広報がリモートでも報道番組で紹介してもらうための映像撮影ノウハウ
こんにちは、タカダアヤカです。
突然ですが広報の皆さま、フルリモート全盛のさなかでテレビ取材はどうされてますか?
会社が新サービスをリリースしてせっかくテレビからの取材依頼まで来たのに、自分は基本リモートだし、出社できてもオフィスへの来訪者はお断りだし、取材対象者とうかつに接触できないし……てんやわんやしてたら取材が成立しなかったよ!
なんてこともあるのではないでしょうか。
いまはテレビクルーも取材に行くのが難しい状況です。そんな中で広報側から「今回のサービスの映像です!」と報道番組さながらの映像を渡せたら強いですよね。
え?どうやって、って……??
取材対象者に撮影協力を依頼する道を探ってみませんか。
もちろん超絶難しいですが、取材対象者・テレビクルー・そして自分自身の身を守ったうえで自社の取り組みを広く紹介してもらえるチャンスが目の前にあるのならばチャレンジしないわけにはいきません。
今回は私の経験をもとに、
・報道番組のコーナーはどのようにできているのか
・取材対象者にどう伝えるべきか
・報道の現場で使われているカメラワーク
の3点を通じて「広報がリモートでもサービスの紹介につなげる」映像撮影ノウハウをお伝えしたいと思います。
せっかく取材依頼が来ても「フルリモートなのにどう放映までつなげたらいいか分からない!」とお悩みの広報さん、「オフィスが来訪者お断りだから自分で撮影しなきゃだよ!」という広報さん、「社員やステークホルダーに撮影をお願いしなきゃいけないけど、どう説明したらいいの?」と頭を抱える広報さん……一緒に乗り越えよう!!!(´;ω;`)
▼はじめに:私は、考えが甘かった
いまは誰もがスマホで高精細の映像を撮れる時代。取材対象者に概要とちょっとしたポイントさえ伝えれば報道番組でも使ってもらえる映像を渡せるはず……と思っていました。
しかし、それはとても認識が甘かったのです。
最終的にディレクターさんのご尽力で無事に別日での放映に至りましたが、私の認識が甘かったがゆえに撮影協力してくださった取材対象者さまのお力添えを無駄にしてしまう一歩手前でした……。
放映後、そのディレクターさんに「素材が足りないってどういうことですか?」を根掘り葉掘り聞きまくったお話をもとにこのnoteを書いています。
▼報道番組のコーナーはどのようにできているのか
報道と言っても内容は多岐にわたりますが、なんかしら例えがあると解像度が高まると思うので、ここでは「小学生陶芸家の作品がCtoCプラットフォームでバカ売れ」というほのぼの架空ニュースをもとに解説します。
①5秒1シーンの集合体でできている
普段あまり意識していないですが、テレビは5秒ごとに映像(シーン)が切り替わります。つまり、映像の種類にも結構なバラエティが求められるのです。そう思うと、同じような角度からの映像ばかり撮影してもらっても使いにくいということになってしまいますね。
②人物の説明→人物の行動→人物の言葉 でひと固まり
大前提として、当事者にとっては見知った人でも、視聴者からすると「見知らぬ一般人」です。サービスを紹介するためになぜ取材対象者が出てくるのか、映像で説明する必要があります。なので、順を追ってポイントを押さえた撮影が求められます。
普段何をしている人なのかを表す映像
→その人が実際に新規サービスのために行動している場面
→サービスになぜ携わっているか?やってみてどうか?など話す場面
サービスのためにアクションを取っている場面だけだと説明不足になってしまう、ということですね。
③サービス紹介の場合、利用者と提供者の両方が必要
サービスは、利用する人と提供する人がいて初めて成り立ちます。双方の声を同時に伝えることで初めてサービスの実態を満遍なく伝えられることとなります。
①×②×③の掛け算でどんどん放映時間が長くなる、と考えましょう。
▼取材対象者にどうお願いするべきか(マインドセット編)
……というようなことは広報が頭の片隅に置いておくべき話。ここからは、「取材対象者の人にどう伝えれば、求められている映像をうまく撮影してもらえるか」という観点で書いていきます。
【撮影時のモチベーション】運動会当日のホームビデオ
取材対象者にとっては何気ない一コマでも、それを知らない人にとってはすべてが新たな情報。密着ドキュメンタリーを撮影するような気持ちで臨んでもらうのがよさそうです。
イメージとしては、「離れて暮らす両親に送る、子供の運動会当日のホームビデオの撮影」がしっくりくるかもしれません。
朝のお弁当づくり、はしゃいで出かける子供、入場式の様子、家族団らんのお弁当タイム、子供が競技に参加する様子、友達と笑う子供……自分たちにとっては日常の延長線でも、離れて暮らす親御さんにとってはすべてが貴重な一コマです。
"自分たちの日常に興味のある人たちに、様々な場面と角度から状況を伝える"。そんなホームビデオを撮影する気持ちで撮影するといいんじゃないか、というディレクターさんの言葉に、タカダは膝を打ったのでした。
【肝に銘じること】広報担当者は普通の人よりテレビに詳しい、という自覚
とはいえ「流れで撮影してください~」と雑に終わらせていいわけではありません。なぜなら、普通の人が必ずしもテレビの流れを熟知しているわけじゃないからです!
広報担当者は取材概要を聞けば必要な撮影場面やシチュエーションをだいたい頭に思い描くことができますが、テレビ取材慣れしていない方がテレビ用の映像を撮影するなんて状況はほぼないはずです。
取材対象者に撮影を依頼する際は、
・放映のあらすじをなるべく細かく伝える
・あらすじを場面に分けて、「どの場面でどんな映像が必要か」伝える
・取材の見どころ(どこに本質的な関心を持たれるか)を伝える
・絶対欲しい場面や欲しい角度の映像は図解する
・撮影当日は電話フォローを欠かさない
を抑えておくとよい撮影をしてもらえると思います。
そのうえで、「とにかく長く、たくさん撮ってください!」「どこで誰が何をやっているか分かる映像にしてください!」とことあるごとに伝えるのが大事そう。
つまり伝えたいのは、「共通認識を形成するために撮影用マニュアル作った方がいいよ」「フォローアップは欠かさずにね!」ということです。
▼報道の現場で使われているカメラワーク(テクニック編)
撮影に取り組んでもらううえで、まず重点的に意識づけしたいのは「とにかくいろんな角度から、いろんな場面を撮影する」ということ。
サービスの本筋に関係ない映像でもいいんです。例えばサービス提供側が準備をする映像だってその人の「紹介」にあたります。仕事終わりの雑談の中にその人の仕事の矜持が現れるかもしれません。とにかく長~く、そしてたくさ~ん映してもらいましょう。
そのうえで、現場でどんな撮影技術が使われているのか??具体的に伝授してもらったものをご紹介。具体的な撮影依頼に落とし込むとグッと紹介しやすい映像になるかも!?
【基本テクニック】10-3-10のルール
一つのシーンを10秒撮影したら3秒かけて次のシーンに移動し、また10秒とる……というルーティンでの撮影をお願いするといいでしょう。前述の通り、本来であれば5秒で次のシーンに移るのですが、手振れやらなんやらで最初と最後の数秒は使いにくいとのこと。
ただ、静止画やコメント撮りの時はこれに限りません。
・「物撮り」と呼ばれる動かないものを単体で撮る場合は10秒静止。
・コメントは15秒を目安に。コメントそのものは15秒1センテンスを意識。
ポイントは聞き方を変えて何パターンか撮影することです。
(でもこの聞き方が難しい……!ディレクターさん、コツ教えて……!!)
ちなみに、とにかく連続で長回しで撮るのがポイント。特徴的な音や声がある場合は、音声だけ抽出して使いやすくなります。
【テクニック①】見どころが1つの画面に収まった映像を必ず撮る
ニュースの場合は「○○が新しく~~を始めた」「XXなのに■■」など【新しい取り組み】【物珍しい取り組み】が注目される場合が多いです。それがぱっと見で分かる映像は必ず一つは欲しいところ。今回であれば「小学生なのに陶芸(しかもプロ並み)」が見どころなので、小学生が一心不乱に陶芸している様子や作品とともに映る様子を収めると良いかもしれません。
【テクニック②】引き/寄りを駆使する
全体像はもちろん、手元や表情にグッと近寄ることも魅力的な映像作りにつながります。例えば細かい作業をする人の紹介であれば、全体像を撮った後に手元を撮影するとその人が何をしているのか具体性がより増しますね。
【テクニック③】思いつく限りいろんな角度から撮影
引き/寄りと合わせて、いろんな角度から撮ることも大切。同じ場面であっても正面だけでなく、後ろや斜めからも撮影することで、パート同士をつなぐ映像が増えます。テレビはあくまで映像ありきなので、ナレーションひとつ入れるにも何かしらの映像が必要。一見無駄にも思えるかもしれませんが、とにかくいろんな角度からの撮影をお願いしたいところです。この時も「10-3-10」の意識が大切です!
【テクニック④】素早く振る(上級編)
レポーターが「ご覧ください!小学生がプロ並みに作陶しています!」と話したあと、作陶中の小学生にパッと被写体を切り替えると、なんかすごみが増す感じがしませんか?くぎ付けにしたい対象物があるときに使うと有効です。ただこれは動きのキレの良さが求められるうえ、切り替えた後にカメラをピタッと止める必要があるので結構難しいかも。
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というようなテクニックを場面ごとにお願いすると、撮影する方も楽だし、テレビ局の方も編集しやすいのではないでしょうか!
▼うっかりクリティカルミスに要注意
撮影のマニュアルをいくらカッチリ作っても、うっかりやっちゃうと「うーん、使いづらい……」となってしまうポイントもあります。私の経験上「取材対象者への説明は絶対必要!」な部分をお伝えします。
《クリティカル度:大》タテ画面で撮っちゃう
テレビは横画面なので、いつもの癖でタテで撮っちゃうと画面の両脇に謎の余白が生まれてしまうことに。「テレビ画面は横長なので、同様に横長で撮影してください!!!」と念押ししておきましょう。
《クリティカル度:大》LINE経由で動画共有
LINE経由で動画をやり取りするとmovからmp4に変換され、画質が大幅に落ちます。一方でテレビは鮮明さが命!動画のやり取りはストレージ経由かAir Drop経由をお勧めします。
《クリティカル度:中》体の一部が不自然に画面から切れちゃう
変に頭頂部や手先・足先が画面から切れてしまうのは縁起が良くないので避けた方が良いでしょう。ただし、顔をアップにするときなどはその限りではありません。スマホ写真の解説にはなりますがこちらが参考になりそう。
《クリティカル度:中》大事なものがテロップやワイプにかかっちゃう
寄りで撮影するのはいいけど、寄りすぎるのはよくない。なぜならテレビにはテロップやワイプといった文字や別映像が被せられる場合が往々にしてあるからです。なので大事なものは真ん中に映してもらうようにしましょう。
▼辛い時だからこそ、工夫で情報を届けよう
人と気軽に会うことが叶わない、そんな状況が長く続きそうですね。
ただでさえ辛いニュースで溢れているなか、明るいニュースや未来を感じるニュースを届けたくても物理的な障壁が邪魔をする状態です。
それでもこの状況に立ち向かい、テレビの向こうの誰かに情報を届け続けたいと考える全ての人々に、このnoteを役立ててもらえることを願います。
最後になりましたが、このnoteを書くきっかけをくださった某番組ディレクターさま。お忙しいところご協力頂き本当にありがとうございました!
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