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《神話-16》悲劇の王オイディプス

こんにちは。
Ayaです。
今日はギリシア神話最大の悲劇・オイディプスにつたいて取り上げます。

アレスの呪いによって、セメレー(ディオニューソスの母)やアクタイオン(アルテミスの裸を見て殺された人)の悲劇がおきたテーバイ王家でしたが、その悲劇はまだおわりませんでした。

オイディプス

テーバイ王ラーイオスは「子どもに殺される」という予言を受けていたため、子どもを作らないように警戒していました。しかし、ある夜酔って妃のイオカステーを襲い、男の子が生まれてしまいました。ラーイオスはこの赤子の脚にピンを刺し動けないようにした上で、部下にキタイローンの山中に捨ててくるように命じました。
部下は赤子を可哀想に思い、キタイローンの山中にいた羊飼いに預けて遠くに運んでくれるよう頼みました。羊飼いは子どもに恵まれていなかったコリントス王のもとに赤子を運び、コリントス王はこの赤子を養子にすることを決めます。ピンが刺さっていて脚が腫れていたため、『オイディプス(腫れた足)』とこの子を名付けました。
オイディプスは立派な青年に成長しましたが、コリントス王の実の子ではないと中傷されました。コリントス王に尋ねても満足する答えを得られなかったオイディプスは、予言で有名なデルホイのアポロン神殿を訪れます。
ここで衝撃的な予言を受けます。
「故郷に戻ってはならない。父親を殺し、母を犯すであろう」
というものでした。オイディプスはコリントス王夫妻の子であるとまだ信じていたので、この予言に恐怖し、コリントスには戻らないと決めたのです。そして、コリントスと反対側のテーバイに向かうことを決めます。悲劇を避けたつもりのこの選択は、最初の躓きにすぎませんでした。

スフィンクス

オイディプスはテーバイへの道の途中の三叉路で、馬車と出会います。その馬車の御者と道を譲譲らないで争いになり、自分の馬を殺されてしまいました。これに怒ったオイディプスは馬車ごと谷底に落として逃亡してしまいました。この馬車の主こそ、実父のラーイオスだったのです。しかし、オイディプスは相手の名前を知りませんでした。
王をなくしたテーバイでしたが、さらなる不幸が襲っていました。テーバイへの道の途中に『スフィンクス』という怪物が現れたのです。
この怪物は顔は女性、下半身はライオンという姿で、通りがかりの旅人に謎かけを行い、答えられないと喰らってしまうというものでした。旅人みなこの怪物に喰われてしまったので、テーバイは孤立してしまったのです。
ラーイオス王の死後、政務を執り行っていたイオカステーの弟クレオーンはスフィンクスの謎を解けた者に、王位とイオカステーを与えると宣言しました。
殺人現場から逃亡したオイディプスはスフィンクスの謎かけに興味を惹かれ、挑むことにします。
オイディプスがスフィンクスの前に現れると、スフィンクスはいつものように謎かけます。
「一つの声をもちながら、朝には四つ足、昼には二本足、夜には三つ足で歩くものはなにか?」
オイディプスは少し考えたあと、こう答えます。
「答えは人間である。人間は幼少期には四つ足で歩き、青年期には二本足で歩き、老いては杖をついて三本足で歩くからである」

ギュスターヴ・モロー
『オイディプスとスフィンクス』
怪物スフィンクスは時代が降るにつれ、男を惑わすファム・ファータルの面が強調されるようになる。本作でも秋波を送っているように描かれている。

正解されたスフィンクスは、面子を潰されたと崖から飛び降りて自殺してしまいます。
こうして、スフィンクスを退治したオイディプスは、テーバイ王位とイオカステーとの結婚を手に入れました。夫婦仲はよく、二人の間には四人の子どもたちが生まれましたが、二人は実の母子であり、許されざる関係だったのです。

晩年のオイディプス

オイディプスが即位してから、テーバイは飢饉や疫病に苦しめられました。オイディプスは妻の弟クレオーンに命じて、デルホイの神託を受けさせます。その神託は「前王ラーイオスを殺害した犯人を捕らえ、テーバイから追放せよ」との内容でした。
オイディプスは早速、最大の予言者テレイシーアスを召し出し、問い詰めます。しかし、テレイシーアスは真実を伝えることは憚られるとなかなか口をわりません。
テレイシーアスの態度に激怒したオイディプスでしたが、前王の死の調査をするうちに、三叉路での出来事を思い出します。そして、自分が前王殺害の犯人であり、愛する妻イスカリテーは実母であるという驚愕の真実に気がついてしまいます。
その前に真実に気がついていたイスカリテーは、首を吊って自殺してしまいました。オイディプスはイスカリテーの遺体にすがりながら、自らに罰を下しす宣言をします。両目を針でついたのです。
こうして盲目となったオイディプスは、前王殺害の犯人としてテーバイを追われます。四人の子どもたちのうち、二人の息子たちは彼に石を投げて罵詈雑言を発しましたが、二人の娘・アンティゴネーとイスメーネーは父親を見捨てられないとついていくことに決めました。
盲目のオイディプスと娘たちは諸国を放浪し、結局アテナイのテセウスの庇護のもとで生活するようになります。
ある日、オイディプスはテセウスや娘たちもの前で地中深くに飲み込まれていきました。こうして、オイディプスは世を去ったのでした。

シャルル・ジャラベール
『オイディプスとアンティゴネー』

オイディプスの死後

オイディプスの死後、二人の娘たちは故国テーバイに戻りました。しかし、二人の兄たちは対立して片方の兄は追放され、納得のいかない彼がテーバイ王位を取り戻そうと他国の軍を借りて攻め込んでいる状況でした。
二人の兄たちは決闘しましたが、相討ちとなり、戦乱は終わりません。ついに王となったクレオーンは敵の埋葬を禁じました。しかし、その命令は実の兄を亡くしたアンティゴネーには耐えられないものでした。ついには夜人目を盗んで、兄の遺体を埋葬しようとしますが、捕まってしまいます。
クレーオンに尋問されたアンティゴネーは「死者に敬意を払っただけだ」と毅然と反論します。アンティゴネーの恋人でクレーオンの息子・ハイモーンの懇願も虚しく、アンティゴネーは生き埋めの刑とされ、地下牢に閉じ込められます。
ハイモーンがアンティゴネーを救おうと、地下牢を解放しますが、すでに彼女は縊死してしまっていました。恋人の死に嘆き悲しんだハイモーンも自殺してしまいます。
さらに姉の跡を追った妹のイスメーネー、息子の死に失望したクレーオンの妻も自ら命を断ちました。
こうして、血塗られたテーバイ王家は途絶えてしまったのです。

以上の神話から、精神学者フロイトは"母親を手に入れようと父親に強い対抗心を抱く主に男児に見られる神経症"を『エディプスコンプレックス』と名付けました。
しかし、神話を細々と読むと、オイディプスは運命に翻弄されたひと(父親殺しは弁護できないけど)という感想です。反対の『エレクトラコンプレックス』のほうが強烈なので、また取り上げたいと思います。
次回は《無駄話》を更新する予定です。





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