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#37 女子高サイコー!
女子高生となった私は新しい環境にすんなり溶け込んだ。文字通り教室に女子しかいないという状況は新鮮で楽しくて、日々面白いことの連続。なんと言ったって青春そのもの。どんなに規則に縛られようとも、校則違反がバレて怒られようとも楽しかった。テスト勉強でさえいい思い出。友達にも恵まれた高校三年間、ここには私を否定する人が居ないからのびのびと自分らしく過ごせた。遊びは常に全力だったが、勉強も部活も頑張ったので成績は3年を通じてトップクラスだった。そのため母が私に対してケチをつける箇所がなかったのだ。
夢のように幸せな時間は瞬く間に過ぎ去り、進路を決める時期となる。専門学校に進みたいと言った私に異論を唱えたのはまたしても母だ。
「ふざけないでよ。何の為に高い授業料払ってきたと思ってるの?大学進学以外ありえないでしょう。絶対女子大に行きなさい。それ以外ママは認めませんからっ」
やったー!待ってました。その反応を見越して専門学校と言ったのだから、そこで猛反対してもらわなくては困る。母が自分の意に背くような発言をしたらどういう態度に出てくるか、前回の進路相談の時に折り込み済みだ。
「分かった。お母さんがそこまで反対するなら止めるね」
素直すぎる私に拍子抜けしたところにすかさず続けた。
「女子大合格に向けて勉強頑張ります!その代わり合格したら家を出るけどね」
「はぁ?!家を出るですって?あなた何寝ぼけたこと言ってるのよ。未成年の女の子が一人暮らしだなんてそんな世間体が悪いこと、ママが認めるはずないじゃないの!」
母半狂乱。タコみたいに顔を真っ赤にして怒っている。
「だよねー。じゃ一人暮らしは止めとく。そうなると女子大も受けないけど」
「ふざけたこと言ってるんじゃないわよ」
「真剣です。3年前、お母さんたっての希望で私は進路を変えたんだよ。都立高に行きたかったけど断念した。そしてお母さんの望みを叶える為に私は女子高に入った。だったら今度はお母さんが妥協する番じゃないかな」
「あなた一体親をなんだと思ってるの?親の意見は絶対なのよ、子供は親の言うことさえ聞いていればそれでいいの。バカにするのもいい加減にしなさいよ!」
よく言うよと心の中でせせら笑った。あなたに従わされてどれほど痛い目に遭ってきたか。どれだけ辛い思いをしてきたか。何も分かってないクセに。何もしてくれなかったクセに。この期に及んでまだ親の立場を誇示してる。
「お母さん落ち着こ!今日のところはこれまでにしよっか。倒れないでね♪」
ささっと部屋に引き上げた。笑顔まで見せて話まとめたからなぁ。怒り心頭だろうなぁ。ま、私は笑いが止まらないけど。
今日まで私がどれだけ我慢してきたと思う?子供を守るわけでもなく、筋道立てて理解させるでもなく、ただひたすらに「私は親だ、言うことを聞け」って黙らせてきたよね。小さい頃は思い通りにならなければ引っ叩いてでも従わせた。私がそんな人を素敵な母親ですって尊敬するとでも思ってるの?
反撃するつもりも復讐するつもりもない。ただ私はあなたから離れたいだけなんだよ。それだけを胸に生きてきたんだよ。