見出し画像

古畑任三郎の思い出

古畑任三郎の再放送を録画し忘れてる。
中森明菜の回はもちろん、鶴瓶師匠の回も終わってしまったらしい。

あー後悔。古畑任三郎は、やっぱシーズン1が面白いから、全部録画したかったな。
いやまぁ、シーズン2も好きなんだけどさ。

数年に一度しかないチャンスを逃してる感じ。
来週からはトライしたい。

我が家は新聞をとっていないので、テレビ欄をチェックする機会はほぼない。

今回の古畑任三郎の再放送の件も、母に教えてもらって知ることができて、
“あやか、古畑任三郎の再放送始まったら教えてって言ってたよね?今からやるよ”
と火曜日の午後2時頃ラインが届いた。

お母さん!火曜は私生放送なのよ!!!
今言われても無理なのよ!
録画しといてほしいけど、それはさ、シーズン何なの?と思って
「あのさ、犯人中森明菜?」
って聞いたら、
「そのようだね」
ってさ!それシーズン1じゃん!!
シーズン1の中森明菜の回は本当に思い出深いからよく覚えててさ。

あー見たかったな。見たかったけど、タイミング的に仕方ないから
「お母さん覚えてないと思うから、中森明菜の回みるといいよ。本当面白いから」
ってLINEを返して放送に戻る。


忘れもしない。
あれは私が小学三年の時だった。
我が家は、なぜか、夜更かしがOKの家で、
なんなら、私は小さい頃から、両親と一緒にドラマを見ていた。

あすなろ白書も、素顔のままでも、振り返れば奴がいるも、ダブルキッチンも、リアルタイムで観てた。
私はその時間が大好きだった。

で、父が、母が、
「すごいドラマが始まる!」
「だって、あの田村正和だよ!」
「あんなにハンサムな人が警察の役で、サスペンスだって」
「わー楽しみ!早く帰ってこよう!」

みたいな感じで、その、ドラマが始まるのを楽しみにしていた。

「きっとね、あやちゃんも観れると思うよ!怖くないと思う!」
と言って、おしえてくれた、そのドラマこそが
“古畑任三郎”だ。

水曜日の9時だったと思う。
予定通り、父も帰ってきた。
父と、母と、3人で、ドラマが始まるのを待った。

真っ黒の画面。
印象的なオープニングテーマ。

ドラマの主題歌って、歌じゃないこともあるんだ!って初めて知った。
ダブルキッチンは、プリンセスプリンセスが主題歌だったのに。
歌がないと、カラオケで歌えないなと思った記憶まで鮮明だ。

息を止めるように、静かに観たような気がする。
途中父が、少し怖がってた私を、茶化したかもしれないけど、事実かどうかはわからない。
記憶の彼方に追いやってる。

わたしがはっきり覚えているのは、

中森明菜が、漫画家だったこと。
中森明菜が、人を殺したこと。
中森明菜の家に地下室があったこと。
死体をそこに隠したことだ。

はっきり覚えているって言っても、
今回の再放送を見逃してるから、違ってるかもしれないね。
小学校三年生の私が、解釈したことが、上記の通り。って感じだ。


私は子供ながらに怖いなと思った。
お母さん怖くないって言ったけど、怖いじゃん。
何が怖いって、死体を地下に隠したこと。
この人、地下に死体があるのに、その上でよく眠れるなぁと。
眠れないよ、私なら。怖くて死体の夢を見るし、オバケが出るよ、絶対に!

小さな声で、ボソボソ喋る、中森明菜は、すごくミステリアスで、それは演技に思えなかった。
全てが本当のことのように見えた。

ドラマは、ドラマであるということが、よく理解できる年齢になっていたのに、
古畑任三郎は、やたらとリアリティをもって、私の中に入ってきた。


どうやって、トリックを見破ったのかとか、
古畑がなんて声をかけたのかは、全く覚えていないけれど、ドラマが終わって、両親が偉く感動していたことが思い出される。

「これはすごいわ!すごく面白い!」
特に父は、こういう時に、感情表現をしっかりするタイプで、ドラマの面白さにものすごく感動していたのと同時に、
早速古畑の真似をした。
世界最速だったんじゃないかな。古畑のモノマネでは。ちっとも似ていなかったけど。

それから毎週みて、眠い時は録画を頼んでまで観た。全ての回を見たけれど、印象的なのは、
この、1話目の、中森明菜が犯人の回と、鶴瓶がめちゃくちゃポンコツ犯人だという回と、木の実ナナの回だ。

ドラマはみなさんがご存知の通り大ヒットで、
シーズン1から、2、3、そしてスペシャル版と、たくさんのヒット作が生まれて、
私は歳を重ねながら、その全てを見た。
見逃した話は、1話もない。


シーズン3になる頃には、うちの父は、家族とドラマを見ることなんてなくなって、
家にもろくに帰ってこなくなっていたはずだけど、
それでも母と2人で見た。
“面白いね”
“次の犯人この人なんだね”

って。2人で声を掛け合って、古畑はたのしいねって。最高のドラマだね!って言って観たのだ。

だから、このドラマが特別だ。

大人になって、たくさんの“古畑ファン”に出会った。
彼らは、古畑のファンだから、何でもかんでも知っていた。ドラマの裏話まで知ってるような人もいた。

私は、古畑のファンだけど、そこまでは詳しくなくて、
詳しい人と話してると
「まだまだだな!」
なんて言われることもあった。
でも、それで良い。小3の頃の記憶を辿りながら、頼りない知識で、彼らと話しているのが楽しい。

だって、私にとって古畑は、面白いドラマ作品であるのと同時に、
“両親との思い出が詰まった作品”だからだ。


これは面白い作品だ!と喜んでる父の姿が嬉しかった。
家族の前で、古畑のモノマネをしちゃう父のそういうところが好きだった。
それを一緒に笑ってる母の横顔が可愛かったし、
母がドラマを楽しみに、Gコードを追いかけて録画してる姿が忘れられない。

そういうの、ぜんぶひっくるめて、
“我が家の古畑の思い出”だ。

………

中森明菜の再放送があった、数日後に母に会って、
古畑の話になった。
「やだ!あやか、みてないのぉ?ほんっと、今みても最高だよ!もうね、色々思い出すんだけど、どの回も殺人事件なのに笑えるのよ〜!来週から見るといいよ!」
と笑いながら教えてくれた。

1人で、再放送の時間に、いそいそとフジテレビをつけて、古畑任三郎をみながら、クスクス笑う母を想像した。

あの時と母を取り巻く環境がかわって、
少し、寂しくなったけど、
歳を重ねても、そして、1人でみても面白いんだよね。わかる。
あの時の思い出も混みでね。
面白いんだよ。

来週こそは、録画して私もみるんだ。
来週月曜日の犯人は、小林稔侍らしい。
なんか、時代を感じるね。

そうだ、小3になった長女を誘って一緒にみるのもいいかもしれない。

あの時小3だった私のように、
一緒に面白がって観てくれたら、うれしいな。

いいなと思ったら応援しよう!