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女性のがんばりを前提にしないで欲しい

前職の話だけれど、私はいわゆる「働く女性を応援」する企業にいた。どういのかっていうと、フレックス制度があり、時短勤務が許されて、子どもが熱を出した時なんかは、在宅勤務でもOK。
社員の半数以上は子持ちのママで、ママ向けのメディアや会員組織があり、女性のキャリアを育成するための研修なんかもやるっていう会社だった。

前々職で時短勤務になってから閑職に飛ばされ、見事なまでのマミートラックにはまってた私は、「やりがい」と「子育ての両立」を目指して転職した。よっしゃ、これからやってやるぜ!とやる気満々だった。

入社してしばらくすると、勤務時間内に仕事が収まらないことに気づく。仕事は持ち帰ってOKだったから、17時に会社を出て、子供を迎えに行き家事をして21時に寝かせてから、ふたたび仕事をする。日付が変わるまでする。
それが普通だった。他の女性社員もそうしていた。

あれ、なにかおかしいぞ?て思いながらも、
・他の男性社員や独身女性たちの残業時間だって毎日2~3時間普通にしてるじゃないか。それと比べたら時間数的には同じだ。
・仕事で特別扱いは受けない、これは私が望んだことじゃないか。
そんなふうに自分を納得させながら走った。

会社が提供する研修プログラムでは、子育て中のキャリア女性を対象に、「働くことに向けての基盤力」というキャリアを作る前段階での力を備えるための講座があった。

それは、「時間管理能力」や「上司や同僚とのコミュニケーション力」「夫婦での話し合いの進め方」といったハウツーの他に「なりたい自分を思い描く」といったことに重きを置いて設計されていた。

こういった講座に来る人たちは驚くほどに志が高い。「人生100年時代。私は100歳まで仕事がしたい」「仕事は私が私でいられる場所。お金じゃない」といったことを、本気で想って言葉に出す。

それはもうキラキラしていて眩しかった。でもその講座を提供する会社に所属する私は、もうそんなふうに言えないほどに疲れていた。

私が仕事をする理由の1位は「お金」。子どもを大学に行かせて、家のローンを払い、老後に心細くならない蓄えをつくるために働いている。
2位が「おもしろいから」だ。社会に出て仕事を持つことは生活にハリがでる。だからおもしろくない仕事に回された私は転職したのだ。

私は、仕事をしている大半の人の働く動機は「生活費を得るため」だと思っている。そしてそれに男女の差はないはず。

でもそれが、どうして女性が働いて、ましてやキャリアを得たいと望む場合は、それ以外の「理由」を求められるのだろう。
夫や会社への根回しも、時間のやりくりも、なんで女が考えないといけないんだろう。

そして、それを提供している会社が、社員のがんばりの上で胡坐を書いて、マネジメントもなく自己裁量に頼っていることに、どうにもこうにもむなしくなった。
(ちなみにこの会社はボーナスがなかった。既婚女性社員が多いせいか「賃金」について会社の責任が軽薄だった気がする。お金よりもやりがいと成長の方が価値がある的な風潮があった)

3年目にプツンと糸が切れて、辞めてしまった。
幸いすぐに次の仕事が見つかり、そこにはフレックス制度はないけれど、きちんと定時で仕事を終えられる。変な同調圧力もない。

「ママMBA」とか「子育てしながら起業」とか、そんなの見るたびこの人は「がんばり搾取」にあってないかと心配になる。余計なお世話なんだろうけど。

がんばる女性を「やりがい」や「成長」という言葉で利用しようとする会社は本当に許せない。頑張り屋の女性にはほんとに気を付けてほしい。
これが一番言いたかった。

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