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わたしと夜の海

今から20年以上前に見た夢の話なのに、
私はよく覚えてる。

忘れられない、
といった方が正しいかもしれない。

始まりは夢だったのに、
目が覚めても夢の続きのような
そんな体験だった。


20年前の私は
夜遊びばかりしていた。

その日も日中はバイトが忙しく、
それでもバイトが終わってから
夜、遊びに行った。

さすがに疲れてくたくたになって帰宅して、
さっとお風呂に入って
すぐにベッドに横になった。

遊びに行って帰ってきたばかりの興奮と、
疲れからのおかしなテンション。

しかもその日の夜は、
とびきり暑かった。

暑さとおかしなテンションで
私はなかなか寝付くことができず、
ベッドでゴロゴロと寝返りをうっていたが、
いつの間にかうとうとと眠ってしまった。



夢の中で私は夜の海にいた。

夜の海に肩まで浸かって、
誰もいない岸の方を眺めていた。

「あぁここは〇〇海岸だ」
と夢の中の私は思った。

子供の頃から夏になると遊びに来ていて
親しみを持っていたその海岸は
潮の流れが複雑で、
海底も遠浅だと思うと急に深くなったりする危険な海岸だった。

遊泳禁止のエリアも多くて、
過去には流されて亡くなってしまった人も多いことで有名な海岸だった。

夢の中の私は暗い海に肩まで浸かりながら
誰もいない海岸をずっと眺めていた

月が出ていて、
月がきれいだと感じると同時に、
どこか不気味さも感じさせる、夜の海。

そんな夜の海に肩まで浸かりながら
ぼんやりと岸の方を眺め、
そしてふっと沖の方を振り返ると、
そこには髪が長い、見知らぬ女性がいた。

その女性もまた、
肩まで海に浸かり、
私を見ながらニタニタと笑っていた。

「この人は誰だろう」
と思うと同時に、なぜか
「あ、やばいな」
という勘が働いた。

その髪の長い知らない女性は、
よりいっそうニタッと笑うと
同時に私の腕を掴み、
どんどん沖の方へ引っ張って行った。

私は逃げようと必死に泳ぎながら
腕を振り切ろうともがいていた。

だけどその髪の長い知らない女性は
すごい力で私の腕を掴み、
ニタニタと笑いながら
どんどん沖の方へ向かっていく。

振り切ろうと思っても
私の腕むんずと掴むその手は
なかなか振り切れない。

なんとか逃げようと必死にもがきながら、
私は
「あ、これは夢の中なんだ。
目が覚めたらなんとか逃げられるかもしれない」
と気がついて、
なんとか目覚めようと無理やり目を開いた。




「あぁやっぱり夢だった、よかった。」
と見慣れた天井を見た途端にホッとした。
汗びっしょりになっていたけど、
目が覚めた安心感で気にならなかった。

ホッとしながら寝返りを打った
途端に私は凍りついた。

薄いブルーの絨毯の上
四方八方に広がる長い髪。

絨毯から顔の上半分だけを出した
夢の中の知らない女性が
じっと私を見ていたからだ。

その女性と目が合った瞬間
「まずい」
と私は感じて、
壁の方に寝返りを打ってぎゅっと目を閉じ、
無理やり眠った。


朝になって目が覚めると、
いつもの見慣れた、
なんの変哲もない私の部屋だった。

ベッドから降りて、
いつもと同じ薄いブルーの絨毯の上を
私は立ち上がって歩き、部屋を出た。

あれはなんだったんだろう。
あの髪の長い女性は誰だったんだろう。

夢だったんだろうか。

それとも...。


#わたしと海
#夏の思い出
#怖い話


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