憎めない女。
わたしには妹がひとりいます。
二人姉妹の世間のイメージがどうなのかはよくわかりませんが、青野姉妹の関係はいたってドライ。というか我が妹は、わたしに対して基本、塩対応気味なのです。
(イメージ的には、ちびまる子がわたしで、妹はまるちゃんのお姉ちゃんという感じ。)
「お姉ちゃん」なんて呼ばれた覚えがありません。
(その点、ちびまる子の方が可愛げがある。)
まあ、こんなへっぽこな姉を持ってしまっては無理もないです。
かといって、仲が悪いのかと言われればそういう訳でもなく、持ちつ持たれつの仲なのだと思います。
そんな妹から先日、「出張で東京に行くからご飯にいこう」と珍しくお誘いがありました。
「こんなこと、これからもう二度とないかもしれない」と二つ返事をしたわたし。
普通こういう時、東京に身を置くわたしがお店を押さえるべきなのでしょう。
しかし、「何食べたい?」と向こうから聞いてきたので、「うーん、和食かな」と反射的につい答えてしまいました。
そこからは完全に妹ペース。
わたしは、自分が行ったことがある、数少ないお店のレパートリー(ほぼ居酒屋)を、妹(下戸)に教えたのみ。その中から彼女にお店を選んでもらうことになりました。そして、「じゃあ、予約はしとくから」と妹。
こうして、随分と手際よく、妹によって食事の約束が整えられたのです。
思えば、いつからか妹の方がしっかりしているということには、薄々気が付いてはいました。
見た目もあまり似ていないし(と、わたしは思っているのですが)、いつしか姉よりも背が伸び、見た目もすっかりお姉さんに。
歳も近いので、小さい頃から一番身近な比較対象でした。
実際に周りからも「妹さんの方がお姉さんみたいね〜」と、随分と勝手なことを言われたものです。
それに輪をかけ、内弁慶で、なかなか人と打ち解けることができない姉と異なり、すぐに友達ができる妹の性格を羨ましいと思っていたこともしばしば。
身長もろもろ含めた見た目、友達の数などなど、色んなところで差をつけられてしまったので、何となく憎き存在として妹を認識していた時期がなかったと言えば嘘になります。
そんなこともあってか、姉としてのつまらないプライドから、妹を頼るということがつい数年前まで素直にできませんでした。
ただ、学生時代がちょっとばかし長かったわたしよりも先に、妹が社会人になった当たりから、「もういいや」という気持ちが出てきた瞬間がありました。
そこからはもうすっかり妹に頼りっぱなし。
何故だかわかりませんが、今まで自分がこだわっていた細々としたことが本当にどうでも良くなったのだと思います。
「姉だからしっかりしないと」とか「妹なんだらもっと妹らしくしろよ」とか、そういう風にがんじがらめになっていた自分の中の「姉妹像」みたいなものが、一気に崩壊した時期があったのです。
妹みたいな姉と、姉みたいな妹でもいいか、と。
わたしにとってそんな関係にある妹と、今週、約束していた食事のため、お正月ぶりに会いました。
二人とも実家を離れ、それぞれ別の場所で生活するようになって久しいですが、こうやって実家以外で会う度に、お土産を用意してくる妹。
こういう、わたしにはない気づかいがサラッとできてしまう部分も、未だに若干ムカつきます。
でも、離れて暮らしてからの方が、わたしは力を抜いて彼女と話ができるようになりました。
実際、今回の食事の時間で、最近ずっと張り詰めていた気持ちがちょっと緩んだのも事実。認めたくはないのですが、こればかりは妹のお陰だと認めざるを得ません。
憎みたいけど憎めいない女。
そんな存在は、わたしにとって多分、彼女しかいないのでしょう。あー、悔しい。