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マズローの欲求5段階説ではターゲットの欲求インサイトの本質は捉えられないという話

本記事の目的

ターゲットの欲求・インサイトを捉えるのに、マズローの欲求5段階説に限らず概念やフレームワークでカテゴライズすることで共通認識が持てるメリットがある一方、本質を見失い、見抜けない。そのことを頭に入れておくだけで、コミュニケーションの失敗を防ぐことができるのではないかという話

原作:朝井リョウの映画「正欲」みましたか?

原作は朝井リョウによる長編小説。読者の価値観を激しく揺さぶる内容が多くの読者の支持を得てベストセラーとなり、第34回柴田錬三郎賞を受賞発行部数はすでに50万部(2023年10月現在)を突破、「これまでの価値観を覆す読書体験」として大いなるうねりを生み出している。
主人公の啓喜を演じるのは稲垣吾郎。唯一無二の存在感を放ちながら、市井の視点で啓喜を演じ、観客を映画世界へいざなう。新垣結衣が夏月の複雑な心のひだを繊細に演じ、今までに見たことのない表情を魅せる。夏月と感情を共有していく佳道を演じるのは磯村勇斗。表情、発声、身体で観客の脳裏に佳道を焼き付ける。台詞だけでなく、ダンスシーンでも大也の感情を発露させるのは佐藤寛太。誰もが持つ心の弱さと強さを、本作が映画初出演の東野絢香が八重子役で体現する。

https://bitters.co.jp/seiyoku/#

本質的な問いに対して考えさせられる作品が好きな私にとって、公開日が分かった瞬間に予定に入れていたほど楽しみにしていた映画。見応えあって、2時間半があっという間でした。

映画のメッセージは、簡単に言うと「多様性」という言葉が多用されているけど、その多用されている「多様性」は結局「マジョリティ」の中の「多様性」にすぎず、「マジョリティ=今世の地球で生きている人々」の中ではまったく共感されない価値観や欲求を持っているひとと出会ったら、あなたはどう思うのか。を問われているストーリーになっている。

以下、※ネタバレあり

映画の中に出てくる希少な価値観・欲求は、例えば「水に性欲を抱く人」。自分の意志とならずとも、生まれつき・育ってきた環境・状況、もっと遡ると、人間という生物的な観点から出てくる欲求など、あらゆる要因が複雑化されている。

これはマズローの欲求5段階説のどれにあてはまるのか。
ブランドマーケティングの世界でこの欲求を捉える機会はないかもしれないが、この価値観・欲求を持っている人の他カテゴリにおける価値観や欲求は他の人と全く同じになるのだろうか。

まとめ

この話は極端な例かもしれないが

例えば、不倫した旦那さんが不倫相手が本気になった瞬間に別れた場合、その旦那さんはその不倫の「どんな状況」「どんな行動」に欲求を抱いたのかというのはある程度想像はつくものの、状況や人が違うので三者三様であり、ただの「社会的欲求」「承認欲求」では片付けられない。

それほど人間の"生の""リアルな"欲求は複雑であり、概念や一言で当てはめられないのを忘れてはならないということである。

では実際に戦略立てる際はどうすればいいのかという話はまた別で、言語化することが難しい…
私自身が意識していることは、元々日常生活で出てくる感情の機微を丁寧に描いている映画やドラマ作品を見るのが大好きで、そこからヒントを得たり、日々の人間観察、人との対話から感覚的にやっているため再現性はないのですが…

ただ、欲求・インサイトがどういうものなのか構造は頭に入っているため、それを意識しながらこちらから「発見」する姿勢で捉えにいっている。これについては、下記の記事を参照ください。

日常のコミュニケーションにおいても人の気持ちは簡単に決めつけられないのと同じで、ブランドマーケティングにおけるコミュニケーションにおいても、ターゲットの欲求インサイトは複雑であることを、自戒も込めて忘れないようにしていきたい。

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