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「もうがまんしなくていいんだよ。声をあげていいんだよ。」


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         藤木 和子さん


お会いしてから話しの最後まで、明るく晴れやかとした笑顔で、そして強く思いを語ってくださいました。藤木さんは、聞こえないきょうだいをもつSODAソーダの会の代表を務めるほか、弁護士、NPO法人インフォメーションギャップバスタ―の理事、そして大学で教員として学生に教えること等、多岐にわたる活動をされています。


■「もうがまんしなくていいんだよ。声をあげていいんだよ。」

今回のインタビューで印象に残っていたワンフレーズです。このフレーズは、様々な角度から捉えることができると思います。

それでは、藤木さんの想いを紐解いていきます。

■多岐にわたる活動のなかで、軸となるものは?

藤木さん:“ SODA(ソーダ) ” という言葉をもっともっとみんなに知ってほしいことですね。


ちなみに、SODA(ソーダ)とは、はじめは、アメリカで作られた略語だ。「Sibling Of Deaf Adults/Children(シブリング・オブ・デフ・アダルト / チルドレン)」の頭文字をとった言葉で、「聞こえないきょうだいをもつ、    “ 聞こえるきょうだい ”」のことだ。

藤木さんが初めて、SODAという言葉を知ったのは、弁護士登録を行った2012年頃でした。「SODA」「CODA:聞こえない親を持つ子ども(コーダ/ Children of Deaf Adults)」「GODA:聞こえない祖父母を持つ孫(ゴーダ/ Grandchildren Of Deaf Adult)」「SPODA:聞こえない配偶者をもつ配偶者(スポーダ / Spouse Of Deaf Adult)」等の言葉を知ったのです。



そして、藤木さんは、聞こえない弟を持つ聞こえるお姉ちゃん

これまで、聞こえない弟とは、たくさんのけんかをしたそうだ。

もちろん、きょうだいといっても、仲良しきょうだいから敵対関係にあるきょうだいまで様々な関係性はあるときょうだいのいる私も考えさせられてしまう。

藤木さんは、聞こえない弟とのけんかを通じて、聞こえるお姉ちゃん、そして聞こえない弟の間に差があると感じ、きょうだいとして聞こえる、聞こえない関係なく対等でありたいと強く感じたという。聞こえない人の場合、コミュニケーションを工夫すれば、対等であるはずだと。

そして、こうした思いは、なかなか親にも含めて周囲に伝えることができず、過ごしてきたそうです。



なぜ周囲に伝えることができなかったのだろうかーー?


藤木さん:聞こえるお姉ちゃんとしての立場にもいろいろな複雑な思いはあるのです。自分の親や、一般的に障害のある子どもを持つ親の立場を考えたときに、どうしても、障害のある子どもを優先しなくてはならない状況にあります。わかります。大変な状況を見ていて、心身ともに健康である私は、どうしても「がまん」をするしかない状況になってしまうのです。



親にも伝えたくても伝えられない。聞こえるお姉ちゃんと聞こえない弟と比べたら、聞こえるお姉ちゃんの方ががまんすれば、何とかなってしまうこともある。そうした難しさが聞こえるきょうだいにはあると思います。だからこそ、メンタル面でのケアが大事だと思っています。


インタビュアーである私は、聞こえない立場ですが、話を聞いていて、何となく共感できる部分がありました。なぜだろうと考えたときに、わたしにも聞こえないきょうだいがもう一人いるからです。どうしても障害の程度や発育状況に応じて、親がかけられる時間というのは有限で、子どもは、親が忙しそうに、そして一生懸命きょうだいの子育てを頑張っているのを目にすると、何も言えなくなってしまう(≒がまん)気持ちを思い出しました。


そこで藤木さんはーーーー?


2018年4月に、なんと藤木さんお1人で聞こえないきょうだいをもつSODAソーダの会を設立したそうです。


■SODAの会ってなに?

聞こえないきょうだいをもつSODAソーダの会

聞こえないきょうだいをもつSODAソーダの会


聞こえないきょうだいをもつ、“ 聞こえるきょうだい ”が集まって、会って、話してみたいと思ったことがきっかけで立ち上げたそうです。当時は、「3人以上で会ってみたいな」が最初のスタート目標でした。

2018年4月に、藤木さんおひとりではじめた活動がだんだんと広がり、「SODA(ソーダ)」という言葉も少しずつ社会に知られていっています。

最近では、2021年1月30日に、NPO法人インフォメーションギャップバスターと共催で、家族をみんなでカンガエルーシンポジウムが開催されました。

藤木さんのSODA(ソーダ)を広めたいという想いが、人々の心を動かし、このシンポジウムでは約310名の参加者が集まったそうです。

参考)家族をみんなでカンガエルーシンポジウム
https://www.infogapbuster.org/?p=4179



■ここまで熱心に活動されている根底はどのようなものか?

藤木さん:キコエナイ弟がいることの存在が大きい。また、私 が “ SODA(ソーダ) ” でもあり、“ SODA(ソーダ) ” にも支援が必要だと思っています。だから、まずは、社会にSODA(ソーダ)という言葉を広めていきたい。そして、SODAに関わってくださった人が1人ひとり、自分自身の幸せを見つけてほしいですね。


最初にSODAの会を立ち上げたときに、「聞こえる人たちの会っていらないよね」「大変さがちょっと軽いよね」といった声もあったそうです。


それでも、藤木さんは、ご自身の思いを貫いて、同じ立場で悩んでいる人たち、苦しんでいる人たちが集まって、情報交換できる居場所づくりのために奔走されたそうです。


今では、同じ立場の人たち(SODA)だけではなく、聞こえない・ 聞こえにくい人たちと親、そして、CODA(聞こえない親の子ども)たちと親が集まって、情報交換や多様溢れる意見の交換の場所になっているそうです。


様々な立場の人たちが集まって、お互いを価値観や状況を尊重すること。その上で、相手との対話をすることを通じて、その中で"自分"というものを確立していき、藤木さんのように「自分はSODA(ソーダ)」といえる自信を持てるのかもしれません。


SODAの会を切り口に、様々な立場の人と関わる活動を通じて、それらの活動がどんどん社会に広まることは、とても意味のあるモノだと思います。今でいえば、なかなか自分と違うバックグラウンドを持つ方たちとの関われる機会は減少していますが、こうした多様な人が集まる場を通じて、1人ひとり違うという多様性が社会の中でじわじわと受容されていくことに繋がるのではないか、と強く信じています。


■最近の活動では何しているのでしょうか?

