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性被害当事者をマイノリティにするために。


性被害者はマイノリティーではないんです

私は性暴力の被害当事者(性被害サバイバー)として7年ほど活動してきました。活動する上で性暴力被害当事者と言うのを珍しく扱われることも多いのだけれど、そうするととても違和感があるんです。

だって現状別に性被害当事者ってマイノリティーでも何でもないもの…

だから「当事者と名乗って人前で話して良いのかな?」ととても不安になったり申し訳なくなったりもします。

何がマイノリティーなのかって私はただ

・顔と名前を出して性被害当事者ですと言って発信・啓蒙活動している。

・被害について人前で語っている。

ただそこだけです。


私が自己紹介で特に関係のない場所でも話す場でも性被害に関する活動していますと話すと、1番多い反応は

「自分の周りにはそういう人はいないからわからない(けど大事ですよね)」

その次が

「実は私も、実は自分の友だちが…」

という反応。

長いことやっているのに比率が殆ど変わらなくてびっくりします。正確に言うとむしろ最近は後者のほうがずっと多いのだけど、まったく性の話やジェンダーなどの話題と関係のない場に行くと前者が少し多いくらいの比率でこの2つが圧倒的に多い。

ちなみに男性と話しても当事者もいますし、男性も「実は自分の彼女が…」ということはとても多いです。


性被害当事者が滅多にないことのように扱われているのは、この激しい断絶が原因と考えています。

前者は自分のまわりには性暴力など存在しないと思っている。

後者の人は「誰にも言えなかった。」「言っていいと思えなかった。」

「自分が悪いから。」「仕方ない、そういうものだと思っていた」と言います。


身近に実は当たり前に存在するのに、言えないからなかったものとされてしまう。性被害当事者なんていないものにされてしまう。

言っても自分の身近に性暴力が起きているなんて思わないし思いたくない、信じたくないから信じない。それはとても怖いことだから。


そして犯罪者は人間じゃないという考えも原因の1つです。それはこの人は人間だから犯罪なんてしないはず。そう思って被害がどんどん表に出なくなる。

でも性暴力は日常の中に存在しているし、ふとすれば誰が起こすかわかりません。だから私は犯罪者は死ね!!という考えは一見被害者の味方のようで実は首を絞めることに繋がると思っています。

そう思う感情自体ははもちろん理解も出来ますし、否定したくありません。当事者や家族やまわりの人がそう思うのも許せないのも当然です。許せなくていいんです。むしろ周囲が許すことを強要するべきでない。

しかし、社会全体と見て性暴力をなくすためには、法律で裁かれた上で、更生し、受け入れられる社会を作ることが大事と考えています。

じゃあ性暴力をどうやってなくすのか?

というのは今思いつく限りのざっくりになってしまいますが、あくまで無くす方向に向かうために自分が今有効だと思っていることは以下です。(他にも支援含め素晴らしい活動をされている方がたくさんいます。)

加害者更生の徹底

先程加害者は人間だという話をしましたが、性欲で行っていることは少ないです。加害者は依存症になっていることが多く、加害者を更生させることでさらなる被害を防ぐことが必要です。性欲はコントロールできないと考えて悩んでいる方の希望にもなりうると考えています。

以前加害者更生をしている方に伺ったお話や見せてもらった加害者更生プログラムの1つのリスクマネジメントシートは行動を修正することに軸をおいた理にかなったものでした。ダイエットや自己啓発にも応用できるような納得のできるものでした。

法律・制度・システムを整える

100年前から改正されていない性犯罪の刑法を変える動きがあり、確定する前に今のままの改正案の内容だとまだ不十分な法律を整える必要があるということで

現在「刑法性犯罪を変えよう!プロジェクト」が動いています。

現在刑法を適切に改正するためのオンライン署名を集めています。

また刑法性犯罪に関するオンラインアンケートも実施しています。

私は先日プロジェクトメンバーから外れることになりましたが、応援しています。

性教育の充実 

性に対して正しい知識をつけること。

明日香さんが理事長のピルコンさんなどが取り組んでいます。

ジョイセフさんもI.LADYなど女性のリプロダクティブ・ヘルス/ライツを伝えています。

今後性に対して学校の生殖教育だけでなく、コミュニケーションの面、実践面までの性教育が必要だと考えています。

ジェンダーなどの教育・啓蒙

性教育の1つであると思いますが、現状ジェンダーに差がありすぎることによって起きている問題はとても多いです。男性が悪いとか女性を優遇しろと言うわけでなく、男女で得られる機会に差があるということを認識することは男女ともに生きづらさを解消する一歩に繋がると考えています。

性に対し平温で語る中間の発信・語る場を作る

SEX and the LIVE!!はここにあたります。

どうしても性の情報や語りは堅いものと娯楽コンテンツやネタの極端でなりがちです。

そう言いながら私もこの記事すごく堅いんだけども…。

教育を変えるのも大事ですが、まず多くの人が考える機会を作ること、コミュニケーションについて発信し、考え、語る場を作ることは「今苦しんでいる人」の救いになり、大きく制度や概念・固定観念をを変えるための力になると思っていますし、堅く感じるようなものも、恋愛やパートナーシップなど誰もが関わる問題と繋げることで、触れやすいようにしていきたいと思っています。

性暴力の現状・知識の啓蒙

性暴力についての啓発・イベント・セミナー・研修を行っていくこと、知識をデータとして見える場に公開すること・情報発信することはとても大事です。高校大学などの性教育の一環に入ってほしいのですけどね。


私はその中で被害は実際どう起こるのか、当事者として実際経験を語ったり、なぜ性暴力が起きるのかなど伝えています。

性被害サバイバーとして表に出ているという背景があるからこそ、私は自分はここにいる生きている人間だということ、等身大であることをとても大事にしています。

性暴力ってだけ聞くと気を遣うし怖いし身構えちゃうと思う。でも普通に生きて遊んだり他のことにだって興味のある人間で、他の面だってある。

もちろん知識は付けていきたいし、資格も肩書きも持っていきたいけれど、特別な権威や資格や知識があるわけじゃなくても、おかしいと思うことをおかしいと言ってもいいということは伝えたい。

(間違った知識を広めたり、人を中傷するのはダメだと思うけどね!)

被害者だ!ってあまり強調して言うのは私も本当は嫌なのだけど、嫌なことをされたということ自体はどんなに自分が悪かろうと自分が嫌いだろうと嫌だと思っていい・言っていい。

(その問題とは別で極端な行動は省みるのももちろん必要だけどね!)

活動だってホントはしなくていい、しなくてよくなるために語って動いてる。

私は別に被害者の典型例でもなんでもない。

むしろ私自身は辛いことももちろん多いけれど、とても環境に恵まれていたため、自分が悪いと考えても追い詰められ過ぎなかったし、人に言うことが出来たので人前でも話すことが出来るようになったんだと思っている。

被害者当事者だってわかりやすい形じゃなくても私と違う形で生きている。

それでも性被害当事者が本当の意味でマイノリティになるように、傷つく人が減るように・傷つけてしまうことが減るように、少しでも自分の発信が役に立ってほしいとメサイアコンプレックスを発揮し、

自分の傷を使うことで過去の自分の経験を愛しながら今日も生きています。

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