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【詩】ひがん

ひがん

春分の日が終わろうとしている
境界のない空が
穢土を知らない子供のような
屈託なくさわやかな春光をくれた

たわいない忙しさに紛れ
今年も墓参りの帰省をしなかった
山脈を照らす夕陽の代わりに
ビルの谷間に隠れゆく雄大な光を見ていた
厳かに目を閉じる
祈る
人混みの歩道で周囲を気にせず
両手を併せて頭を垂れる勇気は 
まだない
インド人の夫と結婚して33年
深い愛に満ちた義父母が他界するまで
私達を待つ遠い異国のもうひとつの日常へ繋がる電話は
毎週欠かさなかった

「パラマ-トゥマン ハ」    
義父が生前教えてくれた言葉を思い出す
心を惹きつけて離さない言霊
サンスクリット語で「神の域に達した魂」
祖先同士が懇意にしていた詩人が愛した響き
子孫の私の魂も
時空を超えて
残されたメモや語り継がれる談話を通して
彼らと交わることができる
此岸でも解き放たれた自由な交流は
作り話の世界だけの特権ではない気がする
地上のどこで生きても
悟りの世界への憧れは変わらない

ひがん 彼岸 悲願
皆が同じ太陽を見る

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