ミャンマーの医療崩壊
昨日の記事で、クーデター&コロナ禍のミャンマーで、もともと脆弱な医療体制が、崩壊といえる状況に陥っていることを書いた。
医療が立ち行かなくなっている原因のひとつは、クーデター後の抗議活動の一環で、公立病院の医療従事者がボイコットしたこと、その後に軍が、医療従事者を拘束・銃撃していることだと言われている。
今日は、もうすこし具体的な状況について、現地からの情報を交え、考えてみたい。
ボイコットした医療従事者が、市民の命を救う
まず、どのくらいの医療従事者がボイコットしているのかは、数字的な情報が得られず、よくわからない。
ただ、ボイコットした医療従事者たちは、デモに参加して国軍から銃撃され負傷した市民たちを命がけで治療している。その様子は、こちらに詳しい。
記事中、取材を受けた匿名の医師は、今後は慢性期の患者もみたいこと、医療従事者ネットワークで全国的に医療行為を行っていきたいとの展望を語っていた。
その後も、ボイコットした医師たちが、できるだけ多くの患者を治療しようと奮闘している様子は、場所が特定できない形でSNSに投稿され続けている。
こちらはチン州で、弾圧をかいくぐり手術する医療従事者たちだ。5月26日だけでも、3件の手術が行われ、30人の命が救われたという。(トップ画像はここから借用させていただいた)
逮捕・銃撃される医療従事者たち
一方で、上記ドットワールドの記事には、”NGOの調査によると、医療施設や医療者、救急車などへの襲撃は4月12日までに109回にのぼり、10人が殺害された”、とある。
ボイコットで軍への抗議を示す医療従事者、そして、デモ隊の治療にあたる医療従事者や医療ボランティア団体が、国軍の攻撃の標的となっている。
最大都市ヤンゴンでボランティア救急隊員3名を国軍兵士が殴打する映像は、日本でも報道された。
さらに、多くの医療従事者や医療ボランティアに逮捕状が出ており、彼らは、隠れての医療行為、逃亡を余儀なくされている。
新型コロナ第三波で、医療従事者が圧倒的に不足
そして今、もともと日本の1/3以下の医師数のミャンマーで、新型コロナの感染爆発が起き、医療崩壊といえる事態となってしまった。
ついに、国軍の報道官ゾウミントゥ氏は、「コロナ治療にあたれる医療従事者やボランティアを募集する」と訴えかけた。
しかし、現地メディアは、この言葉を、医療従事者やボランティアに銃を向けてきた国軍の映像とともに伝えている。
国軍は同時に、「酸素は十分にある。慌てないように。必要のない購入で不足が起きてしまう」とも伝えている。
一方で、市民の間で、国軍が一般市民から酸素を奪っているとの風刺画が拡散され、市民がまったく国軍を信頼していない様子が伺える。
医療崩壊は、信頼の崩壊
国軍の言う通り、病院にたよらず自宅で治療する市民が念のためにと酸素を購入し、不足している可能性もある。
「酸素は十分にある」という言葉を好意的に解釈すれば、不要な酸素購入を抑え必要な人に行き渡らせるために、軍が酸素を一括管理しようとしている、とみることもできる。
しかし、国軍は、酸素充填工場に政府系病院だけに供給するよう脅し、酸素充填に並ぶ一般市民に銃口を向けたという。
国軍が抵抗する市民を暴力で抑えようとする、暴力を受けた市民は国軍を信頼しなくなり言うことを聞かなくなる、国軍は市民に言うことを聞かせようと、さらに暴力的になる、という構図だ。
この負のスパイラルの延長に、今の医療崩壊があるように思える。
だとすれば、国軍と市民の闘いに市民が勝利するか、国軍が暴力を止め謝罪し、両者がもう一度、信頼関係を構築できる状況にならなければ、医療は立て直せないのではないか。
いずれにしても、これだけ弾圧されながらも医療行為を続けるミャンマーの医療従事者たちを、心から尊敬する。
彼らが、堂々と医療行為を再開できる日が来ることを願って止まない。
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