親を越えるんだYO!いや、愛するんだYO!
ヒップホップの力を借りて、親をどう超えていくかと言う物語です。
ネトフリで話題(2017年ごろね、古いわー。)のGet downと言うドラマをみました。
HIP HOP黎明期のサウスブロンクスを舞台に、プエルトリカンやら黒人やらその混血やらの若者の青春を描いたストーリーです。主人公がギグするGet down brothersというHip Hopユニットは架空なのだけど、ヒップホップに詳しくなくても音楽好きなら耳にしたことがあるような、グランドマスター・フラッシュとかアフリカ・バンバータが監修に入っていて、ライブがかっこ良すぎるのですわ。
次女のMちゃん(6歳)と一緒に見ていたので、思い出しては「Geeet down!」「げーっだん」「Flyyyyyy high!」「ふぁーいふぁい」とやわやわなコールアンドレスポンスをしている。それぐらい、かっこよさが目に耳に焼き付いている。
高校の頃、ロミオ&ジュリエットでディカプリオとクレア・デーンズの美しさに恋におちてサントラを買い、手帳に2人の写真を挟み、NHKで放送されていた「アンジェラ15歳の日々」をみて夜更かししたり、ギルバート・グレイプを見て映画通ぶった青春時代を過ごした私にとっては、そのきっかけとなったロミオ&ジュリエットを生んだバズ・ラーマン、やっぱかっけー、となったのです。(エモいから長い)
そういやアンジェラに出てた、主人公憧れのちょいグレイケメンのジャレッド・レトが、最近公開した「ハウス・オブ・グッチ」でハゲ散らかしたじじいを演じてたのは同一人物だとは思えない衝撃…
ムーラン・ルージュは見てないけど、ギャツビーもよかった。オーストラリアなんてだだっ広いだけだと思ってたけど(偏見)、こんな監督を生むなんて文化レベルもすごいんだなあ(偏見)。あ、リスペクトしてるラリッサヒョース教授はメルボルンのRMIT大学でした。
ほんで、Get downやがな。
ドラッグやギャング、火災保険金目当ての放火(1晩に33件とか!)など犯罪が多発するブロンクスで、主人公たちはラップやDJのテクニックを武器の代わりにして戦っていくのだけど、私には親超えの物語に見えた。
教会で厳格な牧師の父に育てられたけれどディスコクイーンを目指すヒロイン、亡くなったピアノ教師の母親の期待に応えるべく大学進学を目指す主人公、音楽好きの美容師の父に育てられたけれどクラブへの出入りを禁じられるグラフィティ(落書き)・アーティスト、そしてギャングの女親分に囲われながらDJテクニックを磨くシャオリン・ファンタスティック!(名前かっこ良すぎません?)
天才DJだけどドラッグの売人だったシャオリンは、最後のエピソードで、カーティス、と名乗っていて、そのままギャングに脅されて売人として落ちぶれていくのではなくて、ラッパーとして初めて成功を収めたカーティス・ブロウが(監修に入っていたので)自分を重ねたのかな…と希望を持ったりした。
ほんで、親超えやがな。
それぞれの主人公は親の価値観や期待を超えて、自分の人生を生きた。Hip Hopはディスコ・ミュージックを超えた。Hip Hopもディスコ・ミュージックも今となっては、どちらもとてもかっこいいし、子を思う親の期待も子の反発も間違ってはいない。
けれど、前の世代を超えなければ新しいものは生まれない。それは、正しさとは別の問題なのだ。
うちの親は隠れ毒親である。これ、本当は言ってみたかった。なぜなら、世間的にはとても素晴らしい親に見えるからである。
どちらも大学の教員で、素敵なフランス文化の薫りを漂わせ、知的な会話を楽しむ。平日の参観でも夫婦で来たし、同級生も羨む上品さは少し誇らしいぐらいだった。
その内実、学歴主義に眼を血走らせ、差別思想が脳内に蔓延っている。
私の兄は、〇〇大学(3本の指に入る国立大学)以下は大学ではない、という価値観で育てられ、期待に沿えなかった結果おかしくなり、生死をかけてドロップアウトした。その時から要領のよかった末っ子の私は、息子の代わりになった。
私は大学教授の父を尊敬し、なんでも言うことを聞いた。正確には聞きたくなかった時も多かったが、問題が発生する度に素晴らしい理屈でねじ込められるので、聞かざるをえなかった。
