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指先に宿る記憶

「久々に聴いたわ〜」

1階でYouTubeを鑑賞していた祖母と、家事をしていた母にそう言われて、この鍵盤たちを約7年触れていなかったことに気づいた。

つい先日まで帰省していた実家、その階段を登った先のリビングには、木目のピアノが鎮座している。

小学1年生の時、親が知り合いだった先生のもとで習い始めたピアノ。

最初の1年間は小さな電子ピアノで練習しており、本物に触れるのはレッスンの時だけだった私を、両親が楽器屋さんに連れて行ってくれて贈ってくれたのが、この木目のYAMAHAのピアノだった。

当時8歳の私にはペダルに足が届かなくて、ひとつひとつの音を鳴らすのにも苦戦していたほど大きな存在だったのに、いつの間にかちょうど良い大きさに馴染んでいたことに少し誇らしくなったのが懐かしい。

小学生の頃には校歌の伴奏、中学生では合唱コンクールの伴奏をこなしてきたから、義務教育時期の私にとっては相棒のような存在で、もはや私のアイデンティティ。

そんなピアノとの濃密な時間の中で、小学生の終わり頃から本格的にクラッシックに触れ始めると、ピアノに対する意識は少し変化していった。

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かみつれ

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