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現代詩2

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過去に発表した現代詩の作品集です。
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記事一覧

【ご挨拶/詩】新年の誓い

【ご挨拶】 あけましておめでとうございます。 旧年中はたいへんお世話になりました。 誠にあ…

【詩】セットアップ

セットアップ きらびやかなイルミネーションと クリスマスソングが 街中の冷たい頬たちを火照…

【詩】安らぎのブランケット

安らぎのブランケット 鉄琴の  澄んだ高音を ふんわりと  真綿でくるむ 優しさが  私の…

【詩】お祭りのあと

お祭りのあと 躍った  歌った  笑い転げた 涼しいな  お祭りのあと ちょうちん  花火 …

【詩】交信

交信 幼い頃の秘密基地 丘のふもとの岩陰の城 誰とだって交信できた 金星 木星 火星人  …

【詩】書く

書く 蝉の声を聞きながら 掛かり付けの内科まで 火照った身体を引きずるように 歩いて行った …

【詩】大空からの涙

大空からの涙 揺りかごに揺られるような心地良さに いつの間にかうたた寝をしていた 当然訪れると思っていた冬のきらびやかさが いきなり色褪せた友人の悲しい知らせ 久しぶりの電車での遠出が 神楽月の終わりにふわふわと実感の持てないまま 慌ただしく出発する旅になるとは思ってもいなかった 黒い足下だけが車内の熱風にのぼせていた 窓を過ぎゆく外の景色は ついさっきまで人々の頭越しに見え隠れしながら 立ち並ぶビルや家々の屋根を照らす陽光でいっぱいだったのに ほんの短い休息から目覚めて

【詩】ひな祭り

ひな祭り 「今日は楽しいひな祭り」と歌うメロディーが どうしてこんなに切ないのだろう 3…

【詩】寄り道

寄り道 緊迫したミーティングを終え オフィスに戻ろうと乗ったタクシーは 月末と秋雨が重なり…

【詩】月の鏡

月の鏡 群青色の夜空 神さまのおとぎ話みたいに 満月が静かに微笑む 散りばめられた星屑の下…

【詩】絆

絆 青々とした強気な自我に反し 刹那の戯れへの未練を残しながら 抗えない力に導かれるように…

【詩】公約

公約 リビングで うとうと  久しぶりに心地良い昼寝をしていた 子供達と一緒にさっきプール…

【詩】非常階段

非常階段 以前住んでいた我が家のリビングから 水色のオフィスビルが見えた 隣の大きな月極駐…

【詩】読む

読む 早朝の私鉄駅 小銭入れのジッパーを無意識に開け閉めしながら 券売機の前で運賃表を見上げ 息子を通わせたい小学校がある駅までの 運賃を探していた 水之月の雑踏は蒸し暑さを粘らせる 早く涼しい電車の中に逃げ込みたかった 説明会の時間までギリギリだ 焦る私の腕を息子が揺する 「ねえママ、これなあに?」 息子は点字運賃表を右手で撫でていた 探していた数字を見つけた私は 硬貨を券売機に押し込み 切符とおつりを鷲掴みにして改札へ急ぐ 横を見ると息子がいない 周囲を見回すと