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#35 進路

中学2年の2学期。先生から自信をつけられた私はどんどん積極性が増し、「クラス代表」「学年代表」として選ばれる機会が多くなっていった。これまで長らく「目立つな」と母から押さえつけられてきた反動なのか本来の性格だったのか、人と違うことを好んで選択していった気がする。

そんな私を苦々しく思う母は全く喜ばない。「卯月よりもっとふさわしい子がいるはず」「どうせ失敗するんだからわざわざ人前で恥をかかなくてもいいのに」「お断りしなさいよ」

何をするにも失敗ありきの考えだ。私の娘なんだからきっと娘も失敗するに違いない。どうせ出来ないんだから初めからやらなきゃいいのよ、と全力でやらない方向に推し進めるのだ。幼い頃は言われるがままに従ってきた私だが、もう違う。自分をダメ人間だと思っていないし、たとえ失敗してもそれは自己責任。母のように人のせいにすれば済むだなんて考えない。

というより、母の意見に従って正解が出たことは一度もないと気づいてしまったから。

あっという間に中学3年生となり、進路決定の時期を迎えた。クラスメイトと離れがたかった私は、まだまだ一緒に過ごしたいと第一希望を都立高にする。その意見にかみついたのは勿論母だった。

「いい?公立なんてね、お金の無い家の子が行くところなの。どうしてそんなみっともない真似するのよ。絶対に私立よ。私立の女子高。あなたどんどんママの言うこときかなくなってきてるから厳しい学校でその性格鍛え直してもらわなきゃダメ!」

小、中と公立なのに何故高校は都立じゃダメなのかが分からない。誰に対してみっともないのかが分からない。とっくの昔に「ママ」とは呼ばなくなっている私なのに、自分をいつまでも「ママ」と称する母が嫌。一度決めたことを途中で変更出来ない母の頑なさが何処からきているものなのか、勿論この段階では全く分かっていない。

高校を卒業したら一人暮らしをすると心に決めて7年が経過した。その夢を叶えるまであと3年。今ここで我を通し、後々母に攻入られるスキを作っては元も子もない。私には長年をかけた企てがあり、それを成功させるためには一度引き下がって母の要望を受け入れるのが得策だと考えていた。そのためすんなり母の希望に従い、都立高を諦めて都内でも一番規則が厳しいと有名な女子高を受験したのだ。



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