コスプレと著作権の話(1)
以前、人気のスマホゲーム、ツイステことディズニーツイステッドワンダーランドに関連した記事を連発していた頃、パブリッシャーであるソニー系のアニプレックスのコスプレのガイドラインを通じて、コスプレの不都合な真実について触れた。メディア露出も増え、なまじ市民権を得てきたサブカルチャーのカテゴリーの一つ、それがコスプレ。日本では依然として、アダルトビデオを連想することが根強いが。
さて、そのコスプレである。政府がコスプレに関する著作権問題についてルールを策定する方向であることが、Twitterのニュースで流れた。
そもそもコスプレ自体グレーゾーンだと、前々から述べてきた。実際、同人活動も対著作権となるとグレーゾーンだが、コスプレに関しては更に複雑な問題を抱えている。
まず、今回の論点とは一旦離れるが、コスプレで最も身近な著作権問題について。これが、或る意味最大の不都合な真実なのだが、市中に流通している衣装の殆どは海賊版だ。残りは自作と公式衣装となるが、大体このテの話になると自作派と購入派で「どっちが作品愛が有るか」で戦争になる時点で不毛だ。因みに、個人的には公式衣装の一人勝ちだ。
その公式衣装はライセンス契約の絡みも有って基本的に比較的高価で、発売も遅い。最近は特にアニメモノのライフサイクルは短く、販売された頃には既に放送終了から大分経った後、と云うのも少なくなく、ゲームなど比較的寿命が長い作品に集中している感は有る。
だから商品化されないものも多く、ツイステに至っては公式衣装の販売の話が全く上がってこない。女子向け作品だと大手グッズショップアニメイトのコスプレ部門と言えるアコスが手掛けそうなものだが、それも無い。
海賊版は「何故か」「特定の作品の特定のキャラ…例えばA…の衣装に酷似したデザイン」の「ショップのオリジナル衣装」を売っていると云う建前が有る。あくまで自分たちはオリジナル衣装を販売しているだけで、買った客がこのオリジナル衣装を着てAになりきっているだけだ、と極端に言えば購入客の使い方の問題だと云うスタンスだ。
まあ、このテの話になると
「ミシン買って衣装作ろ?裁縫は勉強すれば簡単だよ?自作しよ?」
と云うツイートがバズるのだが。
それもコスプレに関する著作権の一部だが、今回のポイントはその衣装を使ってどうするのかの話だ。記事に有ったのは、イベントで出すだけは白、SNSにアップロードするのは黒、写真集を出すのは黒。と云う認識だ。
個人的な見解で言えば、最大の論点は著作権がどう機能するものかである。
例えば同人イベントの代名詞、コミケことコミックマーケットにおいて同人誌を販売しているが、こう書くと販売ではなく頒布だと指摘される。自身はその事情を知りながら、敢えて販売として書いているのだが、この書き方が正しくないのは「同人の価格は全て印刷代」であると云う名目が有るからだ。
買い手は「印刷代を負担することで貰える」、売り手は「印刷代を受け取って配る」と云う、無償配布の延長扱いと云う名目で、完売したところで印刷代をペイしたに過ぎず、サークル代などを含めると赤字だ。だから利益は出ていないのだから著作権に抵触しない…その建前が前提条件に有る。尤も、実態は乖離している部分が有るし、脱税しなければ儲けていいのではないかと思うのだが。
その上で、コスプレの実態としては著作権に関する各版権元のガイドラインが明確に定まっていない上、問い合わせの窓口も明確でない場合が多い。大体は法務部や総務部と云った部署の案件だろうが、明確でないまま同人と同じグレーゾーンを進んでいるのが現状だ。
企業が実態として黙認なのも、同人が一種の宣伝媒体となり、広告費を出さなくても「布教」を通じて自社作品の宣伝になるため、それぐらいは黙認してもよいのではないか、と云う、一種のWin-Winを認めているためだ。
名古屋の世界コスプレサミットが、世界各国のコスプレイヤーを集めたコスプレパフォーマンスの世界一決定戦の場として有名だが、この実行委員会には外務省も絡んでいる。毎年の動員数は延べ14万人超…コスプレイヤーだけで2万人(!!)、東海地方の年間行事の動員数で見ても隣県三重のF1世界選手権日本グランプリを上回り、名古屋の日本ど真ん中祭り…通称どまつり…に次ぐ規模だ。東海地方の観光ガイドや年間イベントガイドでも紹介されることが多い、コスプレイベントとしては世界最大級のイベントの、日本のサブカルチャーとして国際交流に寄与していると云う現実も有る。
サブカルチャーは日本のコンテンツビジネスにおいても重要な柱であり、著作権と云う法律は有るものの厳格化でガチガチにするようでは、コスプレ離れを引き起こしサブカルと云えど一種の文化の衰退を招く、としてコスプレイヤーと版権元がWin-Winになることを目的とするようだ。確かに、これまで明確なルールが無く、同人と同じような状態で長年続いてきたと云う方が驚きだ。
政府はこの1年間特に迷走を続け、直近では現金の再給付や特措法に絡めて市民からの信用度は地に墜ちているが、それでもバカの集まりでもないらしい。とは云え、何故このタイミングなのかと云う疑問は有るが。補償無き罰則が先行する特措法改正と東京オリパラ問題と云う喫緊の課題を抱える中でのこのニュースは、タイミングが悪すぎる。
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