足を棒の様にしながらも見えてきた"モノ"

泣き出しそうな空の下、私は早足でとある場所へ向かっていた。

どうしても、絶対に見たい香盤だった。

たどり着いたのは川崎駅を少し歩いて見えてくるオタク御用達の「チネチッタ」
(LIVE ZOUNDやRGBレーザーなどの音響設備が強い。アニメ系に特化したシネコン型映画館、2.5次元などのライストも強ぉいっっ!←オタ特有の早口)
を通り過ぎ、少し裏路地を通り抜けた先にあるポツンと劇場、それが「川崎ロック座」だ。
ずっと調べていたとはいえ、やはり初めに行くとなると少し迷った。
入り口にはファンや会社から送られた踊り子さんへのスタンド花がずらりと並び、入り口近くには看板猫ならぬ、看板亀が二匹いた。
少し観察してみると、どうやらお客さんがいるとき顔をぬっと見せてくれて実に可愛らしい顔を見せてくれた。
私が到着したのはお昼過ぎだった、入り口で横浜で作った女性専用のロック座のピンク色のポイントカードを出しスタンプを押してもらう。何気ないことだがポイント集めは楽しいものだ。
このポイントカードは横浜と川崎では共通のカードが使える、浅草ロック座は価格が女性の入場価格も変わるので別のカードになる。新宿ニューアートも独自のカードを作っている。なのでその辺も把握しつつ、ぜひポイント制を活用していきたい。
スタッフさんは入り口に1人、もぎりに1人がいて、入場前に必ず消毒と検温はマストとなる。チケットの半券をもらい、すっと入場した。

入場するとL型のロビー、テレビも備え付けてありニュースが流れていた。
ちなみにここで数年前に起きた迷宮入りしたであろう殺人事件の容疑者が捕まったことを休憩時間のロビーで知った、いやぁ、実に凄いことだ。
備え付けの時計もあり、壁には香盤表、フライヤーなどもある。緑色の長いソファーも備え付けてる。奥には男女別のお手洗いも完備。
しかしタバコの匂いが苦手な私にとっては、出入り口でタバコを吸った人の香りがロビーに充満しやすく、そのままポラ撮影などでは場内に流れ込む構造になりやすいため、少しくらっとした。
既に演目は進んでいたので、爆音で流れる音楽に呼ばれるように重い扉を開いた、中に暗幕がもう一枚重なっている。それをハラリとくぐると、ちょうど前田ののさんのOPショーが始まっていた。個人的にストリップのことを勉強したりする際にとても見させてもらっていたのが、前田さんの動画だったので何だか嬉しかった。
前田さんはTシャツを羽織り、キリッとポーズを決めて一度退場するとダブルで進んでいたので、3番目の熊野あゆさんと、ののさんの合同ポラタイムが始まった。
なかなか動けず入り口あたりにいて、ポラ列に巻き込まれそうになったので急いで劇場内に退散。人の邪魔にならないように縮こまっていた。
場内は今まで見た中でも一番大きく、舞台、花道、盆と並んでいた。中でも花道は見た中でも一番長かった、SNAも横浜もありそうでなさそうな長さだったので。
舞台の奥には照明がずらりと並んでいる、舞台袖にスモーク機器、鏡はない。
席数は100席ほど、盆を囲むタイプではなく劇場のように前から並ぶタイプの構造だった。
席の後ろには柵がありそのすぐ後ろに椅子が並べられ、最後尾には長椅子があって人がひきめきあうように座っていた。場内にも時計があるので携帯を出さなくても時間がわかるのは凄くありがたい。スト劇場って時間が消える竜宮城みたいですものね。
投光室は2階、入り口入って左の壁側で立ち見すると、踊り子さんと投光さんという不思議な構図で演目を楽しむことができる。

そんなこんなで、場内の酸素が薄く感じた川崎ロック座の演目が再開した。
ここからは踊り子さん別に感想を綴っていこうと思う。

1番:川菜ひかるさん

とっても元気な踊り子さん、私は訳あってM2の途中から拝見した。
表情が豊かで豊満な身体で次々とポーズを決めていく、私が見た演目ではお客さんと一緒に楽しもう!というものだったらしく、ニッコニコ笑顔で踊っていた。
OPショーではピンク色のタオルをお客さんとフリフリしつつ楽しげに踊っていた、そしてまさかの盆と花道で、前周り、後ろ周りをしながら移動していたのは驚いた。花道といってもそんなに長いわけでもないし、盆ももちろん広くない。でもそんなサービス精神がとても爽やかで楽しかった。
ポラショーでも同じようなポーズが続いたことで「同じポーズ多すぎて、頭にのぼるー!!!」と言いながらも、しっかりきめていたひかるさんが印象的でした。

2番:涼宮ましろさん

関東初乗りの踊り子さん、長い髪とクールな眼差しが印象的
個人的にオタクには突き刺さる選曲、口ずさみながら踊ってらっしゃったのできっとアニメとかゲームとかお好きなんだろうな!と期待でワクワク(嬉しい)
青いドレスに身を包み、初めの2曲はゆったりと身体を大きく伸ばしてダンスを踊っていた。花道ではお客さんを愛しむように見つめたり、力強い楽曲で踊られていたのでダイナミックに手足を伸ばしたり。
盆に乗るとゆっくりと衣服を脱ぎ、また違う表情になる。踊りと盆とでは何かしら表情の違いが見れてとても面白い。
それまでゆったりした動きだったのが、キレが強いポーズを切り出すと緩急に心が躍り出した。身体が柔らかく次々と向きを変え盆を回っていく。私はポーズからポーズへ変わる身体の動きがとても好きだと気づいた。
ポラにも参加させてもらった時、初対面の私に少しましろさんは戸惑いつつも、使用されていた楽曲のことを伺い、アニメ大好きだと伝えると嬉しそうな照れたような顔をされていた。私は声が小さいのでうまく伝えられたか不安だったが、ポラショーで使用されていた楽曲は年頃の女性なら一度は通ってきたであろう一曲だったので
「これ好きなんです」
「私も大好きです!とってもいいですよね!」
と伝え合うことができた、オタクは共有が実に大切。ポラにははにかみ微笑むましろさんが映されていた。名刺とポスカも頂け心も体もホックホクだった。

3番:熊野あゆさん

Twitterであらかじめ調べた時に、なんと表情がころんころん変わる可愛らしい方だろう!と思っていたので楽しみにしてた。
あゆさんはピンク色のドレスを着たパティシエ姿で登場した、長い黒髪は三つ編みにして、ふわっふわのドレスに身を包み白いボールを片手に、もう片方には泡立て器を構える。
くるくるっ♪とボールを泡立てると軽やかにステップを踏む。このステップに目を奪われた。本当にタップダンスのように素早く笑顔で細い足が踊る。この人は踊りとても上手な人なんだ...とその時から思い知らされるような衝撃だった。
お客さんいじりもとても上手で照れたお客さんたちを悪戯っぽい表情で翻弄する姿は、面白く何かすかっとした。
ベットに登るとするするとお洋服を脱ぐとスレンダーな身体が見えた。肌がとても綺麗で魅入ってしまう、ポーズを決めるとまたまた驚いた、脅威の身体の柔らかさ。
ぴっ!!!と音を立てそうなほど、キレ良く次々と決まっていく。今まで見た中でも一番キレッキレのポーズだったと思う、お見事です...。
OPショーになるとますます客さんに距離近く、可愛い笑顔で泡立て器でくるくるしていく。この笑顔がきっとお客さんの心を掴むんだろうな、とくまさんが見つめるお客さんの顔を見て私はぼんやりとそう思っていた。
あと、すっごく髪の毛綺麗ー!同性として憧れるポイント...。

4番:前田ののさん

先ほど書いたが、ののさんのイメージとしてyoutubeで様々な面からストリップや踊り子さんを紹介したり、日常や面白い動画を挙げてくださり私的にはすっごく色んなことを教えてくれる人だと勝手に思っている。
動画でのののさんはにこやかで、お話も上手でシナモン好きで(シナモンフレンズのカプチーノ推しなので何か嬉しいポイント)可愛らしいイメージがとても強かった。そのイメージで行ったので演目には少々驚いたのだった。

「Az」
どうやら新作らしくTwitterでも、演目名がそう書かれていたように思う。
黒いハットとスタイリッシュな細身のドレスに真っ黒なヒールの高いブーツ。傍には椅子がある、時には椅子の上で、側で、そして最後は何も纏わず椅子の上でポーズを決めた。
しかも楽曲はしっかり一アーティストに固めてきて統一感が半端ない、とにかく...

カッコいいーっ!!!

と心の中で叫んでいた。
「まえだだっ!」と指差していたおちゃめなののさんとは違う、スタイリッシュでクールなののさん。ダンスでも鋭い眼差しで自分の世界観を踊りきっている。
盆にのぼり洋服を脱ぐと、ナイスバディで「ぎゅーと抱きしめたい系」だなぁと思った。いや、踊り子さんに一切触れられないけど、あくまでイメージだけど。
あとネイルがきらっきらしてて照明でキラリと光るのもポイント。涼やかな表情で周りを挑発するように次々とポーズを切る、時にはゆっくり、時には風のように。
この時にポーズを切るののさんに真っ白なリボンが空を舞うところを見た。
リボンさん、初めて見た。
劇場にリボンが舞うことで、ますますライブ感が高まった気がする。

5番:樋口みつはさん

今劇場でデビューされた踊り子さん、本当におめでとうございます。そして10日間お疲れ様でした。
顔に透けたショールを着けた状態で登場、白と黒のおしゃれなドレスに身を包んでいる。
ショールではじめは顔は見えない、でもさっと取られる時、不思議な緊張感がある。
初々しいステップで緊張の面持ちで踊るみつはさんを見ていると「頑張って!!!」と思わず拳を握りしめてしまった。舞台でドレスを脱ぐと綺麗な背中が見える、そしてショールを身体に纏うとベットへ。ゆっくりとポーズを決める、顔は真剣そのもの。視線は大人っぽく、今回は可愛らしい正統派の演目だったが、着物や長いキラキラのドレスでの色っぽさを出した演目がこれからあってもいいなぁと思える雰囲気あるみつはさんでした!


川上奈々美さんの演目に行く前に一言だけ。


私がストリップに興味を持つきっかけをくれたのが、川上奈々美さんことみぃななさんでした。
映画が好きな私はネトフリでの「全裸監督」を一気見した時に、4話メインヒロインとして登場したのが川上さんでした。脱ぎや濡れ場もあったのでセクシー女優さんかなと思っていたのですが、それまでの女優さんが演技力が高い方を私が知らないだけだったので、全裸監督の「みく」という役柄を通じて、どこか冷めた表情で囲いに「ばいびー」という姿や「おはよう、わたし」と自分を鼓舞する姿、村西の強い勧めに覚悟を決め前貼りを取り本番に挑んだ時の演技の変わり様、最後に全てが崩れ、一番彼女がしたくなかった「親バレ」を前に崩れ落ちる表情がどうしても忘れられなかったのです。その後、ネットで川上さんのことを知りAVでも様々な作品に出演されていることを知りました。中でもやはりドラマ部分があるところを見ると様々な人になりきってとても驚きました。知った当時、舞台もされていてその後も恵比寿マスカッツでの活動や、映画でも精力的に出演されていることを知りました。そんな矢先に踊り子とAVを引退することを知り、ぜひ見に行きたい!でもいきなり行っても少し怖い、ということで先にSNAに行くことになったのでした。
念願で生でぜひ見たかったみぃななちゃんの演技力と表現力!しかもポラ館!気持ちを伝えられるチャンス!この機を逃してはいつ行ける!?という心意気で行ったのですよ、マジで。

6番:川上奈々美さん

壇上には2つの傘と宝箱、そして椅子。ふわふわのショールを纏いドレス姿で現れたみぃななさん。手にはマイク。一曲目はなんと生歌!
ステージによって曲は変わりましたが、歌唱力の高さに舌を巻きました。もう現れて数秒でステージが川上奈々美のものにすっと変わっています、見事に歌い上げる姿はミュージカルを見ているみたい。力強く歌うみぃななさん。
二曲目では満面の笑みで、黄色いドレスに身を包むと軽やかに壇上を踊り回る、銀色に光るヒールでステップを踏みながら舞台で、花道で、盆を行き来する。傘をくるくる回し、ひょうきんな表情を浮かべる。
私はみぃななさんの笑顔がとても大好きなので、にこーっと微笑んだ顔を見た時に「うわあ、今日来てほんと良かった!」と大満足しました、いや、まだあるのに。
キラキラした2曲目から3曲目は一変、とてもメッセージ性が強く大好きな楽曲がはじまった途端、舞台は真っ暗くスポットライトが彼女を照らす、すると地べたに倒れ込み打ちひしがれた表情で起き上がった。先程の黄色いドレスを脱ぎ捨て、シンプルな白いドレスに着替える。ひとつずつ華やかな時間を過ごしたドレスや靴を宝箱にしまっていく。栄華に満ちた時間は終わって思い出をしまいただ踊る。ここで踊るコンテンポラリーがとても好き、悲しみに顔を歪ませて踊りに込めている様に見えた。
盆に走り出した彼女は照らされた光の下で、ドレスを脱ぎパッと裾を盆に広げた。その時の表情がすごく好き。私は私、という意思ある表情。
「この人は本当に表現を愛している人なのだ」
と心が震えた。
盆で全て服を脱ぐとポーズを次々決めていく、先ほども言ったがポーズからポーズがとても好きなので見応えがあってつい拍手を忘れてしまうほどだった。
全てのポーズを決めた後、ミラーボールがきらきらと場内を照らす中、盆で掬った「星くず」が空へぱあっと舞い上がる様に見えた。
舞台に戻ると一本の白い羽を空に掲げ、光が見えた様な気がした。
喜怒哀楽で綴られる「女の半生」のような演目、それはみぃななさん自身かもしれないし、他の誰かなのかもしれない。ただとても演劇的でとんでもなく好きな分野だった。20分ほどなのに、一本の映画をみたようだった。浅草でもこのあと公演があるが、舞台の大きさや客席とも距離があるので、見え方は異なるだろう。川崎で細かい表情の変化など見れて良かったと思う。

ポラには2回並んだが、めっちゃくちゃ緊張した。
私が全裸監督を見て来たことを伝えるととても喜んでくれて、ストリップを見るきっかけをくれてありがとう!と伝えるとめっちゃ笑顔で応じてくれた、正直、涙が出そうになるくらい嬉しかったのは秘密だ。
感情の起伏が激しくてハイカロリーな演目ですねと伝えると「自分でも体力つかう演目を選んだなぁと思いますよー!」なんてカラッと笑っていた。
ポラ2枚とも実は違った印象の写真を撮ることができてまさに「contrast」だった。ポラを撮り慣れてなくても被写体が良いので出来がよすぎて大満足。凄くいいお写真を頂けて嬉しい、大切な宝物にします。
川崎だけでいいかな...と思っていたがこうなったら浅草も見たい!そのことを伝えると「励みになります、ありがとう!」と言ってくれたので、これは行くしかない。ペンライトが完売だったので、念の為次はキンブレ買っていこう...。


今回、6番目までを立ち見で見ていたのだが、足が棒の様になりながらもその位置だから気づいたことがある。
縁の下の力持ち、投光さんの存在だ。川崎には「職人」のような方が見えていた。アナウンスもして、踊り子さんが舞っている間、じっと見つめ光の加減を調整している様だった。
踊っている時、綺麗だなとかこの瞬間を写真に切り取りたい!という一面があるのは、踊り子さんと投光さんの力あってこそだと感じた。
どちらが欠けてもダメ、どちらもなくては完成しない「演目」
それが少しでも見えただけでも、立ち見でもいいことあんよ!と思えたのだった。
演目が落ち着き、樋口さんと川上さんのポラタイムの最中に私は劇場を後にした。
外は雨が降り注いでいたが、私の足取りは疲れはありつつも軽く、心は弾んでいた。
毎回思うことだが、ストリップがくれるパワーはとてもとても大きなものなのだ。


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