierre。滞在中3度目。そういえばフランスっぽいものを、と思ってカフェと一緒にクロックムッシューを

          パリ8日目:1/31(jeu.) くもり

          パリ7日目:1/30(mer.) 晴れのち雨

          最終日。カーテンを開けると、滞在中いちばんの晴れ。メールや日記を書いて、お土産を買う旅もしないといけないことに(大事だけど)ちょっと鬱屈となる。11時すぎにホテルを出てサンマルタン門から4番線に乗り隣の18区のシャトー・ルージュへ。昨晩に少し積もったっぽい雪が日陰でぐちゃぐちゃ。シャトー・ルージュはアフリカ人街だ。コンゴ、ナイジェリア、セネガル、ギニア、コートジボアール、カメルーン、モロッコ…と、フランスがかつて宗主国として支配した国はアフリカにたくさんある。地上に出ると歩い

          パリ7日目:1/30(mer.) 晴れのち雨