例えば、ピアノを15年間習っていた私は、ピアノで大学に進むことを考えたが、いい大学に進んでからピアノを演奏すればいいと親に言われ、ピアノを諦めた。
そして、私は日本で2本の指に入る大学に進んだが、プライドばかり高いアホの多さに、やめたくなった。違う大学院に進みたいと言ったが、そこは無名の学校だったので親は猛反対した。私は今いる大学の価値がわかっていない、と言われた。そうなのか、と私は、言うことを聞いた。
大学院に進みながらも音楽の仕事を始めた私は、アメリカのバークレー音楽院に行きたいと言ったが、親は当時所属していたジャズスクールに電話をかけ「娘を惑わせるのをやめてください」と言ったらしい。アメリカ行きを応援していた先生たちが急に冷たくなったのは自分の実力が足りないからかと思っていたが、いきさつは後で知らされた。
私が初めて妊娠がわかった時、父は、降ろせ、と言った。シングルマザーだったからだ。でももう30歳のいい歳した大人よ。パートナーができて2人目を欲しいと考えていた時も、私には育てられないから作るな、と言った。
私がある有名大学の教員として就職した時、母は大層喜んだ。「自慢できるわ」と。数年後転職することになり、転職先の候補を伝えると「よかった、次の就職先も人に言えるわ」と言った。
こんなことが繰り返された結果、私は何度も鬱になった。自分を愛せないからである。愛情という名の過剰な指導が日常になった結果、頭の中に、常に批判してくる親がいるのである。パートナーとloveな時も頭の中に現れたりする。
そして、ついに齢40を超えて、反乱を起こした。Get downを見たせいだ。ラッパーたちがFly high!とか言うからだ。
きっかけは娘の中学受験である。歳をとって丸くなり、割と無害な感じの老人になりつつあった両親だが、孫が自分たちの理想の学校に合格できなかったことをきっかけに、また毒を吐きはじめた。
孫が全オチして志望校を下げた時、「入学しない学校を受けさせる必要があるのか?」「特に良くない学校に入れる理由を説明してください。」とメッセージ、手紙が来た。「特に良くない」ってなんやねん。何を基準に言っとんねん。
だんだんと怒りが増してきて、ついにオバはんラッパーは立ち上がった!
娘を愛しているから、どこの学校に行こうと私は受け入れる!目標を持って頑張ったことが大事なのであって、結果だけじゃなくてプロセスを評価する。というか、どんな状態でも私は娘を受け入れ、尊重するんだYO!
私は私と娘が決断に至るまでのプロセスに自信を持っている。だから、老害な批判に自分を傷つけさせないYO!そんなの今後一切受け入れないYO!
そして、あんたたちは悲しい人だよ。人を学歴や偏差値でしか見られないなんて。それこそ「特に良くない」人生だYO!
特にリリックの工夫もない駄文を並べたが、実際は涙も鼻水も流しながらブチギレ、今まで言えなかった「あなた方にされたことは許せない!」と言った。ついに、言えた!
これは後からカウンセラーに言われたのだけど、このことに罪悪感を感じないでください、と。これは愛情が理由だから、だと。
愛する娘を守るために。親を愛するが故、価値観の偏りを教えるために。そして、自分を守り愛するために。
私は息子の代わりだったので、親殺しのプロセスが必要だったのかと考えたりする。
Get downのヒロインの父親は、DVとモラハラに苦しんだ妻が反撃し、実は娘が弟の子供だったという事実を知って自殺する。牧師だったので、神を讃えながら。娘は優しく父親を殺せないから、娘を守るために母親が殺すしかなかったのか。
うちの母親は、散々父親の悪口を駄々流しにしていた癖、私の反撃に、「最近お父さん血圧高いから、許してやって」と言った。知らんがな。孫のおやつのベビースターラーメン食べてるからやろ。少々血圧上がっても死にはせんわ。
傷つきやすく、でも優等生として生きてしまえた私は、今、やっと精神的に親を殺して、自分の足で歩き出している気がする。どこで生きていこうと、どんな仕事をしようと、私は自由なんだ!私は私のままでいいんだ。親の望む私でなくても自分で自分を愛するんや。
もし、隠れ毒親の毒にあてられてる人がいたら、Get downを見て立ち上がることをお勧めする。そして愛にあふれた自分のライムを刻むんだYO! HONA!