巡回相談の実際①〜通常学級にいる発達障がい児のサポートについて、ADHD編〜
加藤文です。元教師です。
14年間、まっすぐに特別支援教育に携わってきました。
現在は、いちばん支援体制が薄い発達障がい児のサポートをしたくて、フリーで相談を行っています。
昨年度まで、仕事として行っていた巡回相談から、サポートのポイントをお伝えしたくて記事を書きました。どなたかの助けになれば幸いです。
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巡回相談のメインは、通常学級にいる、発達障がいの生徒さんでした。
どの学校でも、先生たちは、とにかく
「どうしたら良いかわからない」
という困り感が共通していました。
(皆さんとても真剣にお話を聞いてくださって、ありがたいな、といつも思っていました。)
ほんのちょっとの工夫でうまくいきます☝️
が、いくつかのポイントを押さえることが大事です。
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発達障がいの生徒のいる学級運営のヒント
〜ADHD傾向の場合〜
ADHD傾向のある生徒さんは、
指示に従ったり、空気を読んで行動したり…
ということが苦手です。
◯静かに話を聞く場面で、大声でおしゃべりしてしまう。
◯集中して課題を解く場面で、周りの生徒の邪魔をしてしまう。
という場面が多発します。
(悪気はないんですけどね。)
きっちりした先生であればあるほど、なんとかしなきゃ!と思って繰り返し叱ってしまう、という事態が発生しがちです。
そして先生というのはたいていきっちりした人です。
そうするとますますその多動行動がひどくなるという悪循環が生まれます。
さらに、学級の中でも「あの子には厳しいことを言ってもいい」というムードが生まれてしまいます。これは、いじめに繋がります。
なので、
多動な言動をある程度受け流しながらも、
いくつかのルールはきちんと守ってもらうという線引きをしっかりすることが必要です。
その姿勢を他の生徒さんにわかりやすく説明することで、他の生徒さんたちも理解してくれます。
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🌟アドバイス①
授業のマナーをわかりやすく伝える。
本人の机に、授業時間のマナーを最大で3つまで書いたメモを貼ります。
(3つぐらいが意識しやすいと思います。)
①他の人が話し終わってから発言する。
②問題を解いている時は静かにする。
③字をていねいに書く。
定着するまでは毎日確認し、
授業中うっかりものすごい大声で話したり
(ちょっとくらいのお喋りは許してください)
他の子のおじゃまをしたりするようなことがあったら、
その都度このメモに注目してもらい、確認することを繰り返します。
そして、その子なりにルールを守ろうと頑張っている姿勢を毎日称賛してください。
(これ、とても重要です。)
これはうまくいきやすい例。
うまくいかないのは、対応する先生たちの方針が一定せず、その場しのぎになっちゃう場合です。
例えば、
集中力が続かない、
座っていること自体が苦手、
という生徒さんの場合は
集中して学習に向かう時間と、休憩する時間のめりはりをつけた方がいいので、
教室の中に休憩スペースを作ることをお勧めします。
教室の片隅をパーテーションで仕切って、ほっと一息つける個人の空間を作ったりするのが一般的です。
🌟アドバイス②重要なポイント2つ!
1 学習する時間と、休憩する時間とをあらかじめ視覚的に示して確認する。
黒板やホワイトボードなどに、
1 漢字の小テスト
2 ワーク◯ページ
3 休憩(10分)
4 答え合わせ
と示しておきます。
この流れで授業するよ、ということを生徒さん本人と確認してから授業に入ります。
2 休憩時の約束事を確認する。
休憩のときの約束ごとについては、あらかじめ生徒さん本人と相談しておきます。
◯ほかの人のじゃまをしないこと。
◯休憩スペースでやる活動を確認しておくこと。
(読書、イラスト…本人が落ち着ける何らかの活動)
書いて明示しておくと尚良いです。
そうしておくと、
生徒さん本人がやりたいことにつられて授業に戻れなくなりそうなとき、
「約束したよね?守ろうよ。」
って言うことができます。
ADHD傾向の生徒さんの場合、
約束ごとを勝手に決めない
ということがとても大事です。
「それは先生が勝手に決めたんでしょ」
と反発してしまうからです。
本人としっかり相談して決めたことなら、
しょうがないから守るか…という気持ちになってくれます。
この、相談→約束 をおろそかにすると
うまいこと言い逃れられたり
揚げ足をとられたりして
約束ごとがなあなあになってしまう…
ということになりますので、しっかり押さえて欲しいポイントです。
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ADHD傾向の生徒さんは、視覚情報の理解が得意な子が多いため、このようなアドバイスをすることが多かったです。
でも、いつも先生達にお話していたのは
「小さい頃から叱られることが多い子ども達ですから、誰よりも認められたいっていう気持ちが強いんです。
だからこそ向き合って、信頼を得てください。
この大人なら自分をしっかり見てくれる、って思ったら、ぜったいついてきてくれます。」
ってことでした。
子どもからの信頼がないと、正直どうにもなりません🥲
「この人の言うことならまあ、聞いてもいいか。」
と子どもに思わせるような大人でないとね。
教師というのはたいへんな仕事ではありますが
そうやって向き合って、関係を築いていくところに喜びがあることは間違いないです。
今回はADHDのお子さんについてお伝えしましたが、またいつか、別バージョンでお伝えしたいと思います。