名前は難しい|ちいさなお店の記録 no.2
たまにこちらをのぞいてくれるが、すぐ行方をくらます。今年の秋は、かくれんぼをしているみたいだ。そんなことを思っていたら、もう冬。もこもこ靴下が手放せない季節になった。
たくさんの人にお店を作る勇気をもらった、前回の記録はこちら。
それから追い風を気持ちよく感じたものの、最初の壁、「屋号決め」が立ちはだかる。
何を扱うかを決めてから、いい感じ!と思う言葉をちまちま集めた。それらをパズルのように組み合わせたり、そのままにしたりしながら、ノートの上に並べていく。
そんなことを3ヶ月続けるものの、なかなか決まらない。いい感じな言葉や、考えたことが膨らみすぎて、ジブリの映画を来る日も来る日も観続けたり、ローマの哲学者や100年前の詩人に出会ったり、そんな道草もした。
しかし、いくら誰かの言葉を感じても、何かを得ようと外に向かっても、しっくりくるお店の名前には出会えない。
ひとり足踏みをする間に、次々と行動を起こす周囲を眺めては焦り、情けなくぼろぼろと涙をこぼすことも増えてきた頃。どこにも見つからない名前のヒントを、外ではなく内に探してみることにした。
そこで1年間書き続けているノートを開く。日記も、することリストも、ちょっとしたメモ書きも全て記されているノート。
どんなお店を作りたいのか、どういう思いが自分にはあるのか、マーカーペン片手に印をつけながら8ヶ月分の記録を追った。
「ほっとできる場所」
「等身大に戻れる場所」
「自分が自分に戻れる」
「がんばっている自分も、だめだめな自分も、いつもの自分も、どんな自分でも大丈夫な場所が欲しい」
キーワードが浮かんできた。ただ、普遍的なほっとできる場所や、戻れる場所のイメージを探っても、十人十色ありそうな気がして悩ましくなる。そんな時、2人の本屋さんから教えてもらった、その人自体がお店らしさになるということを思い出して、自分のほっとできる場所や戻れる場所を探ってみることにした。ノートを開いたり、記憶にないところは両親に聞いたりしながら。
そして新たに浮かんだのは、畳の上はいつもほっとできたということ。あの香り、空気感によく癒されていた。
いてもたってもいられず、「畳」で検索を繰り返す。すると、「畳」の原料である「い草」の和名が「燈心草(とうしんそう)」であることを知った。ノートに書いてみる。なんかいい響き。
ただ草は違う気がして、思い切って「香」に変え、「燈心香(とうしんか)」と名前をつける。とてもいい感じ、これしかないと思った。
そこに込められるありったけの意味を1ページ分に埋め尽くす。文字を書くたびにこれしかない!これしかない!と心の奥が熱くなっていく。
小さなことほど石橋を叩いて叩いて渡る私は、検索サイト、SNS、商標のプラットフォーム、ありとあらゆる媒体で、他のお店と被りがないか調べた。そして同じ名前がないこと、商標になっていないことを確認し、名前を「燈心香(とうしんか)」に決定する。ちなみに画数診断までやった。大吉だったので、ほっとする。
そしてその勢いのまま、デザイナーの友人にロゴ作成を依頼した。全信頼を置いている友人、想像以上に最高なロゴを、じっくり丁寧に創り上げてくれた。
完全に波に乗った気分だった。よしよしと、その高揚感を噛み締める。
だが、現在準備中のInstagramのアカウントを既に見つけてくださった方はご存知の通り、この「燈心香(とうしんか)」は店名ではなくなってしまう。
それには色々あったのだが、また近日中の続きで。
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