●透明マスク1,000枚配布事業(インフォメーションギャップバスター)
※5/31に1000枚透明マスク配布を終了いたしました。

藤木さんがプロジェクト担当となり、キコエナイ子どもときょうだい、キコエナイ親をもつ子どもたちを対象に、少しでも笑顔が増えるといいなという思いをきっかけにプロジェクトを立ち上げたそうです。

今回届けられた相手からは数々の御礼の言葉が届けられたのです。

このコロナ禍で、多くの人たちが大変な状況ではありますが、そのなかでも笑顔になれるようにという取り組みが大変、聞こえない当事者としてありがたく思うだけでなく、こういう方がいるのだと勇気づけられます。

参考)キコエナイ子どもときょうだい、キコエナイ親をもつ子どもたちへの透明マスク配布プロジェクト(配布終了)
https://www.infogapbuster.org/?p=4457

■現在取り組まれている活動は何ですか?

●オリパラのテレビ中継に手話通訳を(来年2月の北京冬季五輪にも向けて)

https://news.yahoo.co.jp/articles/ca9190f7c5cd108ccfecd41e99be8db2c752a42b?

●優生保護法弁護団

https://www.nhk.or.jp/heart-net/program/rounan/915/

●聞こえないきょうだいをもつSODAソーダの会

https://soda-siblings.jimdofree.com/


■藤木さんから、大学生のみなさんにメッセージ



誰かと比べないで、自分らしく、自分の幸せを見つけてほしい。

そして、今の大学生はなにかと大変な状況にあるようですが、がまんしないで、自ら発信することに勇気を持ってほしい。

(元気づけてくれる笑顔で)応援しています😄


■さいごに

藤木さん×あやか

藤木さんとのツーショット


藤木さんの言葉、

「1人で悩まないで。勇気を出して、つらいことは伝えよう。」

に私も強く、もう!強く共感します!

声をあげることは、とてもつもなく苦しく、大変なことです。
勇気も必要です。
でも「助けてほしい」と周りの人に伝えてみることも必要だと思います。

「助けてほしい」という伝える場所がわからない人は、まず信用できる大人のひとに伝えてみよう。そこから、何か糸口が見つかるかもしれない。

はじめの一歩はすごく怖いかもしれないけれど、社会には優しい先輩や大人のひとたちもいるから、大丈夫、と私は強く信じたい、信じて変わったこともあるから。

私自身の話を少しさせていただくと、難しいことや困ったことがあったときに、たくさんのひとに支えられています。助けてもらうことは、恥ずかしいことではないんだよ、と伝えたい。

お互いに支え合って、そして、共に成長することができることに繋がることもある。その経験を私自身、何度もしてきました。できないことは大いに助けてもらって、そして自分ができることで一生懸命助けたらいいのではないでしょうか。それが、本当の意味で、共に成長しつつの、「助け合う」社会になる、と強く信じています。

さいごに、周囲からの反対があっても負けずに、自分の強い信念を持って、「SODAの会」を立ち上げ、そして、関係者の方々の幸せに繋がる価値のある活動をされている、藤木さんを心から尊敬します。

新しい取り組みというのは、いつどのような時も、反対がつきものです。それでも、「“ SODA(ソーダ) ” という言葉をもっともっとみんなに知ってほしい。」という熱い思いが人々を動かし、SODAの会の立ち上げに繋がり、新たなムーブメントに繋がるのだと思います。

価値ある活動が社会にもっともっと広まり、そして次へと、次へと繋がっていくことを心から願います。



インタビュイー      :藤木和子さん
インタビュアー(ライター):あやか
リライト                : 中川夜


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Profileーーーーキコエナイきょうだい(SODA)をもつ弁護士の藤木和子(ふじきかずこ)さん

1982年 埼玉県上尾市生まれ
-5歳の時、弟の耳が聞こえないことがわかり、「聞こえるお姉ちゃん」となる
2010年 東京大学法科大学院卒業
2012年 弁護士登録、29歳人生の転機
-進路に悩み、”きょうだい会”に初めて参加
2014年 筑波技術大学非常勤講師  
2016年   友人3名で障がい者のきょうだいの会ファーストペンギン設立
              (20代~30代中心)
2018年 国立障害者リハビリテーションセンター学院 手話通訳学科卒業
                全国優生保護法弁護団
        聞こえないきょうだいをもつSODAソーダの会設立(代表)
        Sibkoto障害者のきょうだいのためのサイトをきょうだい5名で共                  同設立
        NPO法人インフォメーションギャップバスター(IGB)理事          (聴覚障害当事者の友人らと活動)
2019年 日本障害者協議会(JD)理事
     北里大学医学部非常勤教員
2020年 埼玉県第16回荻野吟子賞さわやかチャレンジ部門
2021年 厚生労働省・文部科学省ヤングケアラー支援PTヒアリング参加
     全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会副会長
     全国手話通訳者統一試験合格


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