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AYAME dayori vol.8 編集後記

  太陽の光も和らぎ、涼風が吹き抜ける心地よい季節となりました。
おかげさまで、2021の1月から始めたAYAME 便りも気付けば半年が過ぎ、たくさんの皆様にお聴き頂けていることを一同感謝しております。

  さて、今月のAYAME 便り vol.8 では、フランスのヴィルトゥオーソ・ヴァイオリニスト、 ルイ=ガブリエル・ギユマン - Louis-Gabriel Guillemain (1705 - 1770) 作曲の「クラヴサン曲集 ヴァイオリン伴奏付き(1745)」 より《ソナタ第5番 ニ長調第1楽章 Allegro》を取り上げました。こちらの曲集は、11年後の1756年になんと四重奏曲 第二集として出版されているということで、その違いを聴き比べるのもとても興味深いのではないかと、今後 AYAME アンサンブル・バロックの公演でも取り入れていこうと計画しておりますので、どうぞご期待ください。

  今回の主人公であるギユマンは、フランスとイタリアで学んだ後にルイ15世に仕え、ついには宮廷音楽家として最も人気の高い最高額の給料を得るヴァイオリニストとなります。しかし華々しいキャリアとは裏腹に浪費とアルコールの為に自殺に追い込まれるという、大変ドラマティックな人生を歩んだ音楽家でもありました。

 そんなギユマンの生きた時代はちょうど後期バロックから初期古典派の端境期であり、その時期に流行した音楽のスタイルを「ギャラント様式」と呼びますが、日本語でも華美様式・艶美様式といわれるように、華麗で艶やかという表現はまさに今回取り上げた作品にピッタリであると感じます。

 また「ロココ様式」という同時期に宮廷内で流行した美術、建築スタイルを表す言葉はより耳馴染みがあるかもしれません。それらの家具や調度品の装飾や曲線を使った華奢な作り、淡い水色やピンク色などのパステル・カラーといった同様式の特徴は、エレガントで輝かしいギユマンの音楽の中にも見つけ出して頂けるのではないでしょうか?

  さらに、ギユマンは古典派の基本的な音楽構造である「ソナタ形式」の原型をいち早く取り入れた作曲家という事もあり、今回の演奏では彼の作品を「ポスト・バロックとしてのギャラント様式」から一歩踏み込んで、「プレ・クラシカル」(最初期古典派、古典派を導いた音楽)という視点からアプローチしてみることに。具体的には、ヴァイオリンでは音の軽さを表現するために弓の初速にこだわりながらシャンパンの気泡のような音をイメージし、クラヴサンでは4フィートの華やかな音を入れて上下の鍵盤を駆使することで音に様々なカラーをつけるよう工夫いたしました。

 荘重なバロックから抜け出すべく、軽やかでありながら華やかなスタイルへの移行、それはまるで宮廷のしきたりから抜け出したいと廃墟や田園に憧れた貴族の趣味に少し似ているかもしれません。バロックから古典派へと移りゆく時代の中に、ふわっと生まれたオアシスのような、淡くも煌びやかな”夢のような世界”をどうぞお楽しみください!!

名越 小百合(チェンバロ)

AYAME アンサンブル・バロック